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3章 死神が誘う遊園地
夢みる幸福 2
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悩んだ末、ケイは屋根を飛び移り、亀の看板の周辺まで来る。適度に距離をとり、屋根を死角にして人の群勢を探る。
人気が多いところに来たというのに人混みの臭いがしない。潮とポップコーン、それだけしか嗅ぎとれない。
大衆は同じ向き、同じ表情で人の流れを作る。これだけ人が多ければ上を見上げ、屋根にいるケイを見つけてもいいものを誰もその仕草を見せない。
これがプログラムされた人の行動というものか。
夢園に訪れた者は2つに分かれる。洗脳がプログラム。これらは似ているようで内面は違う。
洗脳は思想改変と例えるならば、プログラムは人格改変と言えるだろう。人格者は感情抑制ができない暴力者、サイコパスと呼ばれた犯罪者は善人になれる。
プログラムは魂の根本を書き換えるのだ。同じ内容の行動データを組み込めば同じ歩き方をする大衆ができる。
アトラクションに参加した者は同じアトラクションに連続して参加する。そういうプログラムを施されているのだろう。
それ以外の洗脳者は作られた大衆の流れにつられて参加するか建物に入らず、別の所に移動している。ケイは後者を尾行する。
もし、清音が洗脳されているとするならば洗脳された流れに従う。その中に清音が紛れているのではないかと考えた。
魂のプログラムが施されている可能性は無意識のうちに除外していた。
洗脳ならばきっかけがあれば解ける。プログラムはそう簡単にはいかない。魂の根本に手をつけたとなると元の状態に戻すのは難しい。できたとしても後遺症が残る。
洗脳ならばまだ間に合う。そうした思想がケイの魂を占めていた。焦燥という感情だった。初めて対面する感情だ。
50年、旅をしてきたケイだったが、ここまで切迫した状況はなかった。あったとしても、心理的に窮追されたことはない。冷静さと正しい判断で危機を回避してきた。
現状のケイはそれを失いつつある。自身ですら気付いていない感情だ。焦燥の取扱方を彼は知らない。
アトラクションから離れて行く者たちはそれぞれの場所が違っていた。ポートエリアを周遊するゴンドラ、別のエリアへの移動、ひと休みしようと喫茶店に入る者。
清音を発見したのは喫茶店だった。
清音は野外の丸テーブルに1人で居座っていた。注文したパンケーキの隣にピンクの熊象を置き、真剣な眼差しでカメラを構えている。
監視の目線も忘れ、ケイは屋根から跳ぶとパンケーキと熊象を押しのけて降り立つ。
焼きたてのパンケーキは床に落ち、ピンクの熊象はメープルシロップに汚れる。
「キヨネ!」
自身でも驚く声量で名を呼ぶ。
呼びかけられた清音は目を丸くさせ、写真を台無しにした黒猫を凝視する。
「何するのよ!」
驚きの次に怒りの感情が出た。椅子から立ち上がり、熊象の汚れをとろうと布巾を手に取る。
写真を撮ろうとしない。清音はまだ洗脳の段階にあると判断する。
「キヨネ!俺だ!ケイだ!」
ベタつくシロップを拭おうと必死になって熊象を布巾で叩く。
「キヨネ!こっちを見ろ!」
再度、名を呼ぶ。
真剣になっていた清音は手を止め、熊象から目を離す。
「猫が喋ってる」
洗脳よる影響か、清音はケイのことを忘れているようだった。だが、手応えはある。
「そうだ、喋る猫のケイだ。思い出せ」
清音は目を丸くさせたまま動かない。混乱しているようだ。
喋る猫に対するものではない。この遊園地とここに至るまでの経緯、起きた出来事を想起させている。
「ケイ?」
しっかりとした発言でケイと呼ぶ。それは洗脳の支配が失なった証。
「そうだ、私、なんで、こんなところにいるの?」
自分を取り戻した清音は自分自身を抱き、身体を震わせる。呼吸を整えながら湧き上がる恐怖心を抑える。
「ケイは、私を助けに?」
「それもある」
清音が無事だとわかれば次の目的に移るだけだ。
人気が多いところに来たというのに人混みの臭いがしない。潮とポップコーン、それだけしか嗅ぎとれない。
大衆は同じ向き、同じ表情で人の流れを作る。これだけ人が多ければ上を見上げ、屋根にいるケイを見つけてもいいものを誰もその仕草を見せない。
これがプログラムされた人の行動というものか。
夢園に訪れた者は2つに分かれる。洗脳がプログラム。これらは似ているようで内面は違う。
洗脳は思想改変と例えるならば、プログラムは人格改変と言えるだろう。人格者は感情抑制ができない暴力者、サイコパスと呼ばれた犯罪者は善人になれる。
プログラムは魂の根本を書き換えるのだ。同じ内容の行動データを組み込めば同じ歩き方をする大衆ができる。
アトラクションに参加した者は同じアトラクションに連続して参加する。そういうプログラムを施されているのだろう。
それ以外の洗脳者は作られた大衆の流れにつられて参加するか建物に入らず、別の所に移動している。ケイは後者を尾行する。
もし、清音が洗脳されているとするならば洗脳された流れに従う。その中に清音が紛れているのではないかと考えた。
魂のプログラムが施されている可能性は無意識のうちに除外していた。
洗脳ならばきっかけがあれば解ける。プログラムはそう簡単にはいかない。魂の根本に手をつけたとなると元の状態に戻すのは難しい。できたとしても後遺症が残る。
洗脳ならばまだ間に合う。そうした思想がケイの魂を占めていた。焦燥という感情だった。初めて対面する感情だ。
50年、旅をしてきたケイだったが、ここまで切迫した状況はなかった。あったとしても、心理的に窮追されたことはない。冷静さと正しい判断で危機を回避してきた。
現状のケイはそれを失いつつある。自身ですら気付いていない感情だ。焦燥の取扱方を彼は知らない。
アトラクションから離れて行く者たちはそれぞれの場所が違っていた。ポートエリアを周遊するゴンドラ、別のエリアへの移動、ひと休みしようと喫茶店に入る者。
清音を発見したのは喫茶店だった。
清音は野外の丸テーブルに1人で居座っていた。注文したパンケーキの隣にピンクの熊象を置き、真剣な眼差しでカメラを構えている。
監視の目線も忘れ、ケイは屋根から跳ぶとパンケーキと熊象を押しのけて降り立つ。
焼きたてのパンケーキは床に落ち、ピンクの熊象はメープルシロップに汚れる。
「キヨネ!」
自身でも驚く声量で名を呼ぶ。
呼びかけられた清音は目を丸くさせ、写真を台無しにした黒猫を凝視する。
「何するのよ!」
驚きの次に怒りの感情が出た。椅子から立ち上がり、熊象の汚れをとろうと布巾を手に取る。
写真を撮ろうとしない。清音はまだ洗脳の段階にあると判断する。
「キヨネ!俺だ!ケイだ!」
ベタつくシロップを拭おうと必死になって熊象を布巾で叩く。
「キヨネ!こっちを見ろ!」
再度、名を呼ぶ。
真剣になっていた清音は手を止め、熊象から目を離す。
「猫が喋ってる」
洗脳よる影響か、清音はケイのことを忘れているようだった。だが、手応えはある。
「そうだ、喋る猫のケイだ。思い出せ」
清音は目を丸くさせたまま動かない。混乱しているようだ。
喋る猫に対するものではない。この遊園地とここに至るまでの経緯、起きた出来事を想起させている。
「ケイ?」
しっかりとした発言でケイと呼ぶ。それは洗脳の支配が失なった証。
「そうだ、私、なんで、こんなところにいるの?」
自分を取り戻した清音は自分自身を抱き、身体を震わせる。呼吸を整えながら湧き上がる恐怖心を抑える。
「ケイは、私を助けに?」
「それもある」
清音が無事だとわかれば次の目的に移るだけだ。
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