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3章 死神が誘う遊園地
夢みる幸福 11
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落下は1 、2秒くらいだった。もしかしたら見た目よりに浅かったのかもしれない。
良くても骨折、悪かったら死を覚悟していた。そうした心配とは裏腹にケイは軽快に着地すると私を降ろす。
短い落下だったとしても、息と心臓が止まる思いをした。恐怖の余韻が残る脚を震わせる。
「歩けるか?」
ケイなりに心配してくれている。
「大丈夫」
多分。
ガクガクする足を見下ろす。視線の先にあるのは私が履いているニューバランスの靴と砕かれて散り散りになった鏡の破片、蛍光灯らしきものが火花をパチパチと鳴らしている。
顔を上げていると何十、何百もの鏡が割られていて、まるで怪物が大暴れしたような痕跡が残っていた。
「もういや」
そこに怪物はいない。でもそこにいたという事実が私を恐怖させる。2、3秒間の落下よりもさらに深いところで落とされたような気分がする。不満だって漏れる。
怪物の痕跡にもケイはノーコメントで、瑠璃の臭いを辿る。
もう、どこにも行きたくない。こんな夢から覚めたい。
それでもケイからは離れられない。彼の傍が安全だということはこの身で実感している。
「覚醒させる装置があるはずだ」
心が折れそうになっていて、ケイの言葉にも希望が持てない。
「それ本当なの?」
「そうでないと昏睡状態だ」
あぁ、そっか、そうだよね。
洗脳させて夢園の薬を現世で配らないといけないから何かしらの目覚めさせる方法を管理者は持っているはずだよね。
「その、何だっけ?目覚ましボタン?どこにあるの?」
「わからない」
心が折れそう。
ケイの優先事項はすっかり瑠璃へと切り替わっていた。
私としては一緒に目覚ましボタンを探してほしい。
瑠璃は放っておいても大丈夫そうに見えるもの。白糸とか白鋏とか、誰もが羨む能力があるし、カンダタさんもいる。
カンダタさんは瑠璃と一緒にいる。なぜか心が痛んだ。
不意にケイが立ち止まって、私はケイを見据える。
「臭いが」
「途切れたの?」
ケイは頷く。
「臭いが混じりすぎている」
「どんな臭い?」
そう聞いてみるとケイは空気を深く吸い込んでそこに混じる臭いを分解する。
「自己嫌悪と心的障害」
「何それ?」
「おそらく、鏡の材料」
足元に散らばる鏡の破片を見る。破壊されバラバラになっても鏡は使命だというように私を映す。
鏡は鏡でしかないのにケイはおかしなことを言う。「あとは?」聞いてみると首を傾げながら答える。
「多勢の人、食欲、これは双子の記憶?」
「ケイは独特な表現をするね」
どういう臭いなのか想像がつかない。
「あとはカンダタの黒蝶」
「ほんと?なら、その臭いを辿ればいいんだよ」
「なぜ?」
「2人は一緒にいるんじゃないの?」
「そうなのか?」
ケイが首を傾げるのは必ずしも二人一緒に行動していないのではないかと疑問を持ったからだ。
私はそれが当然と言う口ぶりで納得させる。形も渋々承諾してカンダタの臭いを辿る。
「ケイはカンダタさんが苦手?」
どことなくカンダタさんに対して刺々しさを感じていた。さっきも渋っていたし。
「敵視はしてない。奴の黒蝶を危険視している」
「カンダタさんが、また」
言葉が詰まった。想起させたのは校庭の風景。背中から破けて現れた怪物の片鱗をなんと例えればいいんだろう。
「斬る」
そうした私の恐怖心に対してケイが断言にする。迷いがなかった。ケイなら有言実行する。私はそれが恐くなった。
良くても骨折、悪かったら死を覚悟していた。そうした心配とは裏腹にケイは軽快に着地すると私を降ろす。
短い落下だったとしても、息と心臓が止まる思いをした。恐怖の余韻が残る脚を震わせる。
「歩けるか?」
ケイなりに心配してくれている。
「大丈夫」
多分。
ガクガクする足を見下ろす。視線の先にあるのは私が履いているニューバランスの靴と砕かれて散り散りになった鏡の破片、蛍光灯らしきものが火花をパチパチと鳴らしている。
顔を上げていると何十、何百もの鏡が割られていて、まるで怪物が大暴れしたような痕跡が残っていた。
「もういや」
そこに怪物はいない。でもそこにいたという事実が私を恐怖させる。2、3秒間の落下よりもさらに深いところで落とされたような気分がする。不満だって漏れる。
怪物の痕跡にもケイはノーコメントで、瑠璃の臭いを辿る。
もう、どこにも行きたくない。こんな夢から覚めたい。
それでもケイからは離れられない。彼の傍が安全だということはこの身で実感している。
「覚醒させる装置があるはずだ」
心が折れそうになっていて、ケイの言葉にも希望が持てない。
「それ本当なの?」
「そうでないと昏睡状態だ」
あぁ、そっか、そうだよね。
洗脳させて夢園の薬を現世で配らないといけないから何かしらの目覚めさせる方法を管理者は持っているはずだよね。
「その、何だっけ?目覚ましボタン?どこにあるの?」
「わからない」
心が折れそう。
ケイの優先事項はすっかり瑠璃へと切り替わっていた。
私としては一緒に目覚ましボタンを探してほしい。
瑠璃は放っておいても大丈夫そうに見えるもの。白糸とか白鋏とか、誰もが羨む能力があるし、カンダタさんもいる。
カンダタさんは瑠璃と一緒にいる。なぜか心が痛んだ。
不意にケイが立ち止まって、私はケイを見据える。
「臭いが」
「途切れたの?」
ケイは頷く。
「臭いが混じりすぎている」
「どんな臭い?」
そう聞いてみるとケイは空気を深く吸い込んでそこに混じる臭いを分解する。
「自己嫌悪と心的障害」
「何それ?」
「おそらく、鏡の材料」
足元に散らばる鏡の破片を見る。破壊されバラバラになっても鏡は使命だというように私を映す。
鏡は鏡でしかないのにケイはおかしなことを言う。「あとは?」聞いてみると首を傾げながら答える。
「多勢の人、食欲、これは双子の記憶?」
「ケイは独特な表現をするね」
どういう臭いなのか想像がつかない。
「あとはカンダタの黒蝶」
「ほんと?なら、その臭いを辿ればいいんだよ」
「なぜ?」
「2人は一緒にいるんじゃないの?」
「そうなのか?」
ケイが首を傾げるのは必ずしも二人一緒に行動していないのではないかと疑問を持ったからだ。
私はそれが当然と言う口ぶりで納得させる。形も渋々承諾してカンダタの臭いを辿る。
「ケイはカンダタさんが苦手?」
どことなくカンダタさんに対して刺々しさを感じていた。さっきも渋っていたし。
「敵視はしてない。奴の黒蝶を危険視している」
「カンダタさんが、また」
言葉が詰まった。想起させたのは校庭の風景。背中から破けて現れた怪物の片鱗をなんと例えればいいんだろう。
「斬る」
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