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3章 死神が誘う遊園地
夢みる幸福 12
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端まで来ると鏡の壁に同化した鏡のドアがあった。
私がいくら目を凝らしても壁とドアの違いは見当たらないのに、ケイはあっさりと発見してドアを軽く押す。
カチリ、と音が鳴ると内部の金具が跳ねてドアが半開きの状態になる。
そこには通路があった。天井にはいくつものパイプが伸びていて、コンクリートで固められた通路は冷気を纏っていた。
「多勢の臭い」
それはさっきは言っていた。
私はそれが真実のように思えなかった。そこには静寂があったから。
人が多いなら息遣いとか咳払いとか床や壁が擦れる音が聞こえてくるもの。
でも、ケイが嘘を吐かないのも事実。それらを踏まえて考えて導かれるのは、動きが止まり呼吸を止めた人たちが大勢いると言う事実。
「俺から離れるな」
離れられるわけがない。死の静寂で頼れるのはケイしかいないから。
私はケイの袖を掴んだ。ケイはそれを邪険にはしないで黙って歩く。
冷える通路を進んでいくと2本の鉄棒があって伸びる床と出会す。レールが敷かれているらしい。
トロッコが走っているのかな。
ケイはレールに沿って進む。人の気配はない。身体を震わせる冷気が漂う。そんな中で生暖かい空気をはらんだ風が吹く。
レールと風の先には立坑のような四角い空間があった。
見上げても天井は高く、明かりもない。真上の暗闇からは2本の鎖が垂れ下がっていた。
レールの先には運行用の出入り口があり、背の高い鉄製のトロッコが収まっていた。
「見失った」
「え?」
焦った様子もないから深刻さも伝らず、間抜けなく声が漏れた。
「俺はカンダタの黒蝶の臭いを追っていた 」
「うん」
「別の人物にすり替わっている」
「それってどういうこと?」
ケイが首を振る。本人もよくわかっていないらしい。
「臭いが混ざりすぎている」
溜息混じりの言葉。珍しいケイのぼやきだった。
ケイは黒蝶の臭いを辿っていた。それはカンダタのものだったが、いつの間にか別の人物になっている。
「蝶男が近くにいるの?」
「違う」
確信のある口調。蝶男じゃないとしたら「別の人物」って?
深まった疑問の回答を発見できないまま、私たちの耳に飛び込んできたのはコンクリートと革靴が叩く音、人の会話。近づいてきている。
ケイは私の手を取ると運行用の出入り口へと連れて行く。死角に隠れるよう私を置くとケイは黒猫の姿に変貌させて離れる。
私は壁とトロッコの狭い間に残されて、心寂しくケイを待つ。
「首さんも急だ。突然、あれを用意しろと。試運転もまだだというのに」
「正常に起動していたのだからいいじゃないか」
会話がはっきりと聞こえる。立坑に入ってきたみたい。
気になった私は死角に隠れながら、立坑に訪れた人たちを伺う。
3人いた。スーツを着た中年の男性と控えるように立っていたのはキャストで、タンカーを押していた。最後の一人は鳥人間のような顔をしている。
鼻から顎までが嘴となっていて、目から頭は人間と同じものだ。低く腰を折り曲げている格好は老人そのものだ。
私がいくら目を凝らしても壁とドアの違いは見当たらないのに、ケイはあっさりと発見してドアを軽く押す。
カチリ、と音が鳴ると内部の金具が跳ねてドアが半開きの状態になる。
そこには通路があった。天井にはいくつものパイプが伸びていて、コンクリートで固められた通路は冷気を纏っていた。
「多勢の臭い」
それはさっきは言っていた。
私はそれが真実のように思えなかった。そこには静寂があったから。
人が多いなら息遣いとか咳払いとか床や壁が擦れる音が聞こえてくるもの。
でも、ケイが嘘を吐かないのも事実。それらを踏まえて考えて導かれるのは、動きが止まり呼吸を止めた人たちが大勢いると言う事実。
「俺から離れるな」
離れられるわけがない。死の静寂で頼れるのはケイしかいないから。
私はケイの袖を掴んだ。ケイはそれを邪険にはしないで黙って歩く。
冷える通路を進んでいくと2本の鉄棒があって伸びる床と出会す。レールが敷かれているらしい。
トロッコが走っているのかな。
ケイはレールに沿って進む。人の気配はない。身体を震わせる冷気が漂う。そんな中で生暖かい空気をはらんだ風が吹く。
レールと風の先には立坑のような四角い空間があった。
見上げても天井は高く、明かりもない。真上の暗闇からは2本の鎖が垂れ下がっていた。
レールの先には運行用の出入り口があり、背の高い鉄製のトロッコが収まっていた。
「見失った」
「え?」
焦った様子もないから深刻さも伝らず、間抜けなく声が漏れた。
「俺はカンダタの黒蝶の臭いを追っていた 」
「うん」
「別の人物にすり替わっている」
「それってどういうこと?」
ケイが首を振る。本人もよくわかっていないらしい。
「臭いが混ざりすぎている」
溜息混じりの言葉。珍しいケイのぼやきだった。
ケイは黒蝶の臭いを辿っていた。それはカンダタのものだったが、いつの間にか別の人物になっている。
「蝶男が近くにいるの?」
「違う」
確信のある口調。蝶男じゃないとしたら「別の人物」って?
深まった疑問の回答を発見できないまま、私たちの耳に飛び込んできたのはコンクリートと革靴が叩く音、人の会話。近づいてきている。
ケイは私の手を取ると運行用の出入り口へと連れて行く。死角に隠れるよう私を置くとケイは黒猫の姿に変貌させて離れる。
私は壁とトロッコの狭い間に残されて、心寂しくケイを待つ。
「首さんも急だ。突然、あれを用意しろと。試運転もまだだというのに」
「正常に起動していたのだからいいじゃないか」
会話がはっきりと聞こえる。立坑に入ってきたみたい。
気になった私は死角に隠れながら、立坑に訪れた人たちを伺う。
3人いた。スーツを着た中年の男性と控えるように立っていたのはキャストで、タンカーを押していた。最後の一人は鳥人間のような顔をしている。
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