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3章 死神が誘う遊園地
夢みる幸福 19
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ゆっくり話をしようと次に連れてきたのは敷居の高いフレンチレストランでコース料理を勧めようとしていた。どうしても食欲がわかないあたしはそれを拒否した。
子供の我儘の延長戦。父ならそういう風に思うだろうし、機嫌を損ねてレストランに入店させようとしないはず。
あたしの予想はまた外れて、父はその拒否を快く受け入れた。
結局、カフェのテーブルに腰を落として、緊張によって強張った表情で父と母を見つめる。
「食欲がないなら飲み物は?ホットチョコもあるぞ」
あたしは無言を貫いて首を横に振る。
残念そうに「そうか」と呟き、隣にいる母に見せながらオススメメニューを勧める。母にそっくりな人形は細く笑って頷く。
聞きたいことがたくさんあった。ホテルからここに来るまで頭を整理して、知りたいものを言語化し、質問として用意していたのに全て忘れてしまった。
思いもよらない再会と父の優しさが頭をごちゃ混ぜにした。得体の知れない感情だけが残っていて、強まったそれは心臓を高鳴らせる。
「本当にすまないと思っている。俺は仕事ばかりでお前のことを放っていたんだ」
ウェイターに注文した後、父が何度目かの謝罪をする。
あたしの怒りと緊張をはらんだ指先が強張った。
「あれから6年か。すっかり大きくなった。エマそっくりの美しさだ。生活に不便はないか?バランスの良い食事をしているか?適度な運動も」
「パパは」
話を遮って開いた口は父を呼ぶ。
「なんで」
唇が震える。
溢れそうになる感情。
言葉が見つからず、沈黙してしまう。
「6年間、後悔していた」
沈んだあたしの表情に父の面持ちも暗くなる。
そう、6年。短くない年月。あたしは孤独だった。それが好きなんだと言い聞かせた年月。
「何度か会いに行こうとしたんだ。誕生日や入学式も。どうしても勇気が出なくてな」
得体の知れない感情が強くなった。脈打つ心音がうるさい。
「毎日が辛かった。あのサプリを服用するようになり、首と出会った。そうして知ったんだ。お前が抱えている問題を」
テーブルに身を乗り出して真っ先ににあたしを見つめる。思わず目を逸らしてしまう。父は構わず熱弁する。
「現代の社会では守ってやれない。だが、この夢園ならそれができる。アミューズメントも増やしたんだ。足りないなら追加もできる。ここは楽園なんだ。望むものは何でも手に入る」
望むものなんてない。
怒り任せに言ってやりたいのに声が喉に詰まって言葉が出ない。怒りも消火されていく。
「あたしはここに住むの?」
なんとか声を絞って言葉を吐く。
「俺が許せないのはわかっている。だが、身を案じてることに変わりはない」
縋ってくる必死な父。首が言っていたことを信じてしまいそうになる。
「許してくれるのなら俺もここで暮らそう。今度こそ幸せに」
得体の知れない感情。それはあたしが捨てたはずの家族愛というもので、それが今、歓喜を上げた。
父もいる。偽物だけれど母もいる。幼いあたしが欲していた幸福がそこにあった。
子供の我儘の延長戦。父ならそういう風に思うだろうし、機嫌を損ねてレストランに入店させようとしないはず。
あたしの予想はまた外れて、父はその拒否を快く受け入れた。
結局、カフェのテーブルに腰を落として、緊張によって強張った表情で父と母を見つめる。
「食欲がないなら飲み物は?ホットチョコもあるぞ」
あたしは無言を貫いて首を横に振る。
残念そうに「そうか」と呟き、隣にいる母に見せながらオススメメニューを勧める。母にそっくりな人形は細く笑って頷く。
聞きたいことがたくさんあった。ホテルからここに来るまで頭を整理して、知りたいものを言語化し、質問として用意していたのに全て忘れてしまった。
思いもよらない再会と父の優しさが頭をごちゃ混ぜにした。得体の知れない感情だけが残っていて、強まったそれは心臓を高鳴らせる。
「本当にすまないと思っている。俺は仕事ばかりでお前のことを放っていたんだ」
ウェイターに注文した後、父が何度目かの謝罪をする。
あたしの怒りと緊張をはらんだ指先が強張った。
「あれから6年か。すっかり大きくなった。エマそっくりの美しさだ。生活に不便はないか?バランスの良い食事をしているか?適度な運動も」
「パパは」
話を遮って開いた口は父を呼ぶ。
「なんで」
唇が震える。
溢れそうになる感情。
言葉が見つからず、沈黙してしまう。
「6年間、後悔していた」
沈んだあたしの表情に父の面持ちも暗くなる。
そう、6年。短くない年月。あたしは孤独だった。それが好きなんだと言い聞かせた年月。
「何度か会いに行こうとしたんだ。誕生日や入学式も。どうしても勇気が出なくてな」
得体の知れない感情が強くなった。脈打つ心音がうるさい。
「毎日が辛かった。あのサプリを服用するようになり、首と出会った。そうして知ったんだ。お前が抱えている問題を」
テーブルに身を乗り出して真っ先ににあたしを見つめる。思わず目を逸らしてしまう。父は構わず熱弁する。
「現代の社会では守ってやれない。だが、この夢園ならそれができる。アミューズメントも増やしたんだ。足りないなら追加もできる。ここは楽園なんだ。望むものは何でも手に入る」
望むものなんてない。
怒り任せに言ってやりたいのに声が喉に詰まって言葉が出ない。怒りも消火されていく。
「あたしはここに住むの?」
なんとか声を絞って言葉を吐く。
「俺が許せないのはわかっている。だが、身を案じてることに変わりはない」
縋ってくる必死な父。首が言っていたことを信じてしまいそうになる。
「許してくれるのなら俺もここで暮らそう。今度こそ幸せに」
得体の知れない感情。それはあたしが捨てたはずの家族愛というもので、それが今、歓喜を上げた。
父もいる。偽物だけれど母もいる。幼いあたしが欲していた幸福がそこにあった。
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