糸と蜘蛛

犬若丸

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3章 死神が誘う遊園地

支配される魂、抗う 8

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   ドアノブを回すだけで開く扉が重く感じる。この先の展開がどう転ぶか予測できない。
   扉が開かれ、通路に出る。覗き穴の死角となって把握できなかった2人のキャストは銃器を構えていた。
   「意外とあっさりしてんな」 
   離れたところには光弥がいた。彼の手には乱雑に鷲掴みされた|首〈おびと〉の頭部がある。無惨に切り離されたそれに不快さを覚える。そこには光弥に対する怒りも混じっていた。
   「あんなの突き付けられたんだぜ?従うしかないだろ?」
   さも、自分は正当ですと言い立ても片手で人の頭部を持て余す様は嫌々と言うよりは渋々と表現すべきだろう。光弥は抵抗する考えや不快もなかった。
   「お前は馬鹿だよなぁ。あんな口約束、守る奴はないだろ」
   脅されたと主張するわりに光弥は笑いながらケイのとった行動を小馬鹿にする。
   「きゃあ!」 
   光弥に笑われた矢先、清音の悲鳴が客室から届く。振り返ってみれば銃口を向けられ跪く清音がいた。キャストによって強引に部屋から出されたらしい。
   「何してる!」
   |柄〈がら〉にもなく声を荒らげてしまった。
 |柄〈つか〉を持つ握力が強くなり、駆け寄ろうと一歩踏み出す。
   「黙って従ってくれるだろう?」
   政蔵は清音と銃器を交互に差す。手に汗が滲み、噛み締めた奥歯が悔しさのあまり音を鳴らす。
   清音の震えた瞳がケイを捉える。それだけでもケイを止める充分な要素となった。 
   踏み留まったケイに政蔵は満足に頷く。
   「よし、それではみんな仲良く秘密の鍵を取りに行こうか」



   「それで、その金庫には何が入ってるんだ?」
   びしょ濡れになったカンダタの肩は今も生暖かい。
   翡翠の号泣はエレベーターから降りても続くかと思ったが、少女は気情に振る舞った。
   エレベーターから回廊に移るとあふれる激情を隅に追いやり、瞳に残った雫を袖で拭った。
    涙が治まったところで頭に浮かんでいた疑問を投げかける。
   政蔵が|首〈おびと〉を裏切ってでも金庫にあるものを欲している。肝心の中身をカンダタは知らない。金塊でもないだろう。
   「お父様は概念の一部があるとだけ」
   淡々とした口調は何かしらの感情を欠如した塊人そのものであったが、腫れた赤い目が人間と勘違いしてしまいそうだ。
   「禁忌だから用いてはならないと」
   「説明が広大な上に短いせいで何も伝わらないな」
   「私たちも詳しくは教えられていません。話たがなかったので」
   翡翠によると金庫の鍵は上階のスイーツルームにあり、それを開けるには数字の組み合わせと首の目が必要になるらしい。
   「スイートルームにつく前にお父様を奪還しないと」
   覚悟を持った翡翠にカンダタも同意する。金庫が開ければ首は用済みとなって処分だ。そうなれば彼が隠した紅柘榴の秘密についても謎のままに終わってしまう。それだけは避けたい。
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