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3章 死神が誘う遊園地
支配される魂、抗う 13
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カンダタはこれからすべきことを首に確認する。
「楽園が地獄に変わる前に瑠璃を連れ出す。そうだな?」
「ああ、そうだ。あとは私が、彼女を現世に還そう。それとカンダタは、私の嘘に気付いて、いるな?」
思わず、力強く拳を握ってしまう。
「そうだな。ゆっくり話がしたい」
「もろんだ。これは、瑠璃にも話して、おかないと」
「急ごう」
もう時間はないとケイが話を切り上げると光弥の襟首を掴み、歩き出す。
「え?俺も?」
自分は関係ないと距離を置いていた光弥はケイの行動に驚きを隠せない。
拒否を示すもケイの力強い腕ではでは振り解けず、引きずられるようにして連れていかれる。専門知識は光弥が豊富にある。連れて行くのが当然だろう。
「気をつけてください」
ケイについて行くことを決めた清音は振り返るとそれだけをカンダタに言い残す。
すっかり彼女に畏怖の感情を抱かせていると思っていたので予想外の台詞だった。清音も気まずそうに顔を逸し、その場を後にする。
「私たちも急ぎましょう」
翡翠がそう言うので頭を切り替える。
もうすぐ夢の遊園地は終わりを迎える。笑顔で手招きをしていた死神が鎌を振るう時が来たのだ。死神は高笑いをし、混沌と惨劇に呑まれた人々の魂を食う。
その瞬間の足音が聞こえてくるようだ。
水路の水面が波打ち、あたしたちを乗せるゴンドラも大きく揺れた。
小さな地震は何度か起きていたけれど、今回のそれは1番大きくて、胸騒ぎがする。
「計画が終盤になってきた」
向かいに腰掛ける父がぼそりと呟いた。父が見遣る方向にはナイトエリアであり、ホテルがある。
そういえばカンダタたちもあそこにいる。ハクも放置したまま。拗ねてそうね。
ぼんやりとそんなことを考えた。
「計画って?」
「夢園はほぼ完成している。後は守るべきものが収まれば良い」
首はあたしの為の要塞だと言っていた。なるほど、要塞に守るべきものを収めれば完成というわけだ。
「完成したら放浪者の魂をひと塊りにさせ、貯蓄する」
「殺すつもりなの?」
人の命を物扱いするような言い回しはまるで塊人のよう。
「現実よりも夢を選択したのが放浪者だよ」
父はあたしの疑問を否定してなかった。
「現世で生きられない彼らに居心地の良い場所を提供した。その代金を魂で支払ってもらうだけ」
「その理屈だとあたしも代金を払うことになるわよね?」
この遊園地は楽しく感じる一瞬のひと時を永遠にさせるものだ。高校時代に戻るOLも夫を亡くした老婆も。あの時、確かにあった夢のような幸福の日々に戻りたいと願う。
なら、あたしは?あたしが思い返す幸福の日々は?その永遠を得た時の代金は?
「君は特別だ」
父は手に持ったポップコーンを口に運ぶ。そして、カップをあたしの方へ差し出す。
「甘いものは好きだろう?」
あたしは夢園に来てから一口もものを食べていない。そろそろお腹が空いてくる頃合いでキャラメルの香ばしい匂いが誘惑する。
あたしはキャラメルポップコーンを1粒とると口に含む。やっぱり、甘いものはおいしい。
「楽園が地獄に変わる前に瑠璃を連れ出す。そうだな?」
「ああ、そうだ。あとは私が、彼女を現世に還そう。それとカンダタは、私の嘘に気付いて、いるな?」
思わず、力強く拳を握ってしまう。
「そうだな。ゆっくり話がしたい」
「もろんだ。これは、瑠璃にも話して、おかないと」
「急ごう」
もう時間はないとケイが話を切り上げると光弥の襟首を掴み、歩き出す。
「え?俺も?」
自分は関係ないと距離を置いていた光弥はケイの行動に驚きを隠せない。
拒否を示すもケイの力強い腕ではでは振り解けず、引きずられるようにして連れていかれる。専門知識は光弥が豊富にある。連れて行くのが当然だろう。
「気をつけてください」
ケイについて行くことを決めた清音は振り返るとそれだけをカンダタに言い残す。
すっかり彼女に畏怖の感情を抱かせていると思っていたので予想外の台詞だった。清音も気まずそうに顔を逸し、その場を後にする。
「私たちも急ぎましょう」
翡翠がそう言うので頭を切り替える。
もうすぐ夢の遊園地は終わりを迎える。笑顔で手招きをしていた死神が鎌を振るう時が来たのだ。死神は高笑いをし、混沌と惨劇に呑まれた人々の魂を食う。
その瞬間の足音が聞こえてくるようだ。
水路の水面が波打ち、あたしたちを乗せるゴンドラも大きく揺れた。
小さな地震は何度か起きていたけれど、今回のそれは1番大きくて、胸騒ぎがする。
「計画が終盤になってきた」
向かいに腰掛ける父がぼそりと呟いた。父が見遣る方向にはナイトエリアであり、ホテルがある。
そういえばカンダタたちもあそこにいる。ハクも放置したまま。拗ねてそうね。
ぼんやりとそんなことを考えた。
「計画って?」
「夢園はほぼ完成している。後は守るべきものが収まれば良い」
首はあたしの為の要塞だと言っていた。なるほど、要塞に守るべきものを収めれば完成というわけだ。
「完成したら放浪者の魂をひと塊りにさせ、貯蓄する」
「殺すつもりなの?」
人の命を物扱いするような言い回しはまるで塊人のよう。
「現実よりも夢を選択したのが放浪者だよ」
父はあたしの疑問を否定してなかった。
「現世で生きられない彼らに居心地の良い場所を提供した。その代金を魂で支払ってもらうだけ」
「その理屈だとあたしも代金を払うことになるわよね?」
この遊園地は楽しく感じる一瞬のひと時を永遠にさせるものだ。高校時代に戻るOLも夫を亡くした老婆も。あの時、確かにあった夢のような幸福の日々に戻りたいと願う。
なら、あたしは?あたしが思い返す幸福の日々は?その永遠を得た時の代金は?
「君は特別だ」
父は手に持ったポップコーンを口に運ぶ。そして、カップをあたしの方へ差し出す。
「甘いものは好きだろう?」
あたしは夢園に来てから一口もものを食べていない。そろそろお腹が空いてくる頃合いでキャラメルの香ばしい匂いが誘惑する。
あたしはキャラメルポップコーンを1粒とると口に含む。やっぱり、甘いものはおいしい。
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