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3章 死神が誘う遊園地
十如十廻之白御魂 13
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そうしているうちにケイの鼻がある臭いを捉えた。黒蝶の嫌な臭い、カンダタだ。
よりによって切羽詰まった時に来た。
ケイがカンダタに気をとられていると風が吹き上げた。上空を仰いでみればすでにバグの足裏がちらを眺めている。
急いで攻撃範囲外に退いたが、その先には機会を伺っていた鬼がいた。気付いた時には遅く、背後とられたケイに次の回避は望めなかった。
バグが落下し突風が吹く。そうした強風に抗い、踏み切ったカンダタはケイの腰を荒っぽく掴む。その勢いのまま地面に崩れ、2人の身体と石の地面が擦れる。
鬼のかぎ爪は空回りをし、悔しそうな声でケイたちを睨む。
鬼が腕を伸ばして向かってくる。ケイが立ち上がる。白い刀の先端が伸びてくる黒い手を突き、鋭い切っ先はかぎ爪から肩までを貫通する。それだけでは足りず、白い刃の向きを変えると肩から喉を裂いた。
引き抜いた時には屍となっていた。刀にへばりついた血を振るいに落とし、そのままカンダタに向ける。
「待て!」
カンダタは慌てて自らの意思を訴える。助けてあげたのに刀を向けられるのはあんまりだ。
そんな反応を示すものだからケイは首を傾げた。
肌ではためく黒蝶。だが、表情、仕草はカンダタそのものだ。
ケイはカンダタを一瞥し、またバグの方へ向き直る。
「清音たちを頼む」
短く、カンダタに告げる。
少しの戸惑いのあと、ケイはカンダタを信頼することにした。カンダタならやってくれるだろう。
カンダタは意を汲んで地下室に続く大穴に向かう。
走っていくカンダタを見送りはしなかった。ケイはバグの前に立ちはだかる。
明瞭になった視界はバグだけを見据える。
身体が限界だと訴えている。そんな危険信号とは裏腹に意思は熱く、体温が上がる。
ケイは刀を構えた。
バグが空けた大穴に落ちて、地下室に着く。
大穴から近場での高さはそこそこあり、落下するには勇気が必要だった。
意を決して落ちるとなんの衝撃も激痛もなく着地した。蝶化によって身体に変化が起きたのかもしれない。あれほど走ってきたというのに息切れもなかった。
身体の限界が取り除かれたのは嬉しいが素直には喜べない。
動悸がカンダタを襲い、項の痛みが動悸に呼応し、ずきずきと一定の律動を刻む。蝶男の笑い声が遠くから聞こえる。
油断していると呑まれそうになる。カンダタは幻聴を振り払う。
「騒がしいな」
寝台の部屋から現れたのは昌次郎だ。
翡翠の頭から流れた血の感触が思い返され、血流が沸騰しそうになる。
深呼吸をして動悸を抑える。
昌次郎を睨む。彼の背後では寝台で眠る瑠璃とプログラムを行う光弥。
「蝶男か?伝言でもあるのか?」
黒蝶の模様があったのでそう聞いたのだろう。カンダタを通して蝶男が接触してきたのだと昌次郎は勘違いしたようだ。
否定したかったが、やめた。唇を一文字に結び、自我があると悟られないよう目蓋を半ば閉ざし、目線を下ろす。
昌次郎の手に風変わりな十手がある。あれが首と昌次郎が話していた兵器だろうか。
「用があるならさっさと来い」
ケイが切り捨てたであろう鬼の残骸を避け、昌次郎の所まで行く。そこには怯えて震える清音もいた。
「十手か?心配しなくても手に入るたぞ」
悟られていないようだ。
昌次郎は十手をひけらかし、光弥は畏怖の目つきで眺める。
よりによって切羽詰まった時に来た。
ケイがカンダタに気をとられていると風が吹き上げた。上空を仰いでみればすでにバグの足裏がちらを眺めている。
急いで攻撃範囲外に退いたが、その先には機会を伺っていた鬼がいた。気付いた時には遅く、背後とられたケイに次の回避は望めなかった。
バグが落下し突風が吹く。そうした強風に抗い、踏み切ったカンダタはケイの腰を荒っぽく掴む。その勢いのまま地面に崩れ、2人の身体と石の地面が擦れる。
鬼のかぎ爪は空回りをし、悔しそうな声でケイたちを睨む。
鬼が腕を伸ばして向かってくる。ケイが立ち上がる。白い刀の先端が伸びてくる黒い手を突き、鋭い切っ先はかぎ爪から肩までを貫通する。それだけでは足りず、白い刃の向きを変えると肩から喉を裂いた。
引き抜いた時には屍となっていた。刀にへばりついた血を振るいに落とし、そのままカンダタに向ける。
「待て!」
カンダタは慌てて自らの意思を訴える。助けてあげたのに刀を向けられるのはあんまりだ。
そんな反応を示すものだからケイは首を傾げた。
肌ではためく黒蝶。だが、表情、仕草はカンダタそのものだ。
ケイはカンダタを一瞥し、またバグの方へ向き直る。
「清音たちを頼む」
短く、カンダタに告げる。
少しの戸惑いのあと、ケイはカンダタを信頼することにした。カンダタならやってくれるだろう。
カンダタは意を汲んで地下室に続く大穴に向かう。
走っていくカンダタを見送りはしなかった。ケイはバグの前に立ちはだかる。
明瞭になった視界はバグだけを見据える。
身体が限界だと訴えている。そんな危険信号とは裏腹に意思は熱く、体温が上がる。
ケイは刀を構えた。
バグが空けた大穴に落ちて、地下室に着く。
大穴から近場での高さはそこそこあり、落下するには勇気が必要だった。
意を決して落ちるとなんの衝撃も激痛もなく着地した。蝶化によって身体に変化が起きたのかもしれない。あれほど走ってきたというのに息切れもなかった。
身体の限界が取り除かれたのは嬉しいが素直には喜べない。
動悸がカンダタを襲い、項の痛みが動悸に呼応し、ずきずきと一定の律動を刻む。蝶男の笑い声が遠くから聞こえる。
油断していると呑まれそうになる。カンダタは幻聴を振り払う。
「騒がしいな」
寝台の部屋から現れたのは昌次郎だ。
翡翠の頭から流れた血の感触が思い返され、血流が沸騰しそうになる。
深呼吸をして動悸を抑える。
昌次郎を睨む。彼の背後では寝台で眠る瑠璃とプログラムを行う光弥。
「蝶男か?伝言でもあるのか?」
黒蝶の模様があったのでそう聞いたのだろう。カンダタを通して蝶男が接触してきたのだと昌次郎は勘違いしたようだ。
否定したかったが、やめた。唇を一文字に結び、自我があると悟られないよう目蓋を半ば閉ざし、目線を下ろす。
昌次郎の手に風変わりな十手がある。あれが首と昌次郎が話していた兵器だろうか。
「用があるならさっさと来い」
ケイが切り捨てたであろう鬼の残骸を避け、昌次郎の所まで行く。そこには怯えて震える清音もいた。
「十手か?心配しなくても手に入るたぞ」
悟られていないようだ。
昌次郎は十手をひけらかし、光弥は畏怖の目つきで眺める。
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