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3章 死神が誘う遊園地
痛みの共鳴 3
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青年は失望、憎悪、生の執着といった複雑な心境を2つの目で表しながら倒れている。
横たわる青年を見て、サバイバルナイフを見てからあたしの両手を見た。どれも血塗れだ。
「違う」
雨の静寂にぽつりと呟いた。
違う違う。これはあたしじゃない。あたしのせいじゃない。なら誰のせい?
「ママ」
不意に現れた女の子があたしを見上げていた。金髪に青い瞳。あたしにそっくりな女の子。
「可愛い天使の子。ホットチョコレートを飲みましょう」
小さな女の子が目を細める。女の子に不釣り合いな大人びた声で あたしに話しかける。
不思議と安らぎがあり、安息を壊す不穏さがあった。
「とろみのあるチョコレートにナッツを入れてあなたの好きなフリュイコンフィも入れましょう」
「やめて」
それは愛に満ちた幸せの言葉。
「3時のテーブルでビスケットと一緒に私たちだけの女子会を開きましょう」
捨てたの。それを捨てたの。燃えるゴミの日に一緒に燃やした。今更、聞きたくない。
「愛してるわ」
禁句の一言が引き金となった。
「あああああ!」
私じゃないあたしが腹の底から怒りの雄叫びを上げ、サバイバルナイフを掲げる。
女の子は恐怖で顔が引きつり、 あたしから逃げる。怒気を含んだ刃を向け、小さな背中を追いかける。
女の子が逃げた先は和式トイレだった。
古びてさび付いた鍵。でも、しっかりと役割を全うしている。乱暴にドアノブを回しても、ドアを叩いても開かない。
閉じたドアの向こうから女の子が恐怖でパニックになったいた。「嫌だ嫌だ」と裏切られた女の子が泣き叫ぶ。
それすらも腹立たしくなって、サバイバルナイフをドアに突きたてた。
「何が愛してるだ!ふざけるな!」
裏切られたと言ってくる表情が気に入らない。
「もとから愛してなかったくせに!」
突き立てたナイフを抜き、また突きたてる。そうしてできた穴の向こうにはトイレにしがみつく女の子がいた。
愛されていると信じた女の子。愛されたくて従順に従っていた女の子。
気に入らない。腹立たしい。細い首を絞めなければ気が済まない。
「あんたのせいだ!」
母の言葉を信じ、疑わなかった。
「傷つかなくて済んだのに!」
わかっていれば、知っていれば、悟っていれば、「愛されていない」事実に傷を負わされなかった。
「なのに!なんで!」
母から貰った偽物の言葉を今も持っている。
「それでも」
中から女性の声が聞こえた。女の子のものではない。母でもない。聞き覚えのない声。
「それでも生きてきたんでしょう?」
優しく穏やかな声。まるで春のようだった。
あたしはドアノブを回した。鍵は開いていた。
和式トイレにしがみついていた女の子は消えていた。代わりに瞳に涙を溜めた女性が痛々しそうに見つめている。赤い花柄の着物に艶やかな黒髪が印象的だった。
「生きよう、辛くても」
向けられた言葉は残酷だった。でも差し出された手があまりにも優しかったからつい握り返してしまった。
「一緒にいてくれる人がいるから」
「誰がいるっていうの」
愛してくれる人はいない。母に裏切られ、父には拒絶された。「愛してる」を貰えなかったから誰も愛せない。そんな世界でも生きろと言う。
瞳に溜まっていた涙が頬を伝う。握ってくれた手が「大丈夫」と言ってくれた。
握られた手が暖かく、強い。実感があるせいかそれが真実だと思えた。
目を瞑る。
この心地よさは眠る前の安心感に似ていた。
横たわる青年を見て、サバイバルナイフを見てからあたしの両手を見た。どれも血塗れだ。
「違う」
雨の静寂にぽつりと呟いた。
違う違う。これはあたしじゃない。あたしのせいじゃない。なら誰のせい?
「ママ」
不意に現れた女の子があたしを見上げていた。金髪に青い瞳。あたしにそっくりな女の子。
「可愛い天使の子。ホットチョコレートを飲みましょう」
小さな女の子が目を細める。女の子に不釣り合いな大人びた声で あたしに話しかける。
不思議と安らぎがあり、安息を壊す不穏さがあった。
「とろみのあるチョコレートにナッツを入れてあなたの好きなフリュイコンフィも入れましょう」
「やめて」
それは愛に満ちた幸せの言葉。
「3時のテーブルでビスケットと一緒に私たちだけの女子会を開きましょう」
捨てたの。それを捨てたの。燃えるゴミの日に一緒に燃やした。今更、聞きたくない。
「愛してるわ」
禁句の一言が引き金となった。
「あああああ!」
私じゃないあたしが腹の底から怒りの雄叫びを上げ、サバイバルナイフを掲げる。
女の子は恐怖で顔が引きつり、 あたしから逃げる。怒気を含んだ刃を向け、小さな背中を追いかける。
女の子が逃げた先は和式トイレだった。
古びてさび付いた鍵。でも、しっかりと役割を全うしている。乱暴にドアノブを回しても、ドアを叩いても開かない。
閉じたドアの向こうから女の子が恐怖でパニックになったいた。「嫌だ嫌だ」と裏切られた女の子が泣き叫ぶ。
それすらも腹立たしくなって、サバイバルナイフをドアに突きたてた。
「何が愛してるだ!ふざけるな!」
裏切られたと言ってくる表情が気に入らない。
「もとから愛してなかったくせに!」
突き立てたナイフを抜き、また突きたてる。そうしてできた穴の向こうにはトイレにしがみつく女の子がいた。
愛されていると信じた女の子。愛されたくて従順に従っていた女の子。
気に入らない。腹立たしい。細い首を絞めなければ気が済まない。
「あんたのせいだ!」
母の言葉を信じ、疑わなかった。
「傷つかなくて済んだのに!」
わかっていれば、知っていれば、悟っていれば、「愛されていない」事実に傷を負わされなかった。
「なのに!なんで!」
母から貰った偽物の言葉を今も持っている。
「それでも」
中から女性の声が聞こえた。女の子のものではない。母でもない。聞き覚えのない声。
「それでも生きてきたんでしょう?」
優しく穏やかな声。まるで春のようだった。
あたしはドアノブを回した。鍵は開いていた。
和式トイレにしがみついていた女の子は消えていた。代わりに瞳に涙を溜めた女性が痛々しそうに見つめている。赤い花柄の着物に艶やかな黒髪が印象的だった。
「生きよう、辛くても」
向けられた言葉は残酷だった。でも差し出された手があまりにも優しかったからつい握り返してしまった。
「一緒にいてくれる人がいるから」
「誰がいるっていうの」
愛してくれる人はいない。母に裏切られ、父には拒絶された。「愛してる」を貰えなかったから誰も愛せない。そんな世界でも生きろと言う。
瞳に溜まっていた涙が頬を伝う。握ってくれた手が「大丈夫」と言ってくれた。
握られた手が暖かく、強い。実感があるせいかそれが真実だと思えた。
目を瞑る。
この心地よさは眠る前の安心感に似ていた。
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