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3章 死神が誘う遊園地
痛みの共鳴 9
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全てが破壊されたあとは何があるだろう。
例えば子供の癇癪。物を投げ、家具を倒し、泣き疲れたあとはどうなるか。
それは散らかした部屋の片付けだ。
自ら壊したものを自ら処分して何もなかった綺麗な部屋に戻す。それはひどく虚しいものだ。
破壊したあとも爽快で晴れやかな心境が待っていると信じていた。
大波を起こし、水路の港町を沈ませ、森林の木々を薙ぎ倒し、白い城を原形なくすほどに破壊した。壊して叫んだあとに残ったのは痛みだけだ。
鎮まった怒りの代わりに悲しみと空虚が占める。
叫びすぎて喉が痛い。これは新たにできた痛みだ。
瑠璃は白い瓦礫の上で腰かける。そういえば、この瓦礫の山には城があったな、とぼんやり考える。
「座り心地は最悪ね」
枯れた声をしている。瑠璃も喉が痛いらしい。
瑠璃の後ろでは疲れきったカンダタが仰向けになって横たえていた。破壊の限りを尽くした蜘蛛の脚は満足したのか、カンダタの背中から消え去った。
2人は疲弊しきっていた。
「父親のとどめを刺しに行かないのか?」
覇気のない声でカンダタが問う。
「ゴンドラの時は止めたくせに」
「夢の世界だ。誰にも咎められない」
この世界には法律はない。気にすべき世間もいない。人を殺しても現世では誰も気付かない。
しかし、瑠璃は首を横に振った。
「もういいの。色々とふっ切れたから」
父に愛されたかった、傷つけられた。それを認めたくなかった。幼い頃から認められずにいた。
瑠璃は悔しかったのだ。皆が当たり前に貰ってるそれを彼女は貰えなかったのだから。
叫んで嘆いて破壊して、そして空いた感情の穴に認められなかった事実がすんなりと収まった。悲しいことには変わらず、父は許せない。
でも、やっと前に進められる。
「カンダタはどうなの?」
瑠璃に問われ、カンダタは「そうだな」と目を瞑る。
「べにに会いたい」
結局、カンダタが辿り着くのはそこなのだ。
紅柘榴と生きたかった。
「べにの手をとって、外の世界を見せて、それから自分たちの子と暮らすんだ」
今はもう成されない夢を語った。瑠璃は嫌味も茶化しもなく「そう」とだけ相打ちをするだけだった。
傷が痛む。それは悲しみとなり、赤い瞳から涙が零れる。
「カンダタは彼女を想って生きるのね」
瑠璃が要約するとカンダタは頷く。
辛いだろう。また壊したくなるだろう。それでも紅柘榴を忘れることは到底できない。彼女は偉大すぎる。
「それでいいと思うわよ。真実の愛に心酔してる奴なんかよりずっとマシだわ」
それは自分の父親のことだろう。褒められているような嫌味を言われているような。だが、瑠璃らしい。
瑠璃の横顔は誇らしく笑みを称えている。なぜそんな風に笑えるのか。
不思議そうに横顔を眺めていた。誇った微笑に見覚えがある。
赤い着物に黒い長髪。瑠璃とは似ても似つかない彼女が重なって見えた。
例えば子供の癇癪。物を投げ、家具を倒し、泣き疲れたあとはどうなるか。
それは散らかした部屋の片付けだ。
自ら壊したものを自ら処分して何もなかった綺麗な部屋に戻す。それはひどく虚しいものだ。
破壊したあとも爽快で晴れやかな心境が待っていると信じていた。
大波を起こし、水路の港町を沈ませ、森林の木々を薙ぎ倒し、白い城を原形なくすほどに破壊した。壊して叫んだあとに残ったのは痛みだけだ。
鎮まった怒りの代わりに悲しみと空虚が占める。
叫びすぎて喉が痛い。これは新たにできた痛みだ。
瑠璃は白い瓦礫の上で腰かける。そういえば、この瓦礫の山には城があったな、とぼんやり考える。
「座り心地は最悪ね」
枯れた声をしている。瑠璃も喉が痛いらしい。
瑠璃の後ろでは疲れきったカンダタが仰向けになって横たえていた。破壊の限りを尽くした蜘蛛の脚は満足したのか、カンダタの背中から消え去った。
2人は疲弊しきっていた。
「父親のとどめを刺しに行かないのか?」
覇気のない声でカンダタが問う。
「ゴンドラの時は止めたくせに」
「夢の世界だ。誰にも咎められない」
この世界には法律はない。気にすべき世間もいない。人を殺しても現世では誰も気付かない。
しかし、瑠璃は首を横に振った。
「もういいの。色々とふっ切れたから」
父に愛されたかった、傷つけられた。それを認めたくなかった。幼い頃から認められずにいた。
瑠璃は悔しかったのだ。皆が当たり前に貰ってるそれを彼女は貰えなかったのだから。
叫んで嘆いて破壊して、そして空いた感情の穴に認められなかった事実がすんなりと収まった。悲しいことには変わらず、父は許せない。
でも、やっと前に進められる。
「カンダタはどうなの?」
瑠璃に問われ、カンダタは「そうだな」と目を瞑る。
「べにに会いたい」
結局、カンダタが辿り着くのはそこなのだ。
紅柘榴と生きたかった。
「べにの手をとって、外の世界を見せて、それから自分たちの子と暮らすんだ」
今はもう成されない夢を語った。瑠璃は嫌味も茶化しもなく「そう」とだけ相打ちをするだけだった。
傷が痛む。それは悲しみとなり、赤い瞳から涙が零れる。
「カンダタは彼女を想って生きるのね」
瑠璃が要約するとカンダタは頷く。
辛いだろう。また壊したくなるだろう。それでも紅柘榴を忘れることは到底できない。彼女は偉大すぎる。
「それでいいと思うわよ。真実の愛に心酔してる奴なんかよりずっとマシだわ」
それは自分の父親のことだろう。褒められているような嫌味を言われているような。だが、瑠璃らしい。
瑠璃の横顔は誇らしく笑みを称えている。なぜそんな風に笑えるのか。
不思議そうに横顔を眺めていた。誇った微笑に見覚えがある。
赤い着物に黒い長髪。瑠璃とは似ても似つかない彼女が重なって見えた。
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