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4章 闇底で交わす小指
カンダタ、生前 幸せな夢 6
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まだ温もりが残る肝臓を摘んで床に落とす。
床と肝臓が衝突する度にぶるんと震えて正面に纏った血が周囲に飛び散る。
楽しくもないのに摘んで落としてを繰り返し、飽きてきたら肝臓を鷲掴みにして壁に叩きつける。
無性に苛々する。
先程まであんなに高らかに笑っていたのに虐殺が終われば醜い私が残るだけ。
静寂になった暗闇で息を呑む声が聞こえた。
見渡してみれば一人だけ人間が横たわっている。八つ裂きにされ、内臓が千切れた三人に比べ、こいつは身体の損傷が少ない。
「なんだ、まだ生きてたの?」
死んだふりをしていた人間は慌てて立ち上がろうとするも潰された脚ではどこにも逃げられない。
私は乱雑した筋肉の一部や内臓を踏みつけながら生き残った人間に近寄ると腕を掴んで持ち上げる。
人間はなす術もなく立たされ低く唸る。
脇腹からち千切れた腸が垂れている。畝って揺れる腸は大きな蚯蚓に似ている。
蚯蚓よりも気持ち悪い。
「助けて、許して」
覇気のない声で訴える。人間には逃げる力も大声を出す力も残されていない。
「私、仏様じゃないの」
どれほど命乞いされても危害を加えようとしたのは事実で、それを許すつもりはない。
とどめを刺すその前に背後の戸が開いた。人肉と体液で充満した室内を日の光が照らす。
「それはまだ使うんだ。殺さないでくれ」
光の中に立つ蝶男が変わらない調子で言う。
私は人間の腕を放す。臓物の上に落ちた人間は短い悲鳴を上げた。
「こいつらあなたの名前を言っていた」
騒いでいた人間たちは蝶男に対して憎悪の言葉を吐き、しきりに騙されたと繰り返していた。
「何を企んでいるの?」
人間たちを仕向けた蝶男は笑うとべちゃべちゃと濡れた床を歩き、私の隣に立つ。
「魂と遺伝の関係について研究中でね」
そう言われても意味がわからず首を傾げる。
「それよりも今回は派手にやったじゃないか」
床から天井まで人肉と体液で汚れた室内を見渡す。
「繁殖が生命の存在理由なのだから本能に従って身を委ねればいいのに。わざわざそれに抗うとは」
理解できないと蝶男は呟く。
蝶男がこの人間たちを仕向けたのは私を強姦させる為だ。いや、彼は強姦とさえ思っていない。これが人の本能なのだから、当然のことだと捉えている。
今更、こいつの価値観に抗議はしない。無駄だととうの昔に知っている。
「感情とは厄介なものだね」
私が沈黙していると蝶男が生き残った人間の襟首を掴み、外へと運ぶ。
「掃除しておいてくれ」
それだけ言い残して去る。
私は溜め息を吐いてから緊張の糸を切った。
部屋を見渡せば人の原型さえも残っていない肉片が飛び散って、どこもかしこも赤黒く染まっている。
私自身も同じ色に染まり、肌や髪がべた付いて気色悪い。これが自分のものではなく、あの男たちのものであるから尚更だ。
先に身体を洗わないと。
髪を掬ってみると毛先が血によって固まっている。
濡烏色の髪が綺麗だと、梳きながら言ってくれた彼を思い出す。純粋な赤い瞳で言われた。
今の私を見たら、なんと言われるだろうか。 憎しみに顔を歪めて罵る?それと恐怖して逃げる?
褒めてくれた髪は血で固まり、彼が温めてくれた手は虐殺の跡を残す。
震える肩を両腕で抱きしめ、涙を隠すように蹲る。
こんなにも、こんなにも醜い。綺麗なものなんて何一つない。
床と肝臓が衝突する度にぶるんと震えて正面に纏った血が周囲に飛び散る。
楽しくもないのに摘んで落としてを繰り返し、飽きてきたら肝臓を鷲掴みにして壁に叩きつける。
無性に苛々する。
先程まであんなに高らかに笑っていたのに虐殺が終われば醜い私が残るだけ。
静寂になった暗闇で息を呑む声が聞こえた。
見渡してみれば一人だけ人間が横たわっている。八つ裂きにされ、内臓が千切れた三人に比べ、こいつは身体の損傷が少ない。
「なんだ、まだ生きてたの?」
死んだふりをしていた人間は慌てて立ち上がろうとするも潰された脚ではどこにも逃げられない。
私は乱雑した筋肉の一部や内臓を踏みつけながら生き残った人間に近寄ると腕を掴んで持ち上げる。
人間はなす術もなく立たされ低く唸る。
脇腹からち千切れた腸が垂れている。畝って揺れる腸は大きな蚯蚓に似ている。
蚯蚓よりも気持ち悪い。
「助けて、許して」
覇気のない声で訴える。人間には逃げる力も大声を出す力も残されていない。
「私、仏様じゃないの」
どれほど命乞いされても危害を加えようとしたのは事実で、それを許すつもりはない。
とどめを刺すその前に背後の戸が開いた。人肉と体液で充満した室内を日の光が照らす。
「それはまだ使うんだ。殺さないでくれ」
光の中に立つ蝶男が変わらない調子で言う。
私は人間の腕を放す。臓物の上に落ちた人間は短い悲鳴を上げた。
「こいつらあなたの名前を言っていた」
騒いでいた人間たちは蝶男に対して憎悪の言葉を吐き、しきりに騙されたと繰り返していた。
「何を企んでいるの?」
人間たちを仕向けた蝶男は笑うとべちゃべちゃと濡れた床を歩き、私の隣に立つ。
「魂と遺伝の関係について研究中でね」
そう言われても意味がわからず首を傾げる。
「それよりも今回は派手にやったじゃないか」
床から天井まで人肉と体液で汚れた室内を見渡す。
「繁殖が生命の存在理由なのだから本能に従って身を委ねればいいのに。わざわざそれに抗うとは」
理解できないと蝶男は呟く。
蝶男がこの人間たちを仕向けたのは私を強姦させる為だ。いや、彼は強姦とさえ思っていない。これが人の本能なのだから、当然のことだと捉えている。
今更、こいつの価値観に抗議はしない。無駄だととうの昔に知っている。
「感情とは厄介なものだね」
私が沈黙していると蝶男が生き残った人間の襟首を掴み、外へと運ぶ。
「掃除しておいてくれ」
それだけ言い残して去る。
私は溜め息を吐いてから緊張の糸を切った。
部屋を見渡せば人の原型さえも残っていない肉片が飛び散って、どこもかしこも赤黒く染まっている。
私自身も同じ色に染まり、肌や髪がべた付いて気色悪い。これが自分のものではなく、あの男たちのものであるから尚更だ。
先に身体を洗わないと。
髪を掬ってみると毛先が血によって固まっている。
濡烏色の髪が綺麗だと、梳きながら言ってくれた彼を思い出す。純粋な赤い瞳で言われた。
今の私を見たら、なんと言われるだろうか。 憎しみに顔を歪めて罵る?それと恐怖して逃げる?
褒めてくれた髪は血で固まり、彼が温めてくれた手は虐殺の跡を残す。
震える肩を両腕で抱きしめ、涙を隠すように蹲る。
こんなにも、こんなにも醜い。綺麗なものなんて何一つない。
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