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4章 闇底で交わす小指
生命になれなかった子たち 9
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先行していた瑠璃が足を止める。険しく見つめるその方向、回廊の真ん中に妙なものが置かれていた。
4本足の背が高い椅子に裸体の女性が身体を丸めて座っていた。背は折り畳まれ曲がり、その腕には黒い箱が抱かれていた。
皮の色や質は人間のそれと変わりない。微動だにせず、呼吸音も聞こえないとなると生命の質感が損なわれているように見える。
瑠璃はカンダタをみて、カンダタは黙って頷く。
今は悪趣味な飾り物にしか見えない。それが動いてカンダタたちを襲ってくる可能性もある。何が起こるかわからないのだから想像できる全ての事象に可能性がある。
「俺が前に行こうか?」
「いらない」
即答されてしまった。予想通りでもある。
裸体の飾り物を避けて回廊の端に寄る。瑠璃は一度だけ飾り物を見てすぐに向き直る。代わりにカンダタが警戒する。
瑠璃の後に続き、カンダタが横を通っても生命のないそれは微動だにしない。女性が抱えている黒い箱。よく見れば細かな模様が描かれていた。急に箱の中身が気になった。
箱は開けてはいけないと河原の子供が忠告していた。
女性が大事に抱えているこれが例の箱ならば中身を見ないほうがいい。
回廊を進めば同じような女性が1つ2つと点在し、進むほどにに増えていく。どれも同じ姿勢をしており、黒い箱を盗られまいと大事に抱えていた。
黒い箱は物によって大きさが違っていた。赤子ほどの大きさから小さいのでは親指ぐらいの物しかない。大小様々あるが、どの女性も黒い箱を大事にしているのは変わりない。
椅子に丸まる裸体の女性を一つ一つ、警戒するも、変化のない彼女たちは胎動が鳴る静寂の中で箱を守っている。
変化が起きたのは瑠璃の袖が女性に触れてしまってたからだ。瑠璃本人も触れてしまったと気付きにくいほどの細かな接触だった。
「ああああ!」
沈黙していた裸体の女性が金切り声の悲鳴を上げた。カンダタと瑠璃は慄き、後退り身構える。
女性は絶叫するだけでこちらに何か仕掛けるわけでもなかった。
そして、金切り声の絶叫から言葉を持った叫びへと変わる。
「お願い!やめて!」
叫びながら懇願する。それはカンダタたちに向けられたものではない。
「殺さないで!お腹に子供がいるの!やめてやめて!ねえ!誰か!助けて!」
当時に起きた惨劇が音声のみで再現されているようだった。
女性の身に降りかかった惨劇が現実にあったのだ。絶叫し、懇願する音声は嫌でもそれを理解させる説得力があった。
「ああっ!ああっ!ああ、あああ、あぁ」
金切り声の絶叫は弱まっていき、女性の声帯は言葉を綴らず、悲しい音だけ流す。
椅子の足元に血溜まりができていた。女性の股と黒い箱から流れ出たものだ。
カンダタも瑠璃もこんなものを聞きたくない。あまりにも痛々しい。叫びに唖然としてしまった。
「近寄らないほうがよさそうね」
我に返った瑠璃が呟く。カンダタは衝撃の余韻を残したまま頷いた。
胎動が静かに脈打つ静寂。しかし、そこに孕んであるのは胎児の憎悪と惨劇の記憶だった。
4本足の背が高い椅子に裸体の女性が身体を丸めて座っていた。背は折り畳まれ曲がり、その腕には黒い箱が抱かれていた。
皮の色や質は人間のそれと変わりない。微動だにせず、呼吸音も聞こえないとなると生命の質感が損なわれているように見える。
瑠璃はカンダタをみて、カンダタは黙って頷く。
今は悪趣味な飾り物にしか見えない。それが動いてカンダタたちを襲ってくる可能性もある。何が起こるかわからないのだから想像できる全ての事象に可能性がある。
「俺が前に行こうか?」
「いらない」
即答されてしまった。予想通りでもある。
裸体の飾り物を避けて回廊の端に寄る。瑠璃は一度だけ飾り物を見てすぐに向き直る。代わりにカンダタが警戒する。
瑠璃の後に続き、カンダタが横を通っても生命のないそれは微動だにしない。女性が抱えている黒い箱。よく見れば細かな模様が描かれていた。急に箱の中身が気になった。
箱は開けてはいけないと河原の子供が忠告していた。
女性が大事に抱えているこれが例の箱ならば中身を見ないほうがいい。
回廊を進めば同じような女性が1つ2つと点在し、進むほどにに増えていく。どれも同じ姿勢をしており、黒い箱を盗られまいと大事に抱えていた。
黒い箱は物によって大きさが違っていた。赤子ほどの大きさから小さいのでは親指ぐらいの物しかない。大小様々あるが、どの女性も黒い箱を大事にしているのは変わりない。
椅子に丸まる裸体の女性を一つ一つ、警戒するも、変化のない彼女たちは胎動が鳴る静寂の中で箱を守っている。
変化が起きたのは瑠璃の袖が女性に触れてしまってたからだ。瑠璃本人も触れてしまったと気付きにくいほどの細かな接触だった。
「ああああ!」
沈黙していた裸体の女性が金切り声の悲鳴を上げた。カンダタと瑠璃は慄き、後退り身構える。
女性は絶叫するだけでこちらに何か仕掛けるわけでもなかった。
そして、金切り声の絶叫から言葉を持った叫びへと変わる。
「お願い!やめて!」
叫びながら懇願する。それはカンダタたちに向けられたものではない。
「殺さないで!お腹に子供がいるの!やめてやめて!ねえ!誰か!助けて!」
当時に起きた惨劇が音声のみで再現されているようだった。
女性の身に降りかかった惨劇が現実にあったのだ。絶叫し、懇願する音声は嫌でもそれを理解させる説得力があった。
「ああっ!ああっ!ああ、あああ、あぁ」
金切り声の絶叫は弱まっていき、女性の声帯は言葉を綴らず、悲しい音だけ流す。
椅子の足元に血溜まりができていた。女性の股と黒い箱から流れ出たものだ。
カンダタも瑠璃もこんなものを聞きたくない。あまりにも痛々しい。叫びに唖然としてしまった。
「近寄らないほうがよさそうね」
我に返った瑠璃が呟く。カンダタは衝撃の余韻を残したまま頷いた。
胎動が静かに脈打つ静寂。しかし、そこに孕んであるのは胎児の憎悪と惨劇の記憶だった。
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