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4章 闇底で交わす小指
決断 9
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あたしは出入口を潜り、振り返る。出入口も通路も子取りが通れる大きさをしていない。
そんな杞憂は無意味だったみたいで、子取りは持ち前の怪力で壁や天井を崩す。
砂の山を壊すような容易さに戦慄する。頭上の天井に亀裂が入る。
誘導なんか言ってられない。子取りの遅い歩調に合わせていたら生き埋めになってしまう。
子取りが狭い通路を無理にでも通ろうとするから天井や壁の瓦礫に自身が埋もれる。あの巨躯と怪力だとその障害も乗り越えられそう。
1本の通路を走り抜ける。広がる亀裂よりも速く走りたいのに背中の清音が重い。カンダタはよくこんな重荷を背負って忘れたと感服する。
いっそのこと清音を捨てようかしら。
あたしの記憶では、一本道の通路が続いて、ドアを潜れば暗い靄に囲まれた空間。そこをまっすぐ進めば壺の出口だったはず。
恐れていたのは足の遅い子取りよりもどんどん広がっていく亀裂で、あたしが行く先の床にまで至っていた。
開けたドアを抜け、暗い靄の空間まで来る。狭い通路と違ってここは広い。
靄の冷たい空気を吸い込むと崩れるように膝をついた。
夢中で走っていたせいで体力は底をつき、背負っている重荷に耐えられなかった。
子取りと随分離れてしまった。呼吸が落ち着くまで休んでいようか。
そうした怠惰な邪心はすぐに消えた。子取りの叫び声が壁の向こう側から聞こえる。それとは別にピキピキと音が鳴る。
明確に聞こえるのはそれが近くで鳴っているから。
あたしの頭に粉が落ちる。見上げてみても真上は暗闇ばかりで何も見えない。
そうだとしても、謎の音と粉は状況を知らせるには充分だった。この空間の天井にも亀裂が入っている。
膝をついた身体に鞭を打って立ち上がる。あたしが走り出した直後、子取りが壁を破壊して現れた。
ちゃんとついてきてくれている。それはあたしの思惑通りだけれど、もう少し周りを配慮してほしいわね。
息は絶え絶えで、体力は限界だと訴えている。もう少しでゴールだからと自分自身を奮起させて脚を引きずるようにして進む。
暗闇に光が差す。見覚えのある光のシルエットに希望が灯る。光が強くなる方へと向かう。
あたしの脚はすっかり遅くなって、子取りとの距離が縮まっていく。壺の縁が間近になり、足をかけて赤と青の螺旋階段の踊り場に着地するも自身と清音の重さに耐えきれず、転倒する。
頭上では壺の縁にまで亀裂が入り、そこから子取りの腫れぼったい顔が覗いてきた。
巨大な赤子の手が壺から伸びると壺全体に亀裂が広がる。
まずい、と急いで立ち上がる。瞬間、壺が破裂した。バラバラになった瓦礫から蠍の鬼が荒れ狂った勢いで現れた。
蠍の鬼を拘束していた白糸は切れてしまったようだ。
カンダタはどうなった?蠍の鬼に殺された?
そうした考えがいくつも巡り、逃げるのを忘れた。しかし、瓦礫は落ちてこず、破裂した瞬間を一時停止させたようにその場に留まった。
子取りが踊り場に落ちながらもあたしを求めて手を伸ばす。その指があたしの腹に触れ、更に蠍の鬼が子取りの腰にのしかかる。
その拍子に子取りは踊り場の外へと押された。肥満化した身体はその重さに耐えきれず、螺旋階段の外へと落ちていく。
子取りの指に触れられていたあたしも必然的に押され、抵抗の間もなく、宙に浮く感覚を覚える。
あたしとあたしの背で眠る清音が踊り場から落ちる。頭上には空中で留まる瓦礫。その下は蠢く大蛇の湖。
助からない。
悲観でもなく、恐怖でもない。俯瞰した思考が告げていた。
そんな杞憂は無意味だったみたいで、子取りは持ち前の怪力で壁や天井を崩す。
砂の山を壊すような容易さに戦慄する。頭上の天井に亀裂が入る。
誘導なんか言ってられない。子取りの遅い歩調に合わせていたら生き埋めになってしまう。
子取りが狭い通路を無理にでも通ろうとするから天井や壁の瓦礫に自身が埋もれる。あの巨躯と怪力だとその障害も乗り越えられそう。
1本の通路を走り抜ける。広がる亀裂よりも速く走りたいのに背中の清音が重い。カンダタはよくこんな重荷を背負って忘れたと感服する。
いっそのこと清音を捨てようかしら。
あたしの記憶では、一本道の通路が続いて、ドアを潜れば暗い靄に囲まれた空間。そこをまっすぐ進めば壺の出口だったはず。
恐れていたのは足の遅い子取りよりもどんどん広がっていく亀裂で、あたしが行く先の床にまで至っていた。
開けたドアを抜け、暗い靄の空間まで来る。狭い通路と違ってここは広い。
靄の冷たい空気を吸い込むと崩れるように膝をついた。
夢中で走っていたせいで体力は底をつき、背負っている重荷に耐えられなかった。
子取りと随分離れてしまった。呼吸が落ち着くまで休んでいようか。
そうした怠惰な邪心はすぐに消えた。子取りの叫び声が壁の向こう側から聞こえる。それとは別にピキピキと音が鳴る。
明確に聞こえるのはそれが近くで鳴っているから。
あたしの頭に粉が落ちる。見上げてみても真上は暗闇ばかりで何も見えない。
そうだとしても、謎の音と粉は状況を知らせるには充分だった。この空間の天井にも亀裂が入っている。
膝をついた身体に鞭を打って立ち上がる。あたしが走り出した直後、子取りが壁を破壊して現れた。
ちゃんとついてきてくれている。それはあたしの思惑通りだけれど、もう少し周りを配慮してほしいわね。
息は絶え絶えで、体力は限界だと訴えている。もう少しでゴールだからと自分自身を奮起させて脚を引きずるようにして進む。
暗闇に光が差す。見覚えのある光のシルエットに希望が灯る。光が強くなる方へと向かう。
あたしの脚はすっかり遅くなって、子取りとの距離が縮まっていく。壺の縁が間近になり、足をかけて赤と青の螺旋階段の踊り場に着地するも自身と清音の重さに耐えきれず、転倒する。
頭上では壺の縁にまで亀裂が入り、そこから子取りの腫れぼったい顔が覗いてきた。
巨大な赤子の手が壺から伸びると壺全体に亀裂が広がる。
まずい、と急いで立ち上がる。瞬間、壺が破裂した。バラバラになった瓦礫から蠍の鬼が荒れ狂った勢いで現れた。
蠍の鬼を拘束していた白糸は切れてしまったようだ。
カンダタはどうなった?蠍の鬼に殺された?
そうした考えがいくつも巡り、逃げるのを忘れた。しかし、瓦礫は落ちてこず、破裂した瞬間を一時停止させたようにその場に留まった。
子取りが踊り場に落ちながらもあたしを求めて手を伸ばす。その指があたしの腹に触れ、更に蠍の鬼が子取りの腰にのしかかる。
その拍子に子取りは踊り場の外へと押された。肥満化した身体はその重さに耐えきれず、螺旋階段の外へと落ちていく。
子取りの指に触れられていたあたしも必然的に押され、抵抗の間もなく、宙に浮く感覚を覚える。
あたしとあたしの背で眠る清音が踊り場から落ちる。頭上には空中で留まる瓦礫。その下は蠢く大蛇の湖。
助からない。
悲観でもなく、恐怖でもない。俯瞰した思考が告げていた。
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