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5章 恋焦がれ巡る地獄旅行
絡まる思慕 9
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身体が回転しても、目に映るのは暗闇ばかりでどこに落ちたのか未だにわからない。
湿った地面に寝転がったまま、瑠璃と清音を視認する。清音もカンダタのように線を彷徨わせる。次に瑠璃を探そうとするが、暗闇が彼女を隠す。
混乱した頭を抱えながら立ち上がる。滑降は短く、落ちたのが柔らかい地面だったので怪我はなかった。
瑠璃を探そうと見渡す。瑠璃の姿は壊落した管の傍で転がっていた。腕を取り起き上がらせる。
瑠璃の傍まで駆けるよりも先にカンダタは疑問が浮かんだ。
暗闇で狭くなった視界が広くなっている。明るくなっているのだ。それを認識した途端、周囲の暗闇が徐々に取り払われ、視界が広がっていく。
薄藤色の淡い光に照らされた区域は鬼の餌場より狭く、天井も低く造られていた。
この区域には餌を欲しがる鬼はいない。しかし、夢見草が群生し、カンダタたちを囲んでいる。湿った柔らかい地面は苔で全面覆われている。
夢見草の根が苔を這ってカンダタたちを捕らえる。その前にここから脱出しなければならない。
しかし、大量の蛆が這ってくるように隠れていた囚人が盛り上がった苔から現れた。
管の影に潜む1体の囚人が瑠璃の腕を掴む。彼女は倒れたまま動かない。また気絶している。
カンダタは清音の腕を離し、瑠璃の下へと全力で走るとその勢いを保ったまま囚人の腹下を蹴り上げる。軽い囚人は一発の蹴りでも飛ばされる。
瑠璃を起こす。使命感に似たものが働き働いていた。
その前に閉じられていた目蓋がぱっと上がり、覚醒した瑠璃は起き上がる。
不調で悩まされていたはずの瑠璃は壊落した管を俊敏な動きで登る。先ほどまで足取りが覚束なかった彼女とは思えない。
「瑠璃! 1人でどこ行くの?」
カンダタのところまで駆け寄った清音が叫ぶようにと問いかけるも瑠璃は答えずに登り続ける。
カンダタには瑠璃の考えが理解できた。確かに地面にいるよりはパイプに上にいたほうが安全だ。筋肉のない囚人は登れないからだ。
「登れるか?」
清音に確認してみる。このやりとりもカンダタはもどかしかった。そうしている間にも囚人たちは迫ってきている。この焦燥が時となって声色に表れていた。
清音ははカンダタと管を交互に見る。狼狽していた。急に壊落した管と声が這ったカンダタに思考が止まっていた。
「早くしろ。登らないと死ぬぞ」
命令と脅しを短い文で伝え、清音を促す。彼女はおののきながらも瑠璃を真似して管を登る。
カンダタは清音の腰を押し上げた。手助けもあり、清音はなんとかツルツル滑るパイプを登りきった。すぐさまカンダタも続く。
管の下で蛆になって群がる囚人を眺める。やはり、囚人は登れず、パイプの下でもどかしく溜まっていく。
次に目線を向けたのは瑠璃だった。カンダタと同じように薄藤色の光で照らされ区域を眺めていた。背筋を伸ばし、佇む姿から弱りきった様子はない。、芯のある小生意気な娘がそこにいた。
落ちた時に頭でも打って調子が戻ったのだろうか。
頭痛の原因は何だったのだろうか。清音の想像通り夢見草が原因なのだろうか。
どれも可能性の話ばかりで確信と言えるものがない。もしもの話だけを考えればそれこそ猜疑心でおかしくなりそうだ。
「カンダタ」
下で呻く囚人たちを見下ろしながら瑠璃は徐ろに聞いてくる。
「あたしは瑠璃よね?」
変わった質問だ。彼女の真意が汲み取れない。
瑠璃は口を閉ざす。静寂をまとったような感情を映す瞳。それに人間味と言うものがない。
「瑠璃じゃなかったら誰なんだ?」
少なくともカンダタの目の前にいるのは瑠璃以外の何者でもない。
瑠璃は目蓋を閉じると深呼吸する。そして「私は瑠璃」と噛み締めるように呟いた。
「目が覚めたか?」
「これだけ騒がしいとゆっくり眠れないわ」
いつもの嫌味だ。
湿った地面に寝転がったまま、瑠璃と清音を視認する。清音もカンダタのように線を彷徨わせる。次に瑠璃を探そうとするが、暗闇が彼女を隠す。
混乱した頭を抱えながら立ち上がる。滑降は短く、落ちたのが柔らかい地面だったので怪我はなかった。
瑠璃を探そうと見渡す。瑠璃の姿は壊落した管の傍で転がっていた。腕を取り起き上がらせる。
瑠璃の傍まで駆けるよりも先にカンダタは疑問が浮かんだ。
暗闇で狭くなった視界が広くなっている。明るくなっているのだ。それを認識した途端、周囲の暗闇が徐々に取り払われ、視界が広がっていく。
薄藤色の淡い光に照らされた区域は鬼の餌場より狭く、天井も低く造られていた。
この区域には餌を欲しがる鬼はいない。しかし、夢見草が群生し、カンダタたちを囲んでいる。湿った柔らかい地面は苔で全面覆われている。
夢見草の根が苔を這ってカンダタたちを捕らえる。その前にここから脱出しなければならない。
しかし、大量の蛆が這ってくるように隠れていた囚人が盛り上がった苔から現れた。
管の影に潜む1体の囚人が瑠璃の腕を掴む。彼女は倒れたまま動かない。また気絶している。
カンダタは清音の腕を離し、瑠璃の下へと全力で走るとその勢いを保ったまま囚人の腹下を蹴り上げる。軽い囚人は一発の蹴りでも飛ばされる。
瑠璃を起こす。使命感に似たものが働き働いていた。
その前に閉じられていた目蓋がぱっと上がり、覚醒した瑠璃は起き上がる。
不調で悩まされていたはずの瑠璃は壊落した管を俊敏な動きで登る。先ほどまで足取りが覚束なかった彼女とは思えない。
「瑠璃! 1人でどこ行くの?」
カンダタのところまで駆け寄った清音が叫ぶようにと問いかけるも瑠璃は答えずに登り続ける。
カンダタには瑠璃の考えが理解できた。確かに地面にいるよりはパイプに上にいたほうが安全だ。筋肉のない囚人は登れないからだ。
「登れるか?」
清音に確認してみる。このやりとりもカンダタはもどかしかった。そうしている間にも囚人たちは迫ってきている。この焦燥が時となって声色に表れていた。
清音ははカンダタと管を交互に見る。狼狽していた。急に壊落した管と声が這ったカンダタに思考が止まっていた。
「早くしろ。登らないと死ぬぞ」
命令と脅しを短い文で伝え、清音を促す。彼女はおののきながらも瑠璃を真似して管を登る。
カンダタは清音の腰を押し上げた。手助けもあり、清音はなんとかツルツル滑るパイプを登りきった。すぐさまカンダタも続く。
管の下で蛆になって群がる囚人を眺める。やはり、囚人は登れず、パイプの下でもどかしく溜まっていく。
次に目線を向けたのは瑠璃だった。カンダタと同じように薄藤色の光で照らされ区域を眺めていた。背筋を伸ばし、佇む姿から弱りきった様子はない。、芯のある小生意気な娘がそこにいた。
落ちた時に頭でも打って調子が戻ったのだろうか。
頭痛の原因は何だったのだろうか。清音の想像通り夢見草が原因なのだろうか。
どれも可能性の話ばかりで確信と言えるものがない。もしもの話だけを考えればそれこそ猜疑心でおかしくなりそうだ。
「カンダタ」
下で呻く囚人たちを見下ろしながら瑠璃は徐ろに聞いてくる。
「あたしは瑠璃よね?」
変わった質問だ。彼女の真意が汲み取れない。
瑠璃は口を閉ざす。静寂をまとったような感情を映す瞳。それに人間味と言うものがない。
「瑠璃じゃなかったら誰なんだ?」
少なくともカンダタの目の前にいるのは瑠璃以外の何者でもない。
瑠璃は目蓋を閉じると深呼吸する。そして「私は瑠璃」と噛み締めるように呟いた。
「目が覚めたか?」
「これだけ騒がしいとゆっくり眠れないわ」
いつもの嫌味だ。
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