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5章 恋焦がれ巡る地獄旅行
絡まる思慕 10
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「この先、どうします?」
清音が2人の間に入る。
「道がなくなったわけじゃなさそうだな」
暗闇だったのでわかりにくかったが、管はいくつも張り巡らされており、中には十字に交差してあるものもあった。
瑠璃が隣に立つ清音を睨んだ後、カンダタに向き直る。
「光弥たちに連絡をとって一度確認しましょう」
「そうだな」
道が失ってないとしても落ちた地から上げがらなければならない。
瑠璃は救援を求める為、薄い板の連絡機器を取り出す。
薄い板はいつ見ても不可思議なものだ。指先で表面を滑らせるだけで別の所にいる相手にも情報共有が可能になる。
板からつながる架空世界は自分が求める情報を得られ、また発信もできるがその中には虚偽もある。それらのやりとりを間近で見ていてもその仕組みがわからない。
いつの日だったか、不思議でたまらず瑠璃が操作する画面を覗いた時があり、その時はプライバシー侵害だと非難された。
非難されるいわれはないと反論したが、「プライバシー」と聞き慣れない単語に戸惑い、口を噤むのだった。
今の瑠璃もあの時と同じように親指を使って機器を操作していた。たが、途中で指は停止し、訝しげに黒い液晶画面を睨む。
画面が角度によって黒くなる仕様になっており、カンダタからでは画面の中が見えない。「プライバシー」とやらを守る為だろう。
険しくなった瑠璃は気になるもののカンダタは沈黙し、見守っていた。
瑠璃と画面との睨み合いは唐突に呼び鈴で終わりを告げた。通話機器からのけたたましい呼び鈴にカンダタは驚き、瑠璃もまたを呆けていたが、表情はすぐに戻った。
躊躇したのは一瞬だけであり、瑠璃は板を耳に当てる。
「えぇ、そうよ。そっちは光弥よね。そっちに入ってるアプリは、いえ、なんでもないわ」
通話が始まっており、その相手は光弥のようだ。
「あたしたちは夢見草が群生している区域にいるわ。そう、暗いとこの」
会話はそれだけで終わった。板を強く握り、険しくなる。
「光弥たちが来るって連絡があったわ」
「向こうは全部回ったのか?」
「みたいね」
カンダタたちは肥溜めで別れた。そこから光弥たちは肥溜め、ビニールハウスを回ってきた。早い気もする。
待つというのは焦燥を最大限に引き上げるこれ以上のない素材だ。
やるべきことが明確になっているのにカンダタはそれを前に棒切れと同じように立つことしかできないのだ。もどかしすぎて自身が惨めに思えてくる。
焦燥は少しずつ、少しずつ、本人でさえも自覚がないほどゆっくりと理性を削っていく。
いっそのこと、カンダタだけでも行ってしまいたい。そうした自分勝手な考えが浮かんでは消える。ぐるぐると回る思考を3回繰り返す。
「大丈夫?」
その台詞を切り出したのは清音。手持ち無沙汰なのは彼女も同じだった。なので、暇潰しとして瑠璃を心配する言葉をかけた。
瑠璃を悩ませていた頭痛は綺麗になくなり、支えも必要なく立てる。
それでも清音は心配し、肩に手をかけようと伸ばす。瑠璃がその手を強く叩いた。
皮膚の乾いた衝突音が響くと途端に静寂へと一変した。
叩かれると思ってもいなかった清音は見開き、カンダタも強く叩いた瑠璃の内心が読めずに呆然とする。
清音の手を赤くなり、叩かれた強さを表す。
「今のは痛いなぁ。心配してあげたのに」
赤くなった手を擦る。声色は優しく諭すものであったが、目は謝罪を求める静かな怒りがあった。
「心配してくれてありがとう」
瑠璃はありがとうの部分だけ口調を強めた皮肉のある言い方だ。また瑠璃と清音は睨み合う。
女同士の言い争いを口出ししてはならないと経験で学んでいたのでカンダタは沈黙するしかない。
清音は随分と強気になった。瑠璃もまた棘のある言い方は変わっていないが、その割には一言で済ませている。何かしら躊躇っているようだ。それでいて言動は攻撃的だ。
瑠璃は清音は級友ではなく敵として見ている。
憶測としてそこまで考えられるが、そこから思考が広がらない。カンダタには清音と敵対する理由がないのだ。彼女の態度が少しだけ違うだけだ。
瑠璃の険しくなる青い瞳に淡い光が止まる。夢見草の花が発する光だ。瑠璃の敵対心は夢見草の根がそうさせているのかもしれない。
瑠璃と清音の睨み合いはしばらく続いた。睨み合いに負けたのは生米であり、彼女は自らの緊張を解くと眉を下げる。
「ごめんね。私もイライラしちゃって、変につっかかっちゃったの」
そう言って申し訳なく笑う。
これはあとで話し合ったほうがよさそうだ。
清音が2人の間に入る。
「道がなくなったわけじゃなさそうだな」
暗闇だったのでわかりにくかったが、管はいくつも張り巡らされており、中には十字に交差してあるものもあった。
瑠璃が隣に立つ清音を睨んだ後、カンダタに向き直る。
「光弥たちに連絡をとって一度確認しましょう」
「そうだな」
道が失ってないとしても落ちた地から上げがらなければならない。
瑠璃は救援を求める為、薄い板の連絡機器を取り出す。
薄い板はいつ見ても不可思議なものだ。指先で表面を滑らせるだけで別の所にいる相手にも情報共有が可能になる。
板からつながる架空世界は自分が求める情報を得られ、また発信もできるがその中には虚偽もある。それらのやりとりを間近で見ていてもその仕組みがわからない。
いつの日だったか、不思議でたまらず瑠璃が操作する画面を覗いた時があり、その時はプライバシー侵害だと非難された。
非難されるいわれはないと反論したが、「プライバシー」と聞き慣れない単語に戸惑い、口を噤むのだった。
今の瑠璃もあの時と同じように親指を使って機器を操作していた。たが、途中で指は停止し、訝しげに黒い液晶画面を睨む。
画面が角度によって黒くなる仕様になっており、カンダタからでは画面の中が見えない。「プライバシー」とやらを守る為だろう。
険しくなった瑠璃は気になるもののカンダタは沈黙し、見守っていた。
瑠璃と画面との睨み合いは唐突に呼び鈴で終わりを告げた。通話機器からのけたたましい呼び鈴にカンダタは驚き、瑠璃もまたを呆けていたが、表情はすぐに戻った。
躊躇したのは一瞬だけであり、瑠璃は板を耳に当てる。
「えぇ、そうよ。そっちは光弥よね。そっちに入ってるアプリは、いえ、なんでもないわ」
通話が始まっており、その相手は光弥のようだ。
「あたしたちは夢見草が群生している区域にいるわ。そう、暗いとこの」
会話はそれだけで終わった。板を強く握り、険しくなる。
「光弥たちが来るって連絡があったわ」
「向こうは全部回ったのか?」
「みたいね」
カンダタたちは肥溜めで別れた。そこから光弥たちは肥溜め、ビニールハウスを回ってきた。早い気もする。
待つというのは焦燥を最大限に引き上げるこれ以上のない素材だ。
やるべきことが明確になっているのにカンダタはそれを前に棒切れと同じように立つことしかできないのだ。もどかしすぎて自身が惨めに思えてくる。
焦燥は少しずつ、少しずつ、本人でさえも自覚がないほどゆっくりと理性を削っていく。
いっそのこと、カンダタだけでも行ってしまいたい。そうした自分勝手な考えが浮かんでは消える。ぐるぐると回る思考を3回繰り返す。
「大丈夫?」
その台詞を切り出したのは清音。手持ち無沙汰なのは彼女も同じだった。なので、暇潰しとして瑠璃を心配する言葉をかけた。
瑠璃を悩ませていた頭痛は綺麗になくなり、支えも必要なく立てる。
それでも清音は心配し、肩に手をかけようと伸ばす。瑠璃がその手を強く叩いた。
皮膚の乾いた衝突音が響くと途端に静寂へと一変した。
叩かれると思ってもいなかった清音は見開き、カンダタも強く叩いた瑠璃の内心が読めずに呆然とする。
清音の手を赤くなり、叩かれた強さを表す。
「今のは痛いなぁ。心配してあげたのに」
赤くなった手を擦る。声色は優しく諭すものであったが、目は謝罪を求める静かな怒りがあった。
「心配してくれてありがとう」
瑠璃はありがとうの部分だけ口調を強めた皮肉のある言い方だ。また瑠璃と清音は睨み合う。
女同士の言い争いを口出ししてはならないと経験で学んでいたのでカンダタは沈黙するしかない。
清音は随分と強気になった。瑠璃もまた棘のある言い方は変わっていないが、その割には一言で済ませている。何かしら躊躇っているようだ。それでいて言動は攻撃的だ。
瑠璃は清音は級友ではなく敵として見ている。
憶測としてそこまで考えられるが、そこから思考が広がらない。カンダタには清音と敵対する理由がないのだ。彼女の態度が少しだけ違うだけだ。
瑠璃の険しくなる青い瞳に淡い光が止まる。夢見草の花が発する光だ。瑠璃の敵対心は夢見草の根がそうさせているのかもしれない。
瑠璃と清音の睨み合いはしばらく続いた。睨み合いに負けたのは生米であり、彼女は自らの緊張を解くと眉を下げる。
「ごめんね。私もイライラしちゃって、変につっかかっちゃったの」
そう言って申し訳なく笑う。
これはあとで話し合ったほうがよさそうだ。
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