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5章 恋焦がれ巡る地獄旅行
永久凍土都市 7
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顔が青あざだらけになった若い女性が血みどろな箱から脱出する。腕には狼の被り物を抱えている。命からがら脱出したとしてもそれを逃さないと魔の手が彼女を捕らえる。
彼女を捕らえたのは鼻に大きな黒子をつけた四十路の女性であり、黒子の女は若い女から狼の被り物を奪い取ると廊下の奥の闇へと消え去った。
様々な被り物を奪い合い、取得した者からオフィスルームを脱出しているようだ。
「近寄りたくないですね」
清音が溢し、その横で瑠璃が考え込む。すると何か思いついたのか、瑠璃は黒子の女を追いかけ始めた。
急に走り出した瑠璃に驚き、慌てて背中を追う。
瑠璃の行動に驚きはあったものの、今回の奇行は理解できた。
光弥の助言は「被り物を奪え」だ。そして、囚人たちは満身創痍になって限りのあるそれを得ようとしている。それほど重要なものなのだろう。
光弥の助言に従うとしてもあの混乱で奪いに行くのは得策ではない。ならば、そこから脱出した者から狙うべきだ。
そうした考えを持つのは瑠璃やカンダタだけではないはずだ。この層に何十、何百年と過ごした囚人たちも同じはずだ。
カンダタは瑠璃を追い越し、黒子女を追いかけ、階段を下る。その先をどこまでも突き止める勢いであったが、それは唐突に終わる。
段差を飛ばし、踊り場に着地ししてから次の階段へと踏み込もうとした。
途端、その体勢は急に踏み留まり、後ろにいた瑠璃は急停止したせいでカンダタの背中に体当たりしてしまう。その重みで階段から転落しそうになるも堪えた。
何事かと瑠璃はカンダタを睨んだ後、文句を言おうとした。だが、その先にあるものに口を閉ざす。
下の踊り場で黒子の女が横倒れになっていた。頭の天辺から額にかけて大きく損傷している。捲れた皮膚から砕けた頭蓋骨がみえる。まだ息はあるようで手足がピクピクと痙攣していた。
被り物がない。別の囚人に襲われ、奪われたのだろう。
カンダタたち息を止めてしまったのは次の瞬間であった。オフィスの入り口から人間とは規格外の大きさの腕が伸びてきた。陶器の質感に近いそれは黒子女を鷲掴みにし、流血の跡を残しながら引きずって行く。
瑠璃は壁側に添い、先に踊り場まで下る。カンダタたちも同じように壁に背をつけ、忍足で段差を下っていく。
先に着いていた瑠璃は懐から鏡の破片を取り出す。第五層に着いた時に拾ったものだろう。ちゃっかりと入手していた瑠璃に関心する。
鏡の破片を入り口に寄せ、中のオフィスを映す。
「カンダタ、これ」
映ったものを見ようと瑠璃の背後で視線の角度を変える。
「何があるんですか?」
「黙って」
清音からでは鏡の破片に映すものが見えない。なので聞いてきたのだが、瑠璃に一蹴される。
鏡の破片には地獄の住人が垣間見えた。
上のフロアと同じくガラス張りで区切られあった。違うのは立ち仕事のようで、丸く大きめなテーブルに置かれたPCを囚人たちはキーボードを打つ。
そこまではカンダタたちが見てきたものと変わりない。カンダタと瑠璃が注視したのは部屋の中心にあるものだ。
恐らくあれはこの層の管理者だろう。上半身は異国の衣装で着飾った女性であり、高身長な彼女の頭は天井につきそうだ。冷徹に囚人たちを見張る顔は陶器の印象を持たせる。
腰から下は鐘に似た形をしており、真ん中が細長い三角の溝があった。その空洞にあるのは数千もの太い針があり、その針で穴だらけになった黒子女の顔が溝から垂れていた。
「下半身がアイアンメイデンになってるわね」
「あい?」
聞き慣れない長い単語にカンダタはうまく発音できなかった。
「鉄の処女」
瑠璃は言い方を変えた。
「それは?」
「西洋で昔使われたっていう刑具よ」
「それであそこにいる彼女は、何をしてるんですか?」
清音の質問に答えられるものはいない。
「カンダタが行って確かめれば?」
「俺かよ」
カンダタは息を吐く。あの鉄の処女に似た管理人がどういった動きするのか、何に反応するのか、死んで確かめてこいと瑠璃は言っている。
何回と死んでもその経験はしたくない。
彼女を捕らえたのは鼻に大きな黒子をつけた四十路の女性であり、黒子の女は若い女から狼の被り物を奪い取ると廊下の奥の闇へと消え去った。
様々な被り物を奪い合い、取得した者からオフィスルームを脱出しているようだ。
「近寄りたくないですね」
清音が溢し、その横で瑠璃が考え込む。すると何か思いついたのか、瑠璃は黒子の女を追いかけ始めた。
急に走り出した瑠璃に驚き、慌てて背中を追う。
瑠璃の行動に驚きはあったものの、今回の奇行は理解できた。
光弥の助言は「被り物を奪え」だ。そして、囚人たちは満身創痍になって限りのあるそれを得ようとしている。それほど重要なものなのだろう。
光弥の助言に従うとしてもあの混乱で奪いに行くのは得策ではない。ならば、そこから脱出した者から狙うべきだ。
そうした考えを持つのは瑠璃やカンダタだけではないはずだ。この層に何十、何百年と過ごした囚人たちも同じはずだ。
カンダタは瑠璃を追い越し、黒子女を追いかけ、階段を下る。その先をどこまでも突き止める勢いであったが、それは唐突に終わる。
段差を飛ばし、踊り場に着地ししてから次の階段へと踏み込もうとした。
途端、その体勢は急に踏み留まり、後ろにいた瑠璃は急停止したせいでカンダタの背中に体当たりしてしまう。その重みで階段から転落しそうになるも堪えた。
何事かと瑠璃はカンダタを睨んだ後、文句を言おうとした。だが、その先にあるものに口を閉ざす。
下の踊り場で黒子の女が横倒れになっていた。頭の天辺から額にかけて大きく損傷している。捲れた皮膚から砕けた頭蓋骨がみえる。まだ息はあるようで手足がピクピクと痙攣していた。
被り物がない。別の囚人に襲われ、奪われたのだろう。
カンダタたち息を止めてしまったのは次の瞬間であった。オフィスの入り口から人間とは規格外の大きさの腕が伸びてきた。陶器の質感に近いそれは黒子女を鷲掴みにし、流血の跡を残しながら引きずって行く。
瑠璃は壁側に添い、先に踊り場まで下る。カンダタたちも同じように壁に背をつけ、忍足で段差を下っていく。
先に着いていた瑠璃は懐から鏡の破片を取り出す。第五層に着いた時に拾ったものだろう。ちゃっかりと入手していた瑠璃に関心する。
鏡の破片を入り口に寄せ、中のオフィスを映す。
「カンダタ、これ」
映ったものを見ようと瑠璃の背後で視線の角度を変える。
「何があるんですか?」
「黙って」
清音からでは鏡の破片に映すものが見えない。なので聞いてきたのだが、瑠璃に一蹴される。
鏡の破片には地獄の住人が垣間見えた。
上のフロアと同じくガラス張りで区切られあった。違うのは立ち仕事のようで、丸く大きめなテーブルに置かれたPCを囚人たちはキーボードを打つ。
そこまではカンダタたちが見てきたものと変わりない。カンダタと瑠璃が注視したのは部屋の中心にあるものだ。
恐らくあれはこの層の管理者だろう。上半身は異国の衣装で着飾った女性であり、高身長な彼女の頭は天井につきそうだ。冷徹に囚人たちを見張る顔は陶器の印象を持たせる。
腰から下は鐘に似た形をしており、真ん中が細長い三角の溝があった。その空洞にあるのは数千もの太い針があり、その針で穴だらけになった黒子女の顔が溝から垂れていた。
「下半身がアイアンメイデンになってるわね」
「あい?」
聞き慣れない長い単語にカンダタはうまく発音できなかった。
「鉄の処女」
瑠璃は言い方を変えた。
「それは?」
「西洋で昔使われたっていう刑具よ」
「それであそこにいる彼女は、何をしてるんですか?」
清音の質問に答えられるものはいない。
「カンダタが行って確かめれば?」
「俺かよ」
カンダタは息を吐く。あの鉄の処女に似た管理人がどういった動きするのか、何に反応するのか、死んで確かめてこいと瑠璃は言っている。
何回と死んでもその経験はしたくない。
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