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5章 恋焦がれ巡る地獄旅行
永久凍土都市 9
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5、6歩ほどしかない距離だというのに踊り場からオフィスに移れば温度が一気に下がり、冷気がその身を包んだ。
一気に変わった気温にカンダタは身震いし、鼻から吸い込んだ空気が肺を刺す。
鉄夫人の凄然とした眼差しとひたすら同じ作業を繰り返す無機質なタイピングの音のせいで更に凍えそうだ。
視界が狭く、多くなった視界に不安が煽られる。限られた視界でなるべく周囲を観察する。
開放的なオフィスに円形の机、椅子はなく、立ち作業で行う業務。
オフィスの中央に鎮座する鉄夫人は新しく入ってきた囚人としてカンダタを認識しているようだ。
首だけを動かし、こちらをじっと見つめる。表情の機微すらない。
他の囚人たちと同じ行動を取った方が良いのだろうか。戸惑いながらも空いている席に行く。
移動中、鏡はないかと探したが、それらしいものはなかった。
PCの前に立つ。電子が存在しない時代で生きてきたカンダタにとってこれは神器や妖術に近い不可思議なとものとしか見えない。もちろん、使い方は知らない。
電子の画面は黒く、緑の文字が点滅している。ここから何をすればいいのか、迷う。
鉄夫人に目線だけ向けると目が合った。PCの前にいるだけでは許してくれそうにない。
カンダタは見渡し、他の者を観察する。皆、ひたすらにキーボードを打っているだけだ。
見よう見真似でキーボードの上に手を乗せる。柔らかい人肌の熱が無機質で冷たい突起物に触れるとカンダタの指先から甲までが凍結した。
実際に凍ったわけではない。カンダタの感覚がそう捉えただけだ。指先は冷たく固まっているが、突起物は押せる。ただ手が離せなくなった。
奇妙な現象にカンダタは罠に嵌ったと自覚し、後悔が押し寄せる。これでは逃げれそうにない。
再び鉄夫人を見遣れば、カンダタに興味をなくしており、周囲を監視している。
カンダタは凍ってる手で、たどたどしい仕草で、整列する突起物の一つを押す。
これだけで鉄夫人の脅威から逃れられるようだが、身動きができ無くなってしまった。
キーボードを打つことしか出来なくなり、カンダタは憂鬱な溜息を吐いた。
「進展ないね」
あそこから動かなくなったカンダタ。鉄夫人は彼に関心をなくし、オフィスの中心を陣取ったまま、監視を続ける。
そうして動きのない展開に清音は欠伸をしてから呟いた。
「眠いなら寝れば」
鏡の破片でオフィスの様子を注視しながら、素気なく答える。
「冷たいこと言わないで会話しようよ」
緊張感のない清音に苛立ちが重なっていく。
さっきから清音の言動はあたしの感情を逆撫でしてくる。
わざと怒らせようとしている。
それをやって清音に得がある?
もし、あたしが激昂して清音に掴みかかったとしたら?
鏡の破片の角度を変えて清音の背後にいる人を映す。
彼女にピッタリとくっついている赤目の少年。あれからまた成長して13歳ぐらいになってる。
次にケイを見つめる。
あたしが清音に危害を加えようとしたら、ケイが怒り、あたしに危害を加えるはず。
投げられた白い刀の痛みを思い出す。あの時は擦り傷で済んだけれど、次はあれだけでは済まない。
「映画の話でもする?」
清音はあたしの苛立ちを更に重ねようとお喋りを続ける。
知らない映画を語っている。主演が有名アイドルグループのメンバーだとか、胸キュンが止まらないとか、そんなくだらない話ばかりする。
映画の話と切り出したのに内容は好きなアイドルの事ばかり。そんな関心にも興味もない話を聞かされる苦痛。耐え難い。
映画、ね。
清音の話を聞き流しながら映画のワードにあたしは考えを巡らせていた。
一気に変わった気温にカンダタは身震いし、鼻から吸い込んだ空気が肺を刺す。
鉄夫人の凄然とした眼差しとひたすら同じ作業を繰り返す無機質なタイピングの音のせいで更に凍えそうだ。
視界が狭く、多くなった視界に不安が煽られる。限られた視界でなるべく周囲を観察する。
開放的なオフィスに円形の机、椅子はなく、立ち作業で行う業務。
オフィスの中央に鎮座する鉄夫人は新しく入ってきた囚人としてカンダタを認識しているようだ。
首だけを動かし、こちらをじっと見つめる。表情の機微すらない。
他の囚人たちと同じ行動を取った方が良いのだろうか。戸惑いながらも空いている席に行く。
移動中、鏡はないかと探したが、それらしいものはなかった。
PCの前に立つ。電子が存在しない時代で生きてきたカンダタにとってこれは神器や妖術に近い不可思議なとものとしか見えない。もちろん、使い方は知らない。
電子の画面は黒く、緑の文字が点滅している。ここから何をすればいいのか、迷う。
鉄夫人に目線だけ向けると目が合った。PCの前にいるだけでは許してくれそうにない。
カンダタは見渡し、他の者を観察する。皆、ひたすらにキーボードを打っているだけだ。
見よう見真似でキーボードの上に手を乗せる。柔らかい人肌の熱が無機質で冷たい突起物に触れるとカンダタの指先から甲までが凍結した。
実際に凍ったわけではない。カンダタの感覚がそう捉えただけだ。指先は冷たく固まっているが、突起物は押せる。ただ手が離せなくなった。
奇妙な現象にカンダタは罠に嵌ったと自覚し、後悔が押し寄せる。これでは逃げれそうにない。
再び鉄夫人を見遣れば、カンダタに興味をなくしており、周囲を監視している。
カンダタは凍ってる手で、たどたどしい仕草で、整列する突起物の一つを押す。
これだけで鉄夫人の脅威から逃れられるようだが、身動きができ無くなってしまった。
キーボードを打つことしか出来なくなり、カンダタは憂鬱な溜息を吐いた。
「進展ないね」
あそこから動かなくなったカンダタ。鉄夫人は彼に関心をなくし、オフィスの中心を陣取ったまま、監視を続ける。
そうして動きのない展開に清音は欠伸をしてから呟いた。
「眠いなら寝れば」
鏡の破片でオフィスの様子を注視しながら、素気なく答える。
「冷たいこと言わないで会話しようよ」
緊張感のない清音に苛立ちが重なっていく。
さっきから清音の言動はあたしの感情を逆撫でしてくる。
わざと怒らせようとしている。
それをやって清音に得がある?
もし、あたしが激昂して清音に掴みかかったとしたら?
鏡の破片の角度を変えて清音の背後にいる人を映す。
彼女にピッタリとくっついている赤目の少年。あれからまた成長して13歳ぐらいになってる。
次にケイを見つめる。
あたしが清音に危害を加えようとしたら、ケイが怒り、あたしに危害を加えるはず。
投げられた白い刀の痛みを思い出す。あの時は擦り傷で済んだけれど、次はあれだけでは済まない。
「映画の話でもする?」
清音はあたしの苛立ちを更に重ねようとお喋りを続ける。
知らない映画を語っている。主演が有名アイドルグループのメンバーだとか、胸キュンが止まらないとか、そんなくだらない話ばかりする。
映画の話と切り出したのに内容は好きなアイドルの事ばかり。そんな関心にも興味もない話を聞かされる苦痛。耐え難い。
映画、ね。
清音の話を聞き流しながら映画のワードにあたしは考えを巡らせていた。
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