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5章 恋焦がれ巡る地獄旅行
永久凍土都市 14
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囚人たちが押し寄せ、そこを餌場に鬼が群がり、後方から鉄夫人が迫る。一瞬で命が失うような綱渡りの道をまともに考ずに突き進む。
傾く床の角度が上がり、細い罅が太い線となる。
その亀裂はカンダタと瑠璃の間に入る。カンダタは飛び跳ね、亀裂を超えると上り坂になった廊下を走る。
カンダタが飛び越えた亀裂は更に大きくなり、細い小枝が寒さに耐えられなくなったように、コンクリートで作られた廊下はぽっくりと折れた。
囚人や鬼が滑り落ち、悲鳴とともに遠ざかっていく。
姿見とカンダタたちの距離はそこまで離れていなかったが、上り坂の角度は急速に上がっていった。
カンダタたちの中で先に脱落しそうなのは清音だ。ケイは清音を片腕で抱き上げると強靭な足腰で勾配の坂を上る。
姿見まであと3、4歩といったところでケイは清音を投げる。清音は姿見の縁に手を伸ばし、掴む。そこからよじ登り、姿見の中に入っていく。その後にケイが続く。
瑠璃が息を切らしながら姿見を目指すもののあと1歩といったところで高くなる廊下に足を滑らせた。
たった1度の過ちで瑠璃は滑走を始め、カンダタは落ちてくる瑠璃を捕まえようと手を伸ばす。相手もまた同じように手を伸ばした。
うまく息が合い、2人の手は互いの手を捕まえた。
勾配はまだ上がり続けているが、まだ耐えられる。廊下の角度は65度まで上がり、それが70度になる前に瑠璃の腰を押し上げ、立ち直らせる。そうして瑠璃とカンダタは姿見に届く。
縁を掴み、そのまま姿見の中に入ろうとした時、がくりとカンダタの片脚に重りがかかった。不意打ちであったが、縁は離さなかった。
何事かと見下ろせれば兎の着ぐるみを被る囚人がカンダタの足首を掴んでいた。
兎の囚人はカンダタの片脚から姿見までなんとか登ろうと必死になっていた。彼にとって囚人は梯子か登り綱しか見えていない。
落ちたくないと必死に縋がある握力は強さを増しており、肉を抉られそうなる。どんなに強く望んだとしてもカンダタは仏ではない。
カンダタの左手は瑠璃を繋ぎ、右手は縁を掴んでいる。3人分の重りを右腕だけで支えているのだ。
耐えきれそうにない右腕は筋肉を震わせる。いつ離してもおかしくない。
瑠璃はコンクリートに手足を滑らせがら姿見の縁に手を伸ばすがなかなか届かない。
崩壊が始まったビルの中、廊下も次第に崩壊の準備をしている。カンダタたちの真下には鉄夫人が待ち構えており、落ちてくる獲物を待つ。
兎の囚人の握力が強くなり、奴の手はカンダタの腰紐にかけられた。
こうなっては重りを少なくするしかなく、カンダタは自身に縋る囚人に対して膝で突く。不安定な体勢の上に、安定もほぼできない。
カンダタからの妨害は充分だった。怯んだ囚人は縋る握力を緩め、その隙を狙ったカンダタは2発、3髪と続けて突いた。
兎の囚人は片手が離れ、身体は鉄夫人に一歩先に近づく。
別の考えを持っていた瑠璃は一旦、姿見から意識をそらし、囚人が被る着ぐるみを狙う。長い片耳を掴み、囚人から剥がそうと試みる。
無理に脱がそうとしているので瑠璃の乱暴な手つきは囚人の頭を上下左右に揺らし、平行感覚を失う。
囚人は次第に下がっていき、肉を抉るような握力は弱まる。膝あたりまで下がってきた囚人をカンダタは片足を上げ、踏み潰す強さで彼の肩を蹴る。
最後の一発は今までよりも強く、ついに囚人の手はカンダタから離れ、兎の着ぐるみがするりと抜けた。
露わになった囚人の顔はカンダタを忌み嫌い、そして救済を求めていた。
被り物を失って初めて囚人を人として認識してしう。
人を蹴落とした後は後味の悪いものとして残る。
「早く上げて」
兎の着ぐるみを片手に持ったまま、瑠璃はカンダタに指示をする。
瑠璃の文句は後でするとして、カンダタは瑠璃を引き上げる。姿見に入った瑠璃を見届け、身軽になったカンダタも続けて入る。
傾く床の角度が上がり、細い罅が太い線となる。
その亀裂はカンダタと瑠璃の間に入る。カンダタは飛び跳ね、亀裂を超えると上り坂になった廊下を走る。
カンダタが飛び越えた亀裂は更に大きくなり、細い小枝が寒さに耐えられなくなったように、コンクリートで作られた廊下はぽっくりと折れた。
囚人や鬼が滑り落ち、悲鳴とともに遠ざかっていく。
姿見とカンダタたちの距離はそこまで離れていなかったが、上り坂の角度は急速に上がっていった。
カンダタたちの中で先に脱落しそうなのは清音だ。ケイは清音を片腕で抱き上げると強靭な足腰で勾配の坂を上る。
姿見まであと3、4歩といったところでケイは清音を投げる。清音は姿見の縁に手を伸ばし、掴む。そこからよじ登り、姿見の中に入っていく。その後にケイが続く。
瑠璃が息を切らしながら姿見を目指すもののあと1歩といったところで高くなる廊下に足を滑らせた。
たった1度の過ちで瑠璃は滑走を始め、カンダタは落ちてくる瑠璃を捕まえようと手を伸ばす。相手もまた同じように手を伸ばした。
うまく息が合い、2人の手は互いの手を捕まえた。
勾配はまだ上がり続けているが、まだ耐えられる。廊下の角度は65度まで上がり、それが70度になる前に瑠璃の腰を押し上げ、立ち直らせる。そうして瑠璃とカンダタは姿見に届く。
縁を掴み、そのまま姿見の中に入ろうとした時、がくりとカンダタの片脚に重りがかかった。不意打ちであったが、縁は離さなかった。
何事かと見下ろせれば兎の着ぐるみを被る囚人がカンダタの足首を掴んでいた。
兎の囚人はカンダタの片脚から姿見までなんとか登ろうと必死になっていた。彼にとって囚人は梯子か登り綱しか見えていない。
落ちたくないと必死に縋がある握力は強さを増しており、肉を抉られそうなる。どんなに強く望んだとしてもカンダタは仏ではない。
カンダタの左手は瑠璃を繋ぎ、右手は縁を掴んでいる。3人分の重りを右腕だけで支えているのだ。
耐えきれそうにない右腕は筋肉を震わせる。いつ離してもおかしくない。
瑠璃はコンクリートに手足を滑らせがら姿見の縁に手を伸ばすがなかなか届かない。
崩壊が始まったビルの中、廊下も次第に崩壊の準備をしている。カンダタたちの真下には鉄夫人が待ち構えており、落ちてくる獲物を待つ。
兎の囚人の握力が強くなり、奴の手はカンダタの腰紐にかけられた。
こうなっては重りを少なくするしかなく、カンダタは自身に縋る囚人に対して膝で突く。不安定な体勢の上に、安定もほぼできない。
カンダタからの妨害は充分だった。怯んだ囚人は縋る握力を緩め、その隙を狙ったカンダタは2発、3髪と続けて突いた。
兎の囚人は片手が離れ、身体は鉄夫人に一歩先に近づく。
別の考えを持っていた瑠璃は一旦、姿見から意識をそらし、囚人が被る着ぐるみを狙う。長い片耳を掴み、囚人から剥がそうと試みる。
無理に脱がそうとしているので瑠璃の乱暴な手つきは囚人の頭を上下左右に揺らし、平行感覚を失う。
囚人は次第に下がっていき、肉を抉るような握力は弱まる。膝あたりまで下がってきた囚人をカンダタは片足を上げ、踏み潰す強さで彼の肩を蹴る。
最後の一発は今までよりも強く、ついに囚人の手はカンダタから離れ、兎の着ぐるみがするりと抜けた。
露わになった囚人の顔はカンダタを忌み嫌い、そして救済を求めていた。
被り物を失って初めて囚人を人として認識してしう。
人を蹴落とした後は後味の悪いものとして残る。
「早く上げて」
兎の着ぐるみを片手に持ったまま、瑠璃はカンダタに指示をする。
瑠璃の文句は後でするとして、カンダタは瑠璃を引き上げる。姿見に入った瑠璃を見届け、身軽になったカンダタも続けて入る。
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