糸と蜘蛛

犬若丸

文字の大きさ
15 / 644
1章 神様が作った実験場

邂逅するまで 2

しおりを挟む
 5時限目の移動教室の際、あたしは必要な教科書類を持ち、廊下を歩く。
 白い鬼も当然のようについてくる。さっきまであたしの後ろについてきたのに今になってあたしの隣へと肩を並べて歩く。目線を合わせるために背を丸めて進む姿勢は歩きづらそうね。
 白い鬼はあたしの視界に入ろうとしていた。そういう動きをしている。あたしは目を合わせないように努めた。余所見をせず、真っ直ぐ前を見る。そこに怪物はいないと演技する。
 白い鬼はあたしに認識されようと跳ねてみたり、あたしの前を横切ったりとあたしの進行の邪魔をする。
 図体が多きため、目立つ行動をすれば目で追いたくなる。そういう強い衝動を抑えた。なかなか認識してくれないあたしに白い鬼は痺れを切らしたようで最終手段へとでる。
 あたしの横に戻った白い鬼は骨張った肩をあたしの肩へと軽くぶつける。
 こいつがそんなことまでするとは考えていなかった。するとしても、あたしには触れられないと考えていた。けれど、白い鬼の肩とあたしの肩は触れあって、おまけに力加減が下手くそだった。
 あたしが弾かれて床に倒れるには十分な力だった。
 障害物もないのに転んだあたしをクラスメイトたちがおかしな目を向けて通り過ぎていく。こんなの、あたしだって不本意よ。
 軽くやったつもりなのに転んでしまったのを白い鬼は詫びるように頭を下げる。
 落ちた教科書を拾い、立ち上る。改めて、白い鬼と向き合うと転ばされた憤りを視線で送る。白い鬼はそれなりの罪悪感があるのか睨んだあたしにすごむ。
 ついさっきまで物に触れられなかったのに、あたしには突進できた。そんな矛盾点よりも転ばされたことへの憤りが勝る。
「1日中、あんたの騒がしい動きは黙って耐えていたけれど許容範囲ってものがあるわ。小学にあがる子供だってもう少し弁えてるわよ。いい?あんたがあたしの幻覚ならあたしの邪魔はしないで。構って欲しいなら外の野良猫にでも話しかけてきなさいよ。まぁ、見えもしないし、喋れもできないだろうから、無理だろうけど」
 まだまだいいたいことはたくさんあったけれどチャイムが鳴った。
 「あーあ、あんたのせいで授業に遅れた」
 嫌味をたっぷりに含めて言い捨てて、あたしは駆け足で教室に向かう。白い鬼は反省しているのか耳を垂らして顔を俯かせる。それでもあたしから離れようとしなかった。
 ついてくるなといいたかったけれど、もう教室に着いてしまったし、大人しくなったから少しだけ妥協した。
 この時、あたしは後悔していた。ぶつかっても無視を強行すればよかったのに目を合わせて声をかけてしまった。これであちらはあたしが認識できると知ってしまったし、あたしは訳のわからないものに関わってしまったのだから。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

処理中です...