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6章 盤上の外で蜘蛛喰い蝶は笑う
改変 1
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深海に揺らめく波に意識だけを放り出されたようだった。
黒猫は水が嫌いだ。なので、水中に沈んだ意識を何とか引き上げようとするも幾度の挑戦は失敗に終わる。
深海の闇では何も見えない。何も聞こえない。何も考えられない。意識はあると認識できる。ここはどこか自分は何をしているのか考えようとするとそれを拒まれ、深海のさらに深いところへ沈まされる。
「あの子たちを助けてあげてね」
深海の静寂に聞こえてきたのは50年ぶりに聞く彼の声だった。もっと聞きたくて4本足で闇の中をもがく。
そうして必死に一生懸命に水中を死に物狂いで苦しみもがき続け、やがて重力が身体をほどよく縛り、足を地面を蹴っていた。彼を求めてあがいていた黒猫はいつの間にか桂ばかりが生殖する林を駆けていた。
走っていくと木々に囲まれ、人の目から隠れるように立つ木造の家がある。
あの日、黒猫はいつものように急ぎで我が家に向かっていた。
今日のお土産を彼に自慢したい。湖畔にいた渡鳥を仕留めたのだ。
鼠やの土竜は簡単だが、鳥はそううまくいかない。彼らはすぐに飛んでしまう。
この渡鳥をあげたくて、自慢したくて、黒猫は林を駆ける。
あの木造の民家で彼は黒猫の帰宅を待っている。毎日、独りで待っている。だから猫は帰ってあげている。毎日のように動物の死骸を持っていくのも彼のためだ。
土産を持っていけば彼は笑顔で迎え、言ってくれる。「おかえり」と。
「ケイ!ねえ!起きてよ!」
清音の甲高い呼びかけにケイは我に返った。
「大丈夫?ぼうっとしたよ?」
眉を下げ、こちらを覗く清音は自身の温もりを分け与えようと指を絡め強く握る。
瞑想から目を覚ましたのにケイはまた意識が沈まされたような気がした。
清音を見つめ返し、頷く。まだ頑張れると意図を込めて強く頷いた。それを受け取った清音は下げた眉を戻し、目を細めた。
それを見ると激しく打つ体中の脈が鎮まり、ゆっくりと、深海や林などの情景がケイの頭から消えていく。
清音はゴミ捨て場で怪我を負っていたケイを助けた。本来ならば、眠っていても治ってしまう傷だったが、彼女は必死に儚い黒猫の命を繋ごうとしてくれた。
50年ぶりの温度。孤独な月日によって空いた穴にその温もりが嵌まった。
ケイが悪い夢を見ても独りで凍え震えても、傍には清音がおり、毎日抱きしめてくれた。
たくさんの餌をもらい、たくさん撫でてもらい、たくさん温めてもらった。
清音からはたくさんのものをもらった。それを返したいと考えるのは自然なことであり、ケイの倫理にも背く。
彼女の為なら幾度でも身体を張れる。
「行こう、ケイ」
清音が手を引く。明かりのない洞窟で清音が先導する。
はぐれないように、何かを起きれば守れるようにケイは逃げる手を強く握り返した。
黒猫は水が嫌いだ。なので、水中に沈んだ意識を何とか引き上げようとするも幾度の挑戦は失敗に終わる。
深海の闇では何も見えない。何も聞こえない。何も考えられない。意識はあると認識できる。ここはどこか自分は何をしているのか考えようとするとそれを拒まれ、深海のさらに深いところへ沈まされる。
「あの子たちを助けてあげてね」
深海の静寂に聞こえてきたのは50年ぶりに聞く彼の声だった。もっと聞きたくて4本足で闇の中をもがく。
そうして必死に一生懸命に水中を死に物狂いで苦しみもがき続け、やがて重力が身体をほどよく縛り、足を地面を蹴っていた。彼を求めてあがいていた黒猫はいつの間にか桂ばかりが生殖する林を駆けていた。
走っていくと木々に囲まれ、人の目から隠れるように立つ木造の家がある。
あの日、黒猫はいつものように急ぎで我が家に向かっていた。
今日のお土産を彼に自慢したい。湖畔にいた渡鳥を仕留めたのだ。
鼠やの土竜は簡単だが、鳥はそううまくいかない。彼らはすぐに飛んでしまう。
この渡鳥をあげたくて、自慢したくて、黒猫は林を駆ける。
あの木造の民家で彼は黒猫の帰宅を待っている。毎日、独りで待っている。だから猫は帰ってあげている。毎日のように動物の死骸を持っていくのも彼のためだ。
土産を持っていけば彼は笑顔で迎え、言ってくれる。「おかえり」と。
「ケイ!ねえ!起きてよ!」
清音の甲高い呼びかけにケイは我に返った。
「大丈夫?ぼうっとしたよ?」
眉を下げ、こちらを覗く清音は自身の温もりを分け与えようと指を絡め強く握る。
瞑想から目を覚ましたのにケイはまた意識が沈まされたような気がした。
清音を見つめ返し、頷く。まだ頑張れると意図を込めて強く頷いた。それを受け取った清音は下げた眉を戻し、目を細めた。
それを見ると激しく打つ体中の脈が鎮まり、ゆっくりと、深海や林などの情景がケイの頭から消えていく。
清音はゴミ捨て場で怪我を負っていたケイを助けた。本来ならば、眠っていても治ってしまう傷だったが、彼女は必死に儚い黒猫の命を繋ごうとしてくれた。
50年ぶりの温度。孤独な月日によって空いた穴にその温もりが嵌まった。
ケイが悪い夢を見ても独りで凍え震えても、傍には清音がおり、毎日抱きしめてくれた。
たくさんの餌をもらい、たくさん撫でてもらい、たくさん温めてもらった。
清音からはたくさんのものをもらった。それを返したいと考えるのは自然なことであり、ケイの倫理にも背く。
彼女の為なら幾度でも身体を張れる。
「行こう、ケイ」
清音が手を引く。明かりのない洞窟で清音が先導する。
はぐれないように、何かを起きれば守れるようにケイは逃げる手を強く握り返した。
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