556 / 644
6章 盤上の外で蜘蛛喰い蝶は笑う
改変 9
しおりを挟む
清音の指示のもと白鬼は必要なものとそうではないものを分けながら瓦礫と亡骸を片付ける。ゴミをゴミ捨て場に持って行く。そんな白鬼の姿を赤眼の少年は地下の中で想像していた。
地下の通路の片隅に小さく体育座りをしていた。目の前にはシャッター。
赤眼の少年は輪廻を見たくてここにいるが、シャッターが遮っている。
ハザマの塊人が殲滅され、争いとも呼べない殺戮の後を白鬼が後片付けをする。その間に蝶男が次に移行する為の準備をする。赤眼の少年に指示はされず、暇をもて遊んでいた。
特にそれが苦痛というわけではなかった。
光弥が言っていた「輪廻の引力」と言うものがわかってきた。
何も見ず、聞かず、考えずにいると少年の身体が浮いて風に乗り、シャッターを超え歯車が噛み合う輪廻に吸い込まれそうになる。
自然の理は絶対だ。鹿は草を、狼はお肉を食わねば生きていけないし、死んだら菌類が分解して地になる。魂は現世から流れ、輪廻の引力に引かれて生を受ける。
それが正しいサイクルなのに赤眼の少年はずっと留まってている。心残りはない。生まれてすらいないのにあるはずもない。なのに、輪廻に行けない。少年は理の外にいる。
「何してるの?」
心地良い引力を感じていたのにそれを邪魔するのは清音だった。
「別、に」
萎縮してしまう。声をかけないでほしいとはっきり言えない。緊張で舌が回らない。
口籠った少年の発言を清音は馬鹿にしなかった。いつもいつも強張って喋れなくなる少年を散々に弄ってきたのでいい加減に飽きていた。
「そういえば君のお父さんを連れてきたのよ」
小馬鹿にした笑みを浮かべて話す内容は心底どうでもよかった。ただ、奴のことを父と言われ、生理的な嫌悪が症状として現れた。
「会いたい?」
首を振って否定する。彼女への返答は大体肯定しておかないと酷い目に遭うのでいつもなら会いたくなくても「会いたい」と答えなければならない。
清音は機嫌が良いのか少年の否定を咎めたりはしなかった。その代わり、わざとらしく残念そうにいつもより高い声を上げる。
「えぇ!どうしてよ!せっかくの親子の再会なのに」
「親子、じゃ、ないし」
「冷たくない?酷いよ。だって唯一の肉親なんだから」
拳を強く握る。皮膚が赤くなり、血が滲み、爪が食い込む程に強く握る。
清音は少年の尊厳を潰したいだ。腹の内は理解しているし、奴の現状も知っている。その上で会わせようとする意地の悪さは今に始まったことではない。感情を荒らげるのは馬鹿げていると達観する。
「会いたくないの?」
黙ってやりすごそうとするも清音は許さず、低くなった声色に肩がびくりとはねる。
否定し過ぎてしまったかもしれない。機嫌が良いからと油断した。
だが、どうしても会いたくない。あいつと対面するくらいなら清音にいくら殴られてもいいかもしれない。
「会いたくない」
はっきりと告げた自分の意思。
俯いて答えていた。目を合わせるのも怖い。彼女の形相は想像できる。
「会いたくないの?」
2度目の同じ質問は更に低く、想像通りの顔で話す。
「会いたいでしょ。親子なんだから」
恐らくこれが最後だ。これの返答で決まる。
少しだけ悩む。会うだけならそれだけでいい。言葉を交わすこともないし、目を合わすこともしない。
迷いが生まれたが、少年の返答は変わらなかった。首を振った少年に清音の機嫌は一気に変わる。
弱い少年に清音の手が伸びかけた。
「蝶男が探してたよ」
そんな2人に割って入ったのは光弥だった。
薄暗さで色が見えずらい、彼は胸・手と血塗れだった。誰の血かは言わなくても知っている。
地下の通路の片隅に小さく体育座りをしていた。目の前にはシャッター。
赤眼の少年は輪廻を見たくてここにいるが、シャッターが遮っている。
ハザマの塊人が殲滅され、争いとも呼べない殺戮の後を白鬼が後片付けをする。その間に蝶男が次に移行する為の準備をする。赤眼の少年に指示はされず、暇をもて遊んでいた。
特にそれが苦痛というわけではなかった。
光弥が言っていた「輪廻の引力」と言うものがわかってきた。
何も見ず、聞かず、考えずにいると少年の身体が浮いて風に乗り、シャッターを超え歯車が噛み合う輪廻に吸い込まれそうになる。
自然の理は絶対だ。鹿は草を、狼はお肉を食わねば生きていけないし、死んだら菌類が分解して地になる。魂は現世から流れ、輪廻の引力に引かれて生を受ける。
それが正しいサイクルなのに赤眼の少年はずっと留まってている。心残りはない。生まれてすらいないのにあるはずもない。なのに、輪廻に行けない。少年は理の外にいる。
「何してるの?」
心地良い引力を感じていたのにそれを邪魔するのは清音だった。
「別、に」
萎縮してしまう。声をかけないでほしいとはっきり言えない。緊張で舌が回らない。
口籠った少年の発言を清音は馬鹿にしなかった。いつもいつも強張って喋れなくなる少年を散々に弄ってきたのでいい加減に飽きていた。
「そういえば君のお父さんを連れてきたのよ」
小馬鹿にした笑みを浮かべて話す内容は心底どうでもよかった。ただ、奴のことを父と言われ、生理的な嫌悪が症状として現れた。
「会いたい?」
首を振って否定する。彼女への返答は大体肯定しておかないと酷い目に遭うのでいつもなら会いたくなくても「会いたい」と答えなければならない。
清音は機嫌が良いのか少年の否定を咎めたりはしなかった。その代わり、わざとらしく残念そうにいつもより高い声を上げる。
「えぇ!どうしてよ!せっかくの親子の再会なのに」
「親子、じゃ、ないし」
「冷たくない?酷いよ。だって唯一の肉親なんだから」
拳を強く握る。皮膚が赤くなり、血が滲み、爪が食い込む程に強く握る。
清音は少年の尊厳を潰したいだ。腹の内は理解しているし、奴の現状も知っている。その上で会わせようとする意地の悪さは今に始まったことではない。感情を荒らげるのは馬鹿げていると達観する。
「会いたくないの?」
黙ってやりすごそうとするも清音は許さず、低くなった声色に肩がびくりとはねる。
否定し過ぎてしまったかもしれない。機嫌が良いからと油断した。
だが、どうしても会いたくない。あいつと対面するくらいなら清音にいくら殴られてもいいかもしれない。
「会いたくない」
はっきりと告げた自分の意思。
俯いて答えていた。目を合わせるのも怖い。彼女の形相は想像できる。
「会いたくないの?」
2度目の同じ質問は更に低く、想像通りの顔で話す。
「会いたいでしょ。親子なんだから」
恐らくこれが最後だ。これの返答で決まる。
少しだけ悩む。会うだけならそれだけでいい。言葉を交わすこともないし、目を合わすこともしない。
迷いが生まれたが、少年の返答は変わらなかった。首を振った少年に清音の機嫌は一気に変わる。
弱い少年に清音の手が伸びかけた。
「蝶男が探してたよ」
そんな2人に割って入ったのは光弥だった。
薄暗さで色が見えずらい、彼は胸・手と血塗れだった。誰の血かは言わなくても知っている。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる