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7章 赤い珠が映す空想未来
白い鬼、幼い記憶 12
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見上げると丸い穴の縁からひょっこりと顔を出した兄がいた。
「何やってんだよ」
私がここにいるのが予想外だと目を丸くした兄はあたりを見渡して誰もいないことを確認すると小声で話しかける。
「早く上がってこい。誰もいないから」
鬼になれば言葉のも表情もわからないのに兄は私が怯えていると気づいていた。
兄は変わらず、怯えた私に優しくて置いていかれた事実も忘れて必死に縋る思いで急な傾向を登りだした。
すっかり安心すれば傷も痛みもなくなっていて、肩と足の傷も治っていた。
「なんで鬼のままなんだよ。着るものは持ってきたか」
私は首を振る。何も考えずに飛び出てきた。
それを察すると兄は呆れてため息を吐く。
「そんな姿で人里にくれば人は驚いて怖がるんだよ」
怖かったのは私のほうだ。何もしてないのに理由もなく、武器で殴って矢を投げてきた。
「ひとまず、紅柘榴は家に帰れ」
私を突き放すような言い方に泣きたくなった。
「しばらくしたら俺も帰る。先にお前が帰れ。俺はまだ外を見て回るから」
嫌だ。もう独りになりたくない。一緒に帰りたい。そうすれば乳母さんも喜んでくれる。
「俺が紅柘榴を置いていったのかと思ってるのか。下見みたいなもんだ。次は一緒に行こう、な」
私の鬼の頭をなでながら説得されると激情は治まっていた。
本当に帰ってくるのかと不安になり上目遣いで見つめると兄は困ったように笑って「約束な」と言ってくれた。
時々意地悪な兄だが、約束を破った事はない。それなら乳母さんだって安心する。
私は元気よく頷いて鬼の顔でにっこり笑った。私が笑うと兄の困り顔もなくなって私と同じように笑う。
「ほら、早く行け。あっちの方角だからな」
兄が指さした方向を向く。帰れないと泣いていたけど、今なら一人でも帰れそうだ。
前向きな気持ちになって歩もうとした時、私の気持ちを否定する矢が鼻頭を掠めていた。
その矢は私を追いかけてきた狩人たちが放ったものだった。
「早く逃げろ」
兄が急かす。
でも私には不安があった。
狩人が矢を放つ。その矢は真っ直ぐに兄のところを飛んでいった。その矢を私は爪のついた手で払う。
「あいつの仲間だ」
狩人の言葉に集落の皆は動揺した。しかし、確かにあの鬼はあの若者を庇った。それはつまり、狩人の言う通りなのだろう。
「奴も仕留める」
狩人が何かを呟いて弓を構える。奴が見てる殺意に私はもう恐怖を抱かなかった。
寧ろ、兄に向けられた矢に恐怖よりも強い感情が湧き立った。
乳母さんがいつも言っていた通りに、兄を守る。
低く唸り、大きな牙を剥き出そうとすると兄が私の腕にしがみついた。
「駄目だ、傷つけちゃいけない。俺たちが去ればいいんだ」
兄が言っている事は間違ってはいないけど、理解はできなかった。
だって、矢を向け、武器を構えて、殺意を抱くあの男達は侵入者と同じだ。
侵入者は兄と乳母さんを傷つける。私も傷つけられた。なら、同じように退治しないと。
「塀の中じゃないんだ。頼むから一緒に帰ろう」
兄が何か言っているが、頭に熱が上がって聞こえなかった。
それよりも武器を持った十数人の男をどうやって退治しようかと頭がいっぱいになっていた。
狩人が矢を放った。その矢に立ち向かうようにして私も前に進む。
「やめろっ」
兄が叫ぶと、どんっと大きな私の身体が何かを押した。
私を止めようとした兄が狼のように大きい身体に押されて落とし穴に落とされた。すぐに穴の底の竹槍を思い出して兄に手を伸ばす。
兄に向かって走った矢が私に当たり、目蓋から額にかけて掠めていった。
視界半分が赤くなった。血が目の中に入らないよう目蓋を閉じる。
手の中に兄がいるのは感触で伝わる。
急いで兄を胸に抱き寄せるもその隙に二本目の矢が私の太ももに命中した。
脚を貫いた痛みで私の上半身は傾いて、身体の半分が落とし穴の縁に乗り出した。それでも兄は落とさまいと、身体が崩れる寸前に腕に力を入れた。どこかで枝が折れるような音がした。
片目で狩人を睨み、短く吠える。すると、兄が私の腕に手を添えて「駄目だ」と囁いた。
確かに兄は私の腕の中にいる。だったら私たちが外にいる理由なんてなくて、だとしたら安心安全に安らげる塀の中に帰ろう。
私は狩人たちに背を向けた。すると、追い打ちをかけるように背中に矢が刺さった。
私がその気になればあそこの人たちは瞬く間に殺せると自信を持てる。それでも狩人たちから逃げた。
「何やってんだよ」
私がここにいるのが予想外だと目を丸くした兄はあたりを見渡して誰もいないことを確認すると小声で話しかける。
「早く上がってこい。誰もいないから」
鬼になれば言葉のも表情もわからないのに兄は私が怯えていると気づいていた。
兄は変わらず、怯えた私に優しくて置いていかれた事実も忘れて必死に縋る思いで急な傾向を登りだした。
すっかり安心すれば傷も痛みもなくなっていて、肩と足の傷も治っていた。
「なんで鬼のままなんだよ。着るものは持ってきたか」
私は首を振る。何も考えずに飛び出てきた。
それを察すると兄は呆れてため息を吐く。
「そんな姿で人里にくれば人は驚いて怖がるんだよ」
怖かったのは私のほうだ。何もしてないのに理由もなく、武器で殴って矢を投げてきた。
「ひとまず、紅柘榴は家に帰れ」
私を突き放すような言い方に泣きたくなった。
「しばらくしたら俺も帰る。先にお前が帰れ。俺はまだ外を見て回るから」
嫌だ。もう独りになりたくない。一緒に帰りたい。そうすれば乳母さんも喜んでくれる。
「俺が紅柘榴を置いていったのかと思ってるのか。下見みたいなもんだ。次は一緒に行こう、な」
私の鬼の頭をなでながら説得されると激情は治まっていた。
本当に帰ってくるのかと不安になり上目遣いで見つめると兄は困ったように笑って「約束な」と言ってくれた。
時々意地悪な兄だが、約束を破った事はない。それなら乳母さんだって安心する。
私は元気よく頷いて鬼の顔でにっこり笑った。私が笑うと兄の困り顔もなくなって私と同じように笑う。
「ほら、早く行け。あっちの方角だからな」
兄が指さした方向を向く。帰れないと泣いていたけど、今なら一人でも帰れそうだ。
前向きな気持ちになって歩もうとした時、私の気持ちを否定する矢が鼻頭を掠めていた。
その矢は私を追いかけてきた狩人たちが放ったものだった。
「早く逃げろ」
兄が急かす。
でも私には不安があった。
狩人が矢を放つ。その矢は真っ直ぐに兄のところを飛んでいった。その矢を私は爪のついた手で払う。
「あいつの仲間だ」
狩人の言葉に集落の皆は動揺した。しかし、確かにあの鬼はあの若者を庇った。それはつまり、狩人の言う通りなのだろう。
「奴も仕留める」
狩人が何かを呟いて弓を構える。奴が見てる殺意に私はもう恐怖を抱かなかった。
寧ろ、兄に向けられた矢に恐怖よりも強い感情が湧き立った。
乳母さんがいつも言っていた通りに、兄を守る。
低く唸り、大きな牙を剥き出そうとすると兄が私の腕にしがみついた。
「駄目だ、傷つけちゃいけない。俺たちが去ればいいんだ」
兄が言っている事は間違ってはいないけど、理解はできなかった。
だって、矢を向け、武器を構えて、殺意を抱くあの男達は侵入者と同じだ。
侵入者は兄と乳母さんを傷つける。私も傷つけられた。なら、同じように退治しないと。
「塀の中じゃないんだ。頼むから一緒に帰ろう」
兄が何か言っているが、頭に熱が上がって聞こえなかった。
それよりも武器を持った十数人の男をどうやって退治しようかと頭がいっぱいになっていた。
狩人が矢を放った。その矢に立ち向かうようにして私も前に進む。
「やめろっ」
兄が叫ぶと、どんっと大きな私の身体が何かを押した。
私を止めようとした兄が狼のように大きい身体に押されて落とし穴に落とされた。すぐに穴の底の竹槍を思い出して兄に手を伸ばす。
兄に向かって走った矢が私に当たり、目蓋から額にかけて掠めていった。
視界半分が赤くなった。血が目の中に入らないよう目蓋を閉じる。
手の中に兄がいるのは感触で伝わる。
急いで兄を胸に抱き寄せるもその隙に二本目の矢が私の太ももに命中した。
脚を貫いた痛みで私の上半身は傾いて、身体の半分が落とし穴の縁に乗り出した。それでも兄は落とさまいと、身体が崩れる寸前に腕に力を入れた。どこかで枝が折れるような音がした。
片目で狩人を睨み、短く吠える。すると、兄が私の腕に手を添えて「駄目だ」と囁いた。
確かに兄は私の腕の中にいる。だったら私たちが外にいる理由なんてなくて、だとしたら安心安全に安らげる塀の中に帰ろう。
私は狩人たちに背を向けた。すると、追い打ちをかけるように背中に矢が刺さった。
私がその気になればあそこの人たちは瞬く間に殺せると自信を持てる。それでも狩人たちから逃げた。
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