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7章 赤い珠が映す空想未来
空想未来に向かって 3
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港の市場は紅玉にとっては宝箱だ。
上げられたばかりの魚が鮮やかにきらきらと輝いて、海の向こうから来た珍しい品々が並んでいる。
それでいてなかなか影弥が連れて行ってくれないので、港特有の活気をもっと見たいと紅玉は珍しい品々や海の傍で生きる人々の顔などに目移りしていた。
「集中して」
影弥の一言で自身がやるべきことを思い出して、夢で見た場所を探す。
夢で見たのは柘榴と港。そこに赤眼の男がいる。
影弥は特徴となる場所を探して、紅玉は赤眼の男に残る妹の気配を探す。
「いた」
紅玉が指を指し、その方向には影弥が聞いた特徴と一致する男がいた。
「いい?未来の話を最小限にして、一回目で信用を得られるようにして」
「難しいな」
全てを話せば紅玉が望む未来はない。だからといって赤眼の男に信用を得られなければ妹救出の機会を失う。
紅玉の無茶振りともいえる要求。そうでもしないと未来は変えられない。
まずは様子を見ようと赤眼の男の背後ついていく。
赤眼の男は柘榴が入った籠の前で目移りしている。それは紅玉のような物珍しく好奇心でする目移りではなく、品定めをする目つきだった。
物色する目つきが周囲の人々に向けられた。その流れがごく自然の商品に興味をなくした通行人のようだったので、紅玉はその次の行動が読めなかった。
目線は前を向いたまま、手は素早く居眠りする店番も通行人も見向きされないまま竹かごに山盛りにされた柘榴を一つだけ手に取ってさっと袖の中に仕舞った。
「ありえない!」
紅玉は犯行というものを目にしたことがない。というよりは影弥が見せなかった。真っ直ぐに育った彼女は小さな罪でもそれは絶対悪と信じていた。
「ねぇ!見た!今の!盗んだ!」
「落ち着いて」
紅玉の相手をしてやりたいが、その間にも赤眼の男を見失ってしまう。
「盗んだのよ!お金払わなかった!」
「わかったから」
しかし、紅玉は尾行と言うものを忘れてひたすら影弥にに訴える。
「ありえない!ほんとにありえない!紅柘榴はあれのどこがいいの!蛞蝓以下の男じゃない!」
「蛞蝓はお金を使わないよ」
そういうことを言っている場合ではない。
赤眼の男との距離が開いた。歩調を早めると他の人と肩がぶつかり、相手に小さく謝った。
尾行する相手へと視線を戻すとほんの一瞬だけ赤い瞳と目が合う。
しまった。見つかってしまった。
「あれに惚れたの?あれのどこがいいの?信じられない!あんな汚い男に!」
紅玉は変わらず、尾行に気づかれても危機感がないようだ。
怒りが収まらないようだったが、今は宥める余裕がない。紅玉は影弥の声を聞かず、罵声を続ける。
赤眼の男が人目のつかない場所を目指し、港の市場から離れるように角を曲がる。
「回り込む。こうは後から来て」
人々の視線など気にせず、影弥は軽く跳ぶと何倍もの高い屋根に着地した。
赤眼の男が角を曲がろうとする寸前に影弥は二、三歩で連なる屋根を飛ばして、赤目の男が角を曲がった直後には目の前に影弥がついていた。
赤い目玉がまんまると見開き、今すぐにでも影弥から逃げようとしたので手が届くうちに赤眼の男の襟を掴むと瞬く間に壁に抑えつけた。
「私を置いていった!」
紅玉が後から追いついて、我慢ならない不満を影弥にぶつける。
「騒ぐな」
余裕がなくなった影弥はつい紅玉に暴言を吐いてしまった。
赤眼の男と接触したこと、これから話すこと、影弥の限られた思考で考えるのは難しく、余裕がなくなり、口調が荒くなってしまう。
珍しいことではなかった。いつも優しく紅玉の願い事は何でも聞いていたとしても我儘が過ぎると彼の素が出る。
こうした場合、大抵は紅玉が悪い。そして、今回も自分に負があるとほんの少しだけ思うので紅玉は気にしない。
「赤眼だな」
「確かに、そうだが」
「代金払え!お金払え!」
紅玉の怒りは再び赤眼の男に向けられて本来の目的を忘れてしまっている。
一先ず影弥は紅玉を無視して目的果たす為、会話を続ける。
「人食い塀の紅柘榴に会っているな」
表情を変えないように努めていた赤眼の男だったが、そればかりは驚きのあまり瞠目した。
「こいつのどこがいいのよ!ねえ!どこがいいの!」
紅玉の要望に応えようとしているのに、紅玉がは影弥の集中を削ぐ。
「彼女を救いたいと思ってるな」
「お前、一体」
影弥が無視を続けるので紅玉は悔しく地団駄を踏む。
「せめて盗んだものを返しなさいよ!」
そして、聞こえていない相手に怒りをぶつけた。
上げられたばかりの魚が鮮やかにきらきらと輝いて、海の向こうから来た珍しい品々が並んでいる。
それでいてなかなか影弥が連れて行ってくれないので、港特有の活気をもっと見たいと紅玉は珍しい品々や海の傍で生きる人々の顔などに目移りしていた。
「集中して」
影弥の一言で自身がやるべきことを思い出して、夢で見た場所を探す。
夢で見たのは柘榴と港。そこに赤眼の男がいる。
影弥は特徴となる場所を探して、紅玉は赤眼の男に残る妹の気配を探す。
「いた」
紅玉が指を指し、その方向には影弥が聞いた特徴と一致する男がいた。
「いい?未来の話を最小限にして、一回目で信用を得られるようにして」
「難しいな」
全てを話せば紅玉が望む未来はない。だからといって赤眼の男に信用を得られなければ妹救出の機会を失う。
紅玉の無茶振りともいえる要求。そうでもしないと未来は変えられない。
まずは様子を見ようと赤眼の男の背後ついていく。
赤眼の男は柘榴が入った籠の前で目移りしている。それは紅玉のような物珍しく好奇心でする目移りではなく、品定めをする目つきだった。
物色する目つきが周囲の人々に向けられた。その流れがごく自然の商品に興味をなくした通行人のようだったので、紅玉はその次の行動が読めなかった。
目線は前を向いたまま、手は素早く居眠りする店番も通行人も見向きされないまま竹かごに山盛りにされた柘榴を一つだけ手に取ってさっと袖の中に仕舞った。
「ありえない!」
紅玉は犯行というものを目にしたことがない。というよりは影弥が見せなかった。真っ直ぐに育った彼女は小さな罪でもそれは絶対悪と信じていた。
「ねぇ!見た!今の!盗んだ!」
「落ち着いて」
紅玉の相手をしてやりたいが、その間にも赤眼の男を見失ってしまう。
「盗んだのよ!お金払わなかった!」
「わかったから」
しかし、紅玉は尾行と言うものを忘れてひたすら影弥にに訴える。
「ありえない!ほんとにありえない!紅柘榴はあれのどこがいいの!蛞蝓以下の男じゃない!」
「蛞蝓はお金を使わないよ」
そういうことを言っている場合ではない。
赤眼の男との距離が開いた。歩調を早めると他の人と肩がぶつかり、相手に小さく謝った。
尾行する相手へと視線を戻すとほんの一瞬だけ赤い瞳と目が合う。
しまった。見つかってしまった。
「あれに惚れたの?あれのどこがいいの?信じられない!あんな汚い男に!」
紅玉は変わらず、尾行に気づかれても危機感がないようだ。
怒りが収まらないようだったが、今は宥める余裕がない。紅玉は影弥の声を聞かず、罵声を続ける。
赤眼の男が人目のつかない場所を目指し、港の市場から離れるように角を曲がる。
「回り込む。こうは後から来て」
人々の視線など気にせず、影弥は軽く跳ぶと何倍もの高い屋根に着地した。
赤眼の男が角を曲がろうとする寸前に影弥は二、三歩で連なる屋根を飛ばして、赤目の男が角を曲がった直後には目の前に影弥がついていた。
赤い目玉がまんまると見開き、今すぐにでも影弥から逃げようとしたので手が届くうちに赤眼の男の襟を掴むと瞬く間に壁に抑えつけた。
「私を置いていった!」
紅玉が後から追いついて、我慢ならない不満を影弥にぶつける。
「騒ぐな」
余裕がなくなった影弥はつい紅玉に暴言を吐いてしまった。
赤眼の男と接触したこと、これから話すこと、影弥の限られた思考で考えるのは難しく、余裕がなくなり、口調が荒くなってしまう。
珍しいことではなかった。いつも優しく紅玉の願い事は何でも聞いていたとしても我儘が過ぎると彼の素が出る。
こうした場合、大抵は紅玉が悪い。そして、今回も自分に負があるとほんの少しだけ思うので紅玉は気にしない。
「赤眼だな」
「確かに、そうだが」
「代金払え!お金払え!」
紅玉の怒りは再び赤眼の男に向けられて本来の目的を忘れてしまっている。
一先ず影弥は紅玉を無視して目的果たす為、会話を続ける。
「人食い塀の紅柘榴に会っているな」
表情を変えないように努めていた赤眼の男だったが、そればかりは驚きのあまり瞠目した。
「こいつのどこがいいのよ!ねえ!どこがいいの!」
紅玉の要望に応えようとしているのに、紅玉がは影弥の集中を削ぐ。
「彼女を救いたいと思ってるな」
「お前、一体」
影弥が無視を続けるので紅玉は悔しく地団駄を踏む。
「せめて盗んだものを返しなさいよ!」
そして、聞こえていない相手に怒りをぶつけた。
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