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7章 赤い珠が映す空想未来
一寸先は深淵 1
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秋から冬までを想定して考えた紅玉の子供じみた作戦を影弥と話し合い、考えて決めた。
人食い塀を中心にその周りの町をいくつか選び、さらに紅玉が実行する箇所を選んだ。
一カ所だけに留まらず、複数に拠点を置いて回る。そうすれば蝶男に紅玉たちを特定されにくく、赤眼の男からも目を逸らせる。
実行すると決めた際、未来視では特に変化はなかった。良い結果も悪い結果も紙一重になったままだ。変わったとすれば赤眼の男が妹を連れ出す時期が早まったことだ。彼は順調に影弥が言った日時に妹を人食い塀から出すだろう。
「あとは私たち次第なんだ」
気合を入れろと両頬を叩く。
紅玉を見てくれるのは影弥しかいなかった。自身の存在を知らしめようと大声を出したり、地団駄を踏んだりした。すっかり悪癖になってもそれを認識できたのは影弥だけだ。
しかし、今からするのは紅玉の足跡を残すようなものだ。紅玉の姿は見えなくてもそこに誰かいると知らせる。
幽体である紅玉は現世のものには触れられない。
現世とあちら側の境界線は絶対的なこの世の理だと勘違いしそうになるが、理にも穴もある。
新鮮な魚や解体される前の肉、果実は境界線が曖昧なので触れられることもある。触れられるが持てないこともある。境界が曖昧ものは大抵そうだ。
未来視が覚醒してから触れられる曖昧なものが増えた。
だからこの作戦ができた。
黄昏時。噂が広まりやすい時間だ。影弥はいない。
紅玉は再度やる気を入れて、下を見下ろす。木造の屋根から見る黄昏の風景には帰早足で帰路を歩く人たちが通り過ぎていく。
生きるのに必死な人たちはその境界線の外にいる紅玉を見ようとしない。目に入らないのだから仕方がないが、それが悔しくなる。
それを仕返してやるのだ。そう思うと緊張とは違う高鳴りがした。
子供じみた作戦の重要なところは場所と回数だ。なので、それは紅玉に任せられた。
やりすぎたらダメで、地味になっても噂にならない。丁度、真ん中になるような塩梅でやらないといけない。
屋根の上に立ち、人の行き交いを観察する。
男女がすれ違いそうになり、直感が今だと叫んだ。
腕いっぱいになるまでかき集めた蝉の抜け殻や死骸などを屋根から放り投げた。
散り際の桜が風で煽られた時のように、枯れた亡骸が桜吹雪となって通行人の頭上に降ってきた。
前触れもなく亡骸の雨に男も女も関係なく、大きな悲鳴を上げながら慌てふためき、頭や肩に乗ったかもしれないと体中を叩いて必死に死骸を落とそうとする。
夜が近くなった黄昏の薄暗さでもその様子がよく見えた。
紅玉にあった緊張はすっかり溶けて惚けた顔でその様を見ていた。
悪戯ってこんなに楽しいんだ。
紅玉が提案した作戦は様々な場所で様々な噂を流して、紅玉と影弥が入るかもしれないと臭わせる。そして赤眼の男から目を逸らすのだ。
大事なのは噂なのだが、怖がらせる噂を流すとすればやはり子供がしそうな悪戯しか浮かばなかった。
霊感の強い番頭の背中に乗ることもできた。番頭は急な肩こりを不思議がって、紅玉が降りると解消された。そして、紅玉が乗るとまた肩こりが生じてさすがに番頭も気味悪かった。
その様子がまた面白かったので笑っていると番頭の耳にも聞こえたようで小さく悲鳴を上げた。
今から眠ろうとした女性の枕をひっくり返したこともある。無防備な瞬間に夜襲をかけられたような気分になって、起き上がり周囲を見るが夜襲をかけた相手はいない。
誰もいない宵の静寂に女の子の笑い声と走り去る足音が一際大きくなりそして小さくなった。
そうして些細な怪異が重なり、町中で寝不足や肩こりで悩む人が目立った。寝不足になった町娘は私用で隣町に訪れた際、同じような噂話を耳にして、人ならざる者が広がっていく正体不明の恐怖に背筋が凍った。
人食い塀を中心にその周りの町をいくつか選び、さらに紅玉が実行する箇所を選んだ。
一カ所だけに留まらず、複数に拠点を置いて回る。そうすれば蝶男に紅玉たちを特定されにくく、赤眼の男からも目を逸らせる。
実行すると決めた際、未来視では特に変化はなかった。良い結果も悪い結果も紙一重になったままだ。変わったとすれば赤眼の男が妹を連れ出す時期が早まったことだ。彼は順調に影弥が言った日時に妹を人食い塀から出すだろう。
「あとは私たち次第なんだ」
気合を入れろと両頬を叩く。
紅玉を見てくれるのは影弥しかいなかった。自身の存在を知らしめようと大声を出したり、地団駄を踏んだりした。すっかり悪癖になってもそれを認識できたのは影弥だけだ。
しかし、今からするのは紅玉の足跡を残すようなものだ。紅玉の姿は見えなくてもそこに誰かいると知らせる。
幽体である紅玉は現世のものには触れられない。
現世とあちら側の境界線は絶対的なこの世の理だと勘違いしそうになるが、理にも穴もある。
新鮮な魚や解体される前の肉、果実は境界線が曖昧なので触れられることもある。触れられるが持てないこともある。境界が曖昧ものは大抵そうだ。
未来視が覚醒してから触れられる曖昧なものが増えた。
だからこの作戦ができた。
黄昏時。噂が広まりやすい時間だ。影弥はいない。
紅玉は再度やる気を入れて、下を見下ろす。木造の屋根から見る黄昏の風景には帰早足で帰路を歩く人たちが通り過ぎていく。
生きるのに必死な人たちはその境界線の外にいる紅玉を見ようとしない。目に入らないのだから仕方がないが、それが悔しくなる。
それを仕返してやるのだ。そう思うと緊張とは違う高鳴りがした。
子供じみた作戦の重要なところは場所と回数だ。なので、それは紅玉に任せられた。
やりすぎたらダメで、地味になっても噂にならない。丁度、真ん中になるような塩梅でやらないといけない。
屋根の上に立ち、人の行き交いを観察する。
男女がすれ違いそうになり、直感が今だと叫んだ。
腕いっぱいになるまでかき集めた蝉の抜け殻や死骸などを屋根から放り投げた。
散り際の桜が風で煽られた時のように、枯れた亡骸が桜吹雪となって通行人の頭上に降ってきた。
前触れもなく亡骸の雨に男も女も関係なく、大きな悲鳴を上げながら慌てふためき、頭や肩に乗ったかもしれないと体中を叩いて必死に死骸を落とそうとする。
夜が近くなった黄昏の薄暗さでもその様子がよく見えた。
紅玉にあった緊張はすっかり溶けて惚けた顔でその様を見ていた。
悪戯ってこんなに楽しいんだ。
紅玉が提案した作戦は様々な場所で様々な噂を流して、紅玉と影弥が入るかもしれないと臭わせる。そして赤眼の男から目を逸らすのだ。
大事なのは噂なのだが、怖がらせる噂を流すとすればやはり子供がしそうな悪戯しか浮かばなかった。
霊感の強い番頭の背中に乗ることもできた。番頭は急な肩こりを不思議がって、紅玉が降りると解消された。そして、紅玉が乗るとまた肩こりが生じてさすがに番頭も気味悪かった。
その様子がまた面白かったので笑っていると番頭の耳にも聞こえたようで小さく悲鳴を上げた。
今から眠ろうとした女性の枕をひっくり返したこともある。無防備な瞬間に夜襲をかけられたような気分になって、起き上がり周囲を見るが夜襲をかけた相手はいない。
誰もいない宵の静寂に女の子の笑い声と走り去る足音が一際大きくなりそして小さくなった。
そうして些細な怪異が重なり、町中で寝不足や肩こりで悩む人が目立った。寝不足になった町娘は私用で隣町に訪れた際、同じような噂話を耳にして、人ならざる者が広がっていく正体不明の恐怖に背筋が凍った。
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