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7章 赤い珠が映す空想未来
止まった時間 5
しおりを挟む毎夜のごとく紅柘榴は鬼になって徘徊をした。朝になれば屋敷に戻って人に戻り、布団で寝て起きると松の木で深夜になるまで過ごす。そして、深夜になると鬼となって人町に出る。
そのたびに紅玉は心配になってついていき、紅柘榴を探す。
徘徊を始めた一夜目は紅玉も混乱し、頭も回らず町を走りまわっていたが、未来視で彼女の行動を先回りがきるようになった。
移動した先に紅玉がいて、白鬼の紅柘榴は驚いていたが、何度も繰り返すと慣れてきて特に怒りもせず、徘徊を続けた。
紅玉も紅桜の徘徊を咎めなかった。
人目につかないようにと優しめに注意すると物陰に隠れるように歩いたり、珍しく人が通ると鋏で瞬間移動するようになった。
まだ白鬼の怪談話が出ることはないが、紅玉はいつ人の目につくかわからず、ひやひやとしながら屋根の上を歩く紅柘榴を見守った。
白鬼が町を徘徊していると世間に知られれば紅柘榴に酷い仕打ちをされるのではないか、住んでいる屋敷が見つかってしまったり、怖い未来ばかりを妄想してしまう。
だからといって徘徊を止めるよう強く言い出せなかった。
紅柘榴にまた怒鳴られるのも怖いと言う気持ちもある。けどそれよりも死んでいる紅玉が紅柘榴の気持ちに寄り添いられない不甲斐なさがあるからだ。
紅玉は一生を共にした人と出会ったわけでもないし、痛みもなければ体温もない。共通できる感覚も感情もない。
だから松を眺めるのと同じように何も言えず見守る。
本当は再会した喜びを分かち合いたいのにその気持ちを抑えることしかできない。
死んだものは蘇らないし、失ったものは失ったままだ。探したって見つからない。
それは紅柘榴も充分に理解している。しかし、魂が求めてしまうなら身体はそれに従う。そこに紅玉と向き合う余裕はない。
毎晩の徘徊に付き添い、忘れそうになる睡眠食事風呂に声をかけ、体調をこんなに気にかけているのに、紅柘榴の心には紅玉を受け入れてくれるほんの隙間もない。
ひどく腹立たしくもある。泣きたくもある。だが、紅柘榴を責められない。
紅柘榴は失ったものを追い続けるだろうし、二度と未来を見つめない。紅柘榴は生きているのに死人のようだ。
紅玉が死んで時が止まったのと同じで、時の止まった生活をあの屋敷で時が止まったまま紅柘榴が暮らす。
紅柘榴が人食い塀を出てからいくつか冬を越えた。そして巡って春が来る。
この生活を彼女が死ぬまで続けて良いだろうか。
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