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7章 赤い珠が映す空想未来
邂逅してから 6
しおりを挟む全身に砂利の感触を味わいながら転がった目玉と見つめ合っていた。
やってしまったと後悔しながら身体を起こす。紅玉の周囲には白蓮の肉片が散らばっており、その一つ一つは神経が生きているようにぴくぴくと僅かに動いていた。
ここはどこだろう。第四層ではないのは確かだ。紅玉は第四層から逃れようと思っていたのだから。
一番近くにあった目玉を拾う。赤い目玉に溜め息を落としてから舌と思われるものを拾い、どこの部分かわからない骨を拾った。
肉片は生体ではなく魂だ。集めれば紅玉の糸で治せるだろう。白蓮の一部を一つ、また一つ拾った。
立ち止まらず、手を動かす。考えたくなかった。見たくなかった。
現世には戻れない。地獄に落ちた。
腕いっぱいに集めた肉片に涙が落ちた。
現世では曖昧でしか感じられなかった輪廻が今ははっきりと感じる。
「あなたは、瑠璃ね」
紅玉の目の前には金髪の、瑠璃色の瞳を持った少女がいた。
「私の来世」
地獄に落ちて、紅玉の消滅が確定した。来世の形がはっきり見えるのがその証だ。
「かげぇ」
影弥のところには帰れない。
消滅よりもそれが一番怖かった。
「わかってる。来世のあなたに繋いでみせるから、もう少し、待ってて」
そう言うと瑠璃はふう、と姿を消して紅玉は白蓮の肉片集めを続けた。
覚悟はしている。後戻りはしない。
なのに涙が止まらない。
だから勇気が出るように願いながら、自分に言い聞かせるように同じ言葉を繰り返し呟いた。
「大丈夫。私がついているんだもの。大丈夫に決まってる」
何も感じられず、孤独で押しつぶされそうな闇の中、白蓮は少女の声を聞いた。
同じ言葉を繰り返し言われる。次第に孤独の重さもなくなり、大丈夫ではないのに本当に大丈夫なのだと思えてきた。
闇が暗闇となって、その暗闇が目を閉じて作っているものだとわかり、ゆっくりと目蓋を上げた。
視界がぼやけるので三回ほど目蓋を上げ下げする。
そこに紅柘榴が心配そうに見下ろしてきた。
心の底からぬくもりが溢れそうになるが、顔立ちが少しばかり幼い。およそ一三歳くらいだ。
上体を起こして紅柘榴に似た少女頭の天辺からつま先まで疑念を解消したく眺めたが、疑念が強まり、この感想しか出なかった。
「小さい?」
決して胸のことを言ったのではない。身長や顔だ。
しかし、心配そうにしていた垂れていた眉と目が鬼のように釣り上がり、誤解を解こうとした時には手の平が頬に飛んできた。
「馬鹿にしないでよ!」
紅柘榴ではしない表情で紅柘榴が言わないことを少女は言う。
「あたしだって!べにみたいなナイスバディになる予定だったんだから!」
「ない、す?」
「ほんと信じられない!治して損した!」
少女が立ち上がると片頬を赤くした白蓮を残してどこかへ歩いていく。
振り返ると呆然としたままの白蓮にまた苛立って、片足で地団駄踏みながら怒鳴る。
「何してるの!早く立つ!早く行く!」
命令よりもまず現状の説明が欲しい。
「ここはどこだ。君は、誰だ?」
白蓮は立ち上がり、少女の元まで歩きながら問う。
少女は地団駄を止め、怒鳴ならず答える。
「私は紅玉。ここは地獄の第八層」
「地獄?死んだやつが行くところだろ」
「死んでるのよ。私もあなたも。次第に思い出すよ」
また少女が進み出して斜面を上る。その先には洞窟の出口がある。
白蓮も紅玉に倣い、慣れた様子で登り、あっという間に紅玉を越し、彼女が登りやすくするように手を差し出す。
紅玉は嫌そうな顔で、けど不服そうに白蓮の手を受け取り、二人は洞窟の出口に並んだ。
そこに広がる赤い風景は地獄と言われれば信じてしまいそうになる。
乾いた熱い空気が鼻から肺までを焼いたしまいそうだ。
「カンダタって呼んでもいいでしょ」
隣の紅玉が言う。それを白蓮の呼び名にするつもりだろうか。
特にこだわりはないが、紅柘榴以外に本名を呼ばれるのは抵抗があったので都合が良かった。
「好きに呼んででいいが、変な名前だな。由来でもあるのか?」
「さあ?未来の私に聞いて」
意味がわからない。
「あの山に行くよ」
それだけ言うと紅玉は説明なしに歩き出し、その後に続く。色々と自分があるが道中に聞くことにした。
そうして彼と彼女は歩く。地獄と呼ばれる夢の中を。
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