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魔女の覚醒
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辺りが暗闇に包まれる。空には不自然な位大きくて赤い月が不気味に輝いている。
スチルにあった赤い月だ!
「あ"っあ"っあ"ーう"ぐぅー」
ルイルイが身を捩って苦しんでいる。
「ルイルイ、魔女になってしまうわ。正気に戻って。」
ルイルイに私の声は届かない。
ふと前を見ると今までもがき苦しんでいたルイルイが真っ直ぐ立っている。
そして此方を見ると一直線に走ってきた。
「危ない!」
シルクが私を抱えて魔女の攻撃を避けてくれた。
「ルイルイ!」
「無理です。ルマの声は聞こえていない。」
ルイルイは両手を前に掲げると凄まじい雷を落としてきた。
その時に見えたルイルイの爪は小枝のように所々曲がって伸びていて、そのせいか指を揃えられず不自然に開いたままだ。
その手を見て殿下と嬉しそうに手を繋いでいた彼女を思い出す。
「ベン、チャー、近くの住民の避難を。僕は山へ誘導してみます。」
ルイルイは私を狙ってくる。私はシルクと一緒に山の方へルイルイを誘導しながら逃げていった。
「ここまでくれば大丈夫。聖剣を使います。説得を試みるのは危険です。」
「はい。」
みんなの命を危険に晒したくない。私はすぐさま頷いた。
シルクが剣を使って戦う。魔女の戦い方は凄まじかった。
最初こそ魔法での攻撃だったが、魔力も少なくなったのか肉弾戦だ。
手を斬っても腹を刺しても受け身なんて一切取らずに攻撃してくる。まるで痛みなんか感じないようだった。
髪を振り乱し舌を出し涎を流しながら戦う姿は、元のルイルイを一切感じさせない。
そんな凄まじい状態のルイルイ相手にシルクは確実にダメージを与えていった。
そして・・・
突然ルイルイが倒れる。シルクが傍に行くと既に事切れていた。
死ぬ寸前まで攻撃し続けたのだ。
同郷の彼女を助けられなかった後悔が胸を襲う。
私は彼女が怖くて避けていた、一方的に陥れられていたのだから。
シルクが私を気遣うようそっと抱き寄せた。
「フェイザー公爵に連絡します。後始末に動いてくれるそうです。騎士団が来るでしょう。ルマはまだ姿を現さない方がいい。アドの所へ行ってて貰えますか?」
そうだ。私が姿を現して余計に面倒な事になるかもしれない。父とシルクが相談していたのなら任せよう。
「はい。」
素直に頷いてシルクを見上げる。シルクは目を細めて私を見ると腕に力を入れる。
「守れて良かった。」
胸に顔が当たり、シルクの匂いを胸いっぱいに吸う。安心する匂いに目を閉じると頭上にキスが落とされた。びっくりして顔を上げるとシルクの綺麗な顔が近づいてきて・・・一瞬だけ触れるような軽いキスだった。
びっくりしたのと羞恥とで赤くなったり照れたりしているうちに私はアドさんの家の前にいた。いつ転移したのだろう?
シルクは何事も無かったかのようにドアを開けると
「アドさん!またルマを頼むよ。」とアドさんに声を掛けた。
アドさんは奥から出てくるとにこやかに笑って出迎えてくれた。
「任せて。って、ルマ大丈夫?顔が真っ赤。どうしたの?あっシルク!」
シルクはさっさと転移して戻って行った。
アドさんはニヤニヤして近づいてきた。
「何?シルクになんかされた?」
私は居たたまれなくて、真っ赤になってルマさんに返事が返せずアワアワしていた。
ルマさんは察してくれて
「良かったね。」ポンと肩を叩いてくれた。
スチルにあった赤い月だ!
「あ"っあ"っあ"ーう"ぐぅー」
ルイルイが身を捩って苦しんでいる。
「ルイルイ、魔女になってしまうわ。正気に戻って。」
ルイルイに私の声は届かない。
ふと前を見ると今までもがき苦しんでいたルイルイが真っ直ぐ立っている。
そして此方を見ると一直線に走ってきた。
「危ない!」
シルクが私を抱えて魔女の攻撃を避けてくれた。
「ルイルイ!」
「無理です。ルマの声は聞こえていない。」
ルイルイは両手を前に掲げると凄まじい雷を落としてきた。
その時に見えたルイルイの爪は小枝のように所々曲がって伸びていて、そのせいか指を揃えられず不自然に開いたままだ。
その手を見て殿下と嬉しそうに手を繋いでいた彼女を思い出す。
「ベン、チャー、近くの住民の避難を。僕は山へ誘導してみます。」
ルイルイは私を狙ってくる。私はシルクと一緒に山の方へルイルイを誘導しながら逃げていった。
「ここまでくれば大丈夫。聖剣を使います。説得を試みるのは危険です。」
「はい。」
みんなの命を危険に晒したくない。私はすぐさま頷いた。
シルクが剣を使って戦う。魔女の戦い方は凄まじかった。
最初こそ魔法での攻撃だったが、魔力も少なくなったのか肉弾戦だ。
手を斬っても腹を刺しても受け身なんて一切取らずに攻撃してくる。まるで痛みなんか感じないようだった。
髪を振り乱し舌を出し涎を流しながら戦う姿は、元のルイルイを一切感じさせない。
そんな凄まじい状態のルイルイ相手にシルクは確実にダメージを与えていった。
そして・・・
突然ルイルイが倒れる。シルクが傍に行くと既に事切れていた。
死ぬ寸前まで攻撃し続けたのだ。
同郷の彼女を助けられなかった後悔が胸を襲う。
私は彼女が怖くて避けていた、一方的に陥れられていたのだから。
シルクが私を気遣うようそっと抱き寄せた。
「フェイザー公爵に連絡します。後始末に動いてくれるそうです。騎士団が来るでしょう。ルマはまだ姿を現さない方がいい。アドの所へ行ってて貰えますか?」
そうだ。私が姿を現して余計に面倒な事になるかもしれない。父とシルクが相談していたのなら任せよう。
「はい。」
素直に頷いてシルクを見上げる。シルクは目を細めて私を見ると腕に力を入れる。
「守れて良かった。」
胸に顔が当たり、シルクの匂いを胸いっぱいに吸う。安心する匂いに目を閉じると頭上にキスが落とされた。びっくりして顔を上げるとシルクの綺麗な顔が近づいてきて・・・一瞬だけ触れるような軽いキスだった。
びっくりしたのと羞恥とで赤くなったり照れたりしているうちに私はアドさんの家の前にいた。いつ転移したのだろう?
シルクは何事も無かったかのようにドアを開けると
「アドさん!またルマを頼むよ。」とアドさんに声を掛けた。
アドさんは奥から出てくるとにこやかに笑って出迎えてくれた。
「任せて。って、ルマ大丈夫?顔が真っ赤。どうしたの?あっシルク!」
シルクはさっさと転移して戻って行った。
アドさんはニヤニヤして近づいてきた。
「何?シルクになんかされた?」
私は居たたまれなくて、真っ赤になってルマさんに返事が返せずアワアワしていた。
ルマさんは察してくれて
「良かったね。」ポンと肩を叩いてくれた。
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