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3.レオンハルト視点
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俺は侯爵家に生まれながら、この外見のせいで皆に蔑まれて生きてきた。
幼い頃は勿論、成長してからも………。
この国では昔から外見が醜いと出世できないとされていて、身分が高くても侮られる事が多かった。
(外見だけで俺の価値を決められてたまるかっ!!)
その強い気持ちだけで、人の倍勉強して働いた。
幸いゴルゾン殿下は外見に左右されず、俺を重用してくれた。
この国では珍しく外見よりも能力を優先する人で政務に於いては結果主義でもある。
多少、大袈裟なリアクションが煩いが、俺はこの人に生涯仕えていこうと決めていた。
俺は生涯独身でいられるようにこの国の法律の改定に奔走し、目的達成間近だった。
もし結婚しても、妻が俺の顔を怖がることを想像すると、耐えられない……。
自分の顔を見れないような女性と暮らす意味なんて無い。
だから、結婚は諦めていた。
そんなある日ーーー
彼女と出逢った。
王家の森に現れた女性は誰もが見惚れてしまうほどの美しさ。
「だれ?」
こんな森に一人で居るというのにまるで緊張感の無い声。
顔を僅かに傾げた彼女を見た途端
周囲の音が遠ざかり、時が止まる。
真っ直ぐに下ろされた濡羽色の髪が肩からさらりと落ちる。
俺を見る黒曜石のような瞳は透き通っていて、穢れを知らない無垢な少女のようだった。
息を呑む。
けれど、それは一瞬。
俺は直ぐに冷静な自分を取り戻し殿下に彼女の存在を伝えた。
王国一の華と謳われる婚約者がいる殿下でも、彼女の美しさに心を奪われている。
役目を思い出した俺は、彼女が武器を持っていないか側に行って確かめた。
俺が膝を付くと黒曜石の瞳と間近で視線が合う。
これ程近くで女性と目を合わせたのは母以来だ。上品で涼しげな目元。その視線からは俺の外見に対する嫌悪感を感じない。俺が顔を近づけると、少し照れたように頬を染めた。
(何だ?この反応は………?)
俺は努めて冷静に振る舞いながらも、心の中では嵐が吹き荒れる。
(彼女は俺の外見が恐ろしくないのか?)
殿下が近づこうとすると彼女は俺の服をちょんちょんと引っ張った。
美貌の殿下を怖がり、俺を頼る彼女が可愛い。
もう一度彼女を振り返る。
ーーーやはりだ。
彼女は俺を見ると頬を染める。
そんな表情を見せられたら、意識せずにはいられない。
顔がニヤけそうになるのを必死で抑えた。
そんな自分に、自分自身が驚く。
俺の笑顔は死神に魂を抜かれるようだと恐れられている。
それはそうだろう。
醜男の笑顔なんて……。
今までずっと無表情を貫いてきた。
もう笑い方なんて忘れたと思っていたのに………。
俺の直ぐ前を殿下にエスコートされて彼女が歩く。
気になって仕方がない。
全神経が彼女に集中する。
女性にしては低めで少し掠れた声。
彼女の息遣いがはっきり聞こえる。俺の心臓もドクドクと煩い。
恋はしないと決めていた。
なのに…………
恋に堕ちるのなんてほんの一瞬。
俺はその日から抗うことの出来ない自分の感情に翻弄されていった。
そして、確かにこの世界が色づいて見えた。
幼い頃は勿論、成長してからも………。
この国では昔から外見が醜いと出世できないとされていて、身分が高くても侮られる事が多かった。
(外見だけで俺の価値を決められてたまるかっ!!)
その強い気持ちだけで、人の倍勉強して働いた。
幸いゴルゾン殿下は外見に左右されず、俺を重用してくれた。
この国では珍しく外見よりも能力を優先する人で政務に於いては結果主義でもある。
多少、大袈裟なリアクションが煩いが、俺はこの人に生涯仕えていこうと決めていた。
俺は生涯独身でいられるようにこの国の法律の改定に奔走し、目的達成間近だった。
もし結婚しても、妻が俺の顔を怖がることを想像すると、耐えられない……。
自分の顔を見れないような女性と暮らす意味なんて無い。
だから、結婚は諦めていた。
そんなある日ーーー
彼女と出逢った。
王家の森に現れた女性は誰もが見惚れてしまうほどの美しさ。
「だれ?」
こんな森に一人で居るというのにまるで緊張感の無い声。
顔を僅かに傾げた彼女を見た途端
周囲の音が遠ざかり、時が止まる。
真っ直ぐに下ろされた濡羽色の髪が肩からさらりと落ちる。
俺を見る黒曜石のような瞳は透き通っていて、穢れを知らない無垢な少女のようだった。
息を呑む。
けれど、それは一瞬。
俺は直ぐに冷静な自分を取り戻し殿下に彼女の存在を伝えた。
王国一の華と謳われる婚約者がいる殿下でも、彼女の美しさに心を奪われている。
役目を思い出した俺は、彼女が武器を持っていないか側に行って確かめた。
俺が膝を付くと黒曜石の瞳と間近で視線が合う。
これ程近くで女性と目を合わせたのは母以来だ。上品で涼しげな目元。その視線からは俺の外見に対する嫌悪感を感じない。俺が顔を近づけると、少し照れたように頬を染めた。
(何だ?この反応は………?)
俺は努めて冷静に振る舞いながらも、心の中では嵐が吹き荒れる。
(彼女は俺の外見が恐ろしくないのか?)
殿下が近づこうとすると彼女は俺の服をちょんちょんと引っ張った。
美貌の殿下を怖がり、俺を頼る彼女が可愛い。
もう一度彼女を振り返る。
ーーーやはりだ。
彼女は俺を見ると頬を染める。
そんな表情を見せられたら、意識せずにはいられない。
顔がニヤけそうになるのを必死で抑えた。
そんな自分に、自分自身が驚く。
俺の笑顔は死神に魂を抜かれるようだと恐れられている。
それはそうだろう。
醜男の笑顔なんて……。
今までずっと無表情を貫いてきた。
もう笑い方なんて忘れたと思っていたのに………。
俺の直ぐ前を殿下にエスコートされて彼女が歩く。
気になって仕方がない。
全神経が彼女に集中する。
女性にしては低めで少し掠れた声。
彼女の息遣いがはっきり聞こえる。俺の心臓もドクドクと煩い。
恋はしないと決めていた。
なのに…………
恋に堕ちるのなんてほんの一瞬。
俺はその日から抗うことの出来ない自分の感情に翻弄されていった。
そして、確かにこの世界が色づいて見えた。
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