男装の騎士に心を奪われる予定の婚約者がいる私の憂鬱

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贈り物の行方

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「カイベリンの使者がレースの生地を持ってきた。結婚式の衣装に使用して欲しいそうだ。」
「はい。ヨシュン、間に合うようにお願いね。」
私たちは結婚式の打ち合わせをしている。
各国から賓客を招くため、その宿泊場所の準備は大変だ。警備の問題もある。
また、式とは別に、各国の要人が集まる機会を生かして懇親パーティー等を企画している。
結婚式に使用する衣装、料理は王国内の特産品や友好国の輸入品を使用する等、気遣いも準備の方向性も多岐に渡る。

数ヶ月に渡る準備も漸く一段落を迎えてほっとしていると、殿下が言いにくそうに尋ねてきた。
「私が視察先から送ったリボンやネックレスは気に入らなかったか?」
思わぬ質問に目を丸くする。
「いえ、リボンは時々髪に編み込んで貰ってます。いつもの髪型もそうすると華が出て素敵ですのよ。ネックレスは……、そうですね、服装の雰囲気に合わせて使用しています。最近は結婚も控えていますので、大人っぽい雰囲気の服装を心がけていますので、使用回数は減っているかもしれませんね。」
「そうか。では、どういうものならリュルは毎日身に付けてくれる?」
「そ、そうですね、…。恥ずかしいんですけど…。バルの瞳の色の石が着いた髪止めが……。」
バルがパッと晴れやかに笑う。
「良いのか?独占欲を表すようで躊躇っていたのだが。」
「私も人並みにそういった贈り物には憧れますわ。どんな髪型でも付けられるように小さくてシンプルなものが良いです。」
「ポッカの町で私の瞳の色の石が付いたネックレスを見つけたんだ。ライラが薦めてきたんだが、リュルは大きな石は好まないって買わなかったんだが……。流石に女性だな。良く解ってる。」
ライラは本当に私の為に選んだのだろうか?
疑問だが、この際追及しないことにした。

バルは視察中もライラに靡くこと無く、私を一途に想っていてくれたようだ。
ライラの話によると、本当に眼中に無かったらしい。


私がバルを見つめていると
「ん?どうした?」
バルが優しげな声色で尋ねてくれる。
「ふふふ。私とバルとどっちの方が愛情が重いのかな?って考えてたんです。」
「じゃあ、私の方じゃないか?君のファンクラブも、サークルに来る奴らも潰したい。」
「そんな事を思ってたんですか?って、ファンクラブ?」
「まだ知らなかったのか?」
「え、ええ?私の?」
「君の。」
「いつから。」
「随分経つぞ。君の情報はファンクラブの会員に闇取引されていて、ハンナを専属から外して貰った。」
「え?」
「服のサイズから好きな食べ物、良く読む本まで結構細かく知られていたぞ。」
ナニソレ、怖い。 
「大丈夫だ。今はヨシュンがしっかり守ってくれている。」
ハンナは別のお屋敷に移った。そんな事をしていたなんて……。
私の顔色が悪いのに気付くとバルがそっと抱き寄せてくれた。
「悪い。怖がらせてしまった。」
こうしてバルの腕に包まれていると安心出来る。
バルと親しく話をするようになって、私は大切に守られ、何も知らずに過ごしていたのだと知った。


    
次回最終話です。
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