私だけが家族じゃなかったのよ。だから放っておいてください。

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ろく

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  リリィ視点  

 私はアウァールス男爵家の令嬢として生まれ何不自由なく暮らしてきた。私の母は後妻だけれど、前妻の子供であるお姉ちゃんも平等に可愛がってくれている。

 けれどお姉ちゃんは後妻である母に懐かない。気難しいお姉ちゃんはよく母を困らせていた。母は笑って耐えているけど、相当辛いと思う。

 そして、偏屈で人嫌いのお姉ちゃんは家庭教師や使用人をたくさんクビにしていた。

「レオナ、また家庭教師を辞めさせたそうだな。いったい何が気に入らないんだ?言いなさい」 

 父がお姉ちゃんを問い詰めるといつも決まって母がお姉ちゃんを庇う。

「あなた、あまりレオナを責めないであげて。先生と気が合わなかったみたいなの。また私が別の先生を探しますわ」

「そうか……エライザ、君には苦労をかけるな。レオナを頼む。レオナ、あまりお母さんを困らせるなよ?」
            
 お母さんがお姉ちゃんをどんなに苦労をして育てたかなんて、家族はみんな知ってる。
 家族揃っての食事の時もお姉ちゃんは一言も喋らない。そんなお姉ちゃんに話し掛けるのはお母さんだけだった。

 淑女教育も受けていないお姉ちゃんのデビューは、お父さんが許可しなかった。

 お姉ちゃんはずっとこのまま結婚もせずに、実家で我儘放題で生きて行くのだろうか?
 私はお嫁に行っちゃうけど、跡継ぎであるジュードには迷惑だろう。
 私はその事がずっと心配だった。




 お姉ちゃんはお祖母様の家に住むことになり、そしてお祖母様が他界した後、姿を消した。

「探さないで欲しい」

 そう書いた手紙だけを置いて……。
 
 お父さんとお母さんはもちろん、私もジュードもずっとお姉ちゃんを心配していた。 
 あんな我儘な性格で、市囲で働いて暮らしていくなんてきっと無理だ。お姉ちゃんが困り果てて帰ってきたら助けてあげなくちゃ。

 だけど、父の事業が失敗し多額の借金の背負い我が家の生活は一変。お姉ちゃんのことを気にかける余裕は無くなった。

 使用人のお給金も払えなくなり、今までした事の無い家事をしなければならなかった。予想外に訪れた質素な生活。お母さんも慣れない掃除や洗濯、食事の用意にヘトヘトになっていた。

 毎日辛かった。 


 そんなある日、以前使用人として働いていたハンナに会って、お姉ちゃんが王立図書館で働いていることを知った。 
 実家を出て独り暮らししてちゃんと働いている。
 その事を知って私は安心した。  
 
 久しぶりに会った姉は家で見るよりも大人びて堂々として見えた。
 
 男爵家に戻ること勧めるとお姉ちゃんは断固として嫌がった。「勘当して欲しい」「貴族は嫌だ」「縁を切りたい」そればかり。

 少しは家事を分担してくれると、私とお母さんも楽になるのに……。





 
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