ただの雑兵が、年上武士に溺愛された結果。

みどりのおおかみ

文字の大きさ
48 / 70
三章

もう、ゆるして

しおりを挟む
「あ、は、……っもぅ、やめ……っ」
 俺は縋るように、忠頼に手を伸ばし、懇願する。
 すると、忠頼はふいに手を止めて、指を抜いた。
 今までの刺激が、急に無くなる。止めてくれと言ったのは己のはずなのに、俺はその欠乏にひどく焦れている自分に気が付く。
 忠頼はそんな俺の気持ちを知ってか知らずか、こちらを見やり、ふっと微笑む。
「……どうしてほしい?」
 俺を見つめるその目は、蕩けそうなほど熱く、ぎらぎらと欲望に燃えているのに、同時に果てしなく柔らかい。
 俺はくらりとした。俺はただ、本能的に、忠頼に従いたい、と望んでしまう。
「……っ――」
 俺はおずおずと、だが言われたとおりに、自分で足を開いて見せた。
 しかし、忠頼は、すぐには動こうとしない。俺の腿や膝を、優しく撫でながら、俺をただ、見詰めている。
「……っあんま見、んな……っ、」
 忠頼の瞳が、俺の中を暴き、犯す。
 忠頼が俺を見る。それだけで俺は、己の弱いところも、馬鹿なところも、臆病なところも――誰にも見せたくない、恥ずかしいところをすべて、露わにされてしまう気がした。
――なのに、それが、心地良い、なんて。
 俺は羞恥のあまり、身体が沸騰するかのように感じて、顔を背ける。それでも、俺の中の疼きは止まることなく、むしろ激しさを増す。
  忠頼は俺の太腿に手を滑らせながら、問いかける。
「なぜ、見てはいけないんだ?」
 俺は恨めしいような気持ちで、忠頼を、きっと見つめる。
「……こんな……ふうにして……っお前は、意地が、悪い」
「悪いが、それは生まれつきだ」
 忠頼は鼻歌を歌うように、言葉を返す。まるで、この状況を楽しみ、味わっているかのようだ。
 つと、忠頼が手を伸ばした。指先が、再び、俺の後ろに触れて、俺は歓喜の声を漏らす。
 忠頼は、俺のそこを弄ぶように、浅く入れた指を、小さくくちくちと動かす。 
「ふ……っあぅ……っん――」
 忠頼の指が、順に、奥へ入っていく。忠頼の指が、俺の中を擦るように、ひっかくように動く。
「あ」
 特別に気持ちのいいところを刺激され、俺の体が大きく跳ねた。大きな刺激ではないはずなのに、俺の身体はひどく悶え、歓喜に満たされる。
 忠頼に見られている、という意識で、全身がどうしようもないくらい敏感になっていた。襦袢が擦れる感触さえも、深い刺激になる。
――おかしく、なってしまう。
 打ち寄せる快楽の波に、俺はなす術もない。ただ喘ぐしかできず、息をするの辛いほど、感じてしまう。
――欲しい。欲しくて、たまらない。
 俺はうわごとのように、かすれた声で言った。
「……ぅ、ん……なぁ、も……、それ、許して……あぅ……っお願い、だから」
 言葉を発するのさえ辛い。俺は忠頼に向かって手を伸ばした。
「は……お前の、早く。……この奥に、欲しい……」
 俺の中を弄んでいた忠頼の手が、ふと止まる。
 忠頼は、俺の伸ばした手を取り、指の間に指を滑らせてぎゅうと握る。忠頼は俺を見詰めたまま、俺の手の甲に、口づけを落とした。
「――お前は俺を煽るのが、本当に上手い」
 忠頼は、一つ、長い息を吐いた。そのため息が言い終わるや否や、忠頼はぐいと俺の腰を抱き上げ、俺を自分の膝の上に座らせる。同時に、俺の中に、忠頼のものが、ずぶりと入ってくる。
「あぁ……っ⁉」
 待ち望んでいたものを迎え入れられて、思わず歓喜の声が漏れ、全身が震えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。

山法師
BL
 南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。  彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。  そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。 「そーちゃん、キスさせて」  その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

上司と俺のSM関係

雫@不定期更新
BL
タイトルの通りです。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

課長、甘やかさないでください!

鬼塚ベジータ
BL
地方支社に異動してきたのは、元日本代表のプロバレー選手・染谷拓海。だが彼は人を寄せつけず、無愛想で攻撃的な態度をとって孤立していた。 そんな染谷を受け入れたのは、穏やかで面倒見のいい課長・真木千歳だった。 15歳差の不器用なふたりが、職場という日常のなかで少しずつ育んでいく、臆病で真っ直ぐな大人の恋の物語。

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。

丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。 イケメン青年×オッサン。 リクエストをくださった棗様に捧げます! 【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。 楽しいリクエストをありがとうございました! ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。

処理中です...