魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫

文字の大きさ
4 / 38
幼少期

3

しおりを挟む
ベッドの上で目が覚めた俺は、涙を流していた。


なんてかわいそうな俺っ!
今世は幸せな人生を送ろうな!

寝ころんだままひしっと自分の体を抱きしめる。
シルヴァとして生きてきた記憶と、前世の俺が一緒になって、馴染んでいく。
が…シルヴァの記憶はほとんどないな。なんたって5歳だからな。しょうがない。


ひとしきり泣いてからすっきりしたのか涙が急に引っ込んだ。過去のことはもうどうにもならない。大事なのは今だ。そう気持ちを切り替えたところで、グ~っと、俺のお腹が鳴った。
お腹がすいた。生きている証だ。
そっとベッドから足を下ろしてみる。
ふかふかな絨毯がわずかに沈み足裏をくすぐる。
歩ける…
片足を前に出てみる。なんの違和感なく体が動く。
じんわりとこみあげてくる涙を乱暴に拭って窓に一歩一歩歩き出す。
真っ暗な部屋の中わずかに漏れる光を頼りにカーテンを引いて、ぐるりと部屋を見渡す。


わぁお。
おセンチな雰囲気が一瞬にして霧散した。
さっきまで寝ていたベッドは何人用だといいたくなるほど大きいし、上からは天蓋が吊るされている。金箔がいたるところに貼られそれがまた眩しい。
まさに貴族の部屋って感じだ。今までこんな豪華な家に住んでたの?
前世を思い出した今となっては、どこに触るのも恐ろしい。まるで美術館の中で生活しているようだ。この何に使うのかわからない壺なんて割ったら一生かかっても返せない額だろう。



落ち着かない。外国のホテルにでも泊まってるみたいだ。行ったことないけど。


とにかくこの部屋からの脱出が一番の目的だな。そうしたらご飯を食べよう。
今日のご飯はなんだろうな~
そう現実逃避しながら、部屋を出ようとしたとき、視界の隅でチラリと自分の姿が見えた。
そういえば自分の容姿をちゃんと見ていない。
前世は平凡な黒目黒髪の純日本人だった。さて今世の俺のビジュアルは~っと。


イケメンであれ。
祈りを込めて鏡をのぞいてみる。
薄紫色の髪に薄緑の瞳。綺麗ではあるが、全体的にボヤっとしている。
やっぱりここは異世界なんだなぁと改めて感じてしまう。母メリンダの髪は、燃えるような濃い紫だった。父ヴェルデの瞳は宝石みたいなエメラルドグリーン。どちらも受け継がれなかったらしい。残念。

まずまずじゃない?前世を考えればお人形みたいにかわいい。まだ、子供だからフォルムはむちっとしているけどこれからイケメンになるに違いない。



ところで…目覚めてから今まで20分くらい経っているが、人ひとり来ないな。
使用人一人くらいは来てもいいんでない?
噴水に落ちたんだぞ。なんなら医者がいてもいいくらいでは。室内を見渡してみても相変わらず部屋はシーンとしていて、廊下から足音が聞こえることもない。
俺ってば幽閉でもされてんの?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

魔王様の執着から逃れたいっ!

クズねこ
BL
「孤独をわかってくれるのは君だけなんだ、死ぬまで一緒にいようね」 魔王様に執着されて俺の普通の生活は終わりを迎えた。いつからこの魔王城にいるかわからない。ずっと外に出させてもらってないんだよね 俺がいれば魔王様は安心して楽しく生活が送れる。俺さえ我慢すれば大丈夫なんだ‥‥‥でも、自由になりたい 魔王様に縛られず、また自由な生活がしたい。 他の人と話すだけでその人は罰を与えられ、生活も制限される。そんな生活は苦しい。心が壊れそう だから、心が壊れてしまう前に逃げ出さなくてはいけないの でも、最近思うんだよね。魔王様のことあんまり考えてなかったって。 あの頃は、魔王様から逃げ出すことしか考えてなかった。 ずっと、執着されて辛かったのは本当だけど、もう少し魔王様のこと考えられたんじゃないかな? はじめは、魔王様の愛を受け入れられず苦しんでいたユキ。自由を求めてある人の家にお世話になります。 魔王様と離れて自由を手に入れたユキは魔王様のことを思い返し、もう少し魔王様の気持ちをわかってあげればよかったかな? と言う気持ちが湧いてきます。 次に魔王様に会った時、ユキは魔王様の愛を受け入れるのでしょうか?  それとも受け入れずに他の人のところへ行ってしまうのでしょうか? 三角関係が繰り広げる執着BLストーリーをぜひ、お楽しみください。 誰と一緒になって欲しい など思ってくださりましたら、感想で待ってますっ 『面白い』『好きっ』と、思われましたら、♡やお気に入り登録をしていただけると嬉しいですっ 第一章 魔王様の執着から逃れたいっ 連載中❗️ 第二章 自由を求めてお世話になりますっ 第三章 魔王様に見つかりますっ 第四章 ハッピーエンドを目指しますっ 週一更新! 日曜日に更新しますっ!

ループ執愛症候群~初対面のはずなのに、執着MAXで迫られてます~

たぴおか定食
BL
事故で命を落とした高校生は、乙女ゲームの世界に貴族の少年、ルルスとして転生する。 
穏やかな生活を送っていたある日、出会ったのは、宮廷魔導師の息子のノアゼル。 
彼は初対面のはずのルルに涙ながらに言う…「今度こそ、君を守る。」 ノアは、ルルがゲームの矯正力により何度も命を落とす未来を繰り返し経験していた。 
そのたびにルルを救えず、絶望の中で時を遡ることを選び続けた。 「君がいない世界なんて、いらない」 
愛と執着を抱えた少年は、何度でもルルを取り戻す。 これは、転生した能天気なルルと、そんな彼に執着するノアが織りなす、激重タイムリープファンタジー。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

縁結びオメガと不遇のアルファ

くま
BL
お見合い相手に必ず運命の相手が現れ破談になる柊弥生、いつしか縁結びオメガと揶揄されるようになり、山のようなお見合いを押しつけられる弥生、そんな折、中学の同級生で今は有名会社のエリート、藤宮暁アルファが泣きついてきた。何でも、この度結婚することになったオメガ女性の元婚約者の女になって欲しいと。無神経な事を言ってきた暁を一昨日来やがれと追い返すも、なんと、次のお見合い相手はそのアルファ男性だった。

生まれ変わったら俺のことを嫌いなはずの元生徒からの溺愛がとまらない

いいはな
BL
 田舎にある小さな町で魔術を教えている平民のサン。  ひょんなことから貴族の子供に魔術を教えることとなったサンは魔術の天才でありながらも人間味の薄い生徒であるルナに嫌われながらも少しづつ信頼を築いていた。  そんなある日、ルナを狙った暗殺者から身を挺して庇ったサンはそのまま死んでしまうが、目を覚ますと全く違う人物へと生まれ変わっていた。  月日は流れ、15歳となったサンは前世からの夢であった魔術学園へと入学を果たし、そこで国でも随一の魔術師となった元生徒であるルナと再会する。  ルナとは関わらないことを選び、学園生活を謳歌していたサンだったが、次第に人嫌いだと言われていたルナが何故かサンにだけ構ってくるようになりーーー? 魔術の天才だが、受け以外に興味がない攻めと魔術の才能は無いが、人たらしな受けのお話。 ※お話の展開上、一度人が死ぬ描写が含まれます。 ※ハッピーエンドです。 ※基本的に2日に一回のペースで更新予定です。 今連載中の作品が完結したら更新ペースを見直す予定ではありますが、気長に付き合っていただけますと嬉しいです。

ガラスの靴を作ったのは俺ですが、執着されるなんて聞いてません!

或波夏
BL
「探せ!この靴を作った者を!」 *** 日々、大量注文に追われるガラス職人、リヨ。 疲労の末倒れた彼が目を開くと、そこには見知らぬ世界が広がっていた。 彼が転移した世界は《ガラス》がキーアイテムになる『シンデレラ』の世界! リヨは魔女から童話通りの結末に導くため、ガラスの靴を作ってくれと依頼される。 しかし、王子様はなぜかシンデレラではなく、リヨの作ったガラスの靴に夢中になってしまった?! さらにシンデレラも魔女も何やらリヨに特別な感情を抱いていているようで……? 執着系王子様+訳ありシンデレラ+謎だらけの魔女?×夢に真っ直ぐな職人 ガラス職人リヨによって、童話の歯車が狂い出すーー ※素人調べ、知識のためガラス細工描写は現実とは異なる場合があります。あたたかく見守って頂けると嬉しいです🙇‍♀️ ※受けと女性キャラのカップリングはありません。シンデレラも魔女もワケありです ※執着王子様攻めがメインですが、総受け、愛され要素多分に含みます 朝or夜(時間未定)1話更新予定です。 1話が長くなってしまった場合、分割して2話更新する場合もあります。 ♡、お気に入り、しおり、エールありがとうございます!とても励みになっております! 感想も頂けると泣いて喜びます! 第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!

処理中です...