魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫

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幼少期

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「いい加減にしてください!」
部屋に俺の怒声が響いた。

固まる二人を横目に部屋の扉を開き顎で出るように促す。
不敬だって?
いいんだ。これに関しては二人が悪いし、俺の声でリュカの体が動いたのを見たからな。
急がなきゃだろ?
母上も俺に対して引け目があるようで何も言わないし。


廊下を歩きながら母上に話しかける。
人はいないが小声だ。
念のためな。
「母上はずっと別邸に?」

「ええ、少し気になることがあって。お茶会とか、パーティーとか出ずに済む方法あるかなって考えて思いついたってわけ。そうだ、仮病使おうって」
んな、「京都、行こう」のノリで。

「…待ってください。じゃあ、僕に触れたからではないのですか?」

「え、ええ、そうね。少しくらい触れたところで自然回復するし」
きょとんとした顔をする母上にもう一度怒鳴りたくなった。

ああ、そう。俺のせいじゃないのね?
そうですか、そうですか。
ただの仮病。
ああ、そう…
今まで俺が言われた嫌味は何だったわけ?
むかつくわー。
リュカにも使用人にも「お前のせいで」って…そういや、リュカも知らないようだったな。

「兄上にはお会いになっていないのですか?寂しがっておられる様子でしたが」

「そうね、私も会いたかったのだけれど…原作が…いえ、なんでもないわ」

ん?今、原作って言ったか?
言ったよな。確実に。
思わず母上を凝視してしまった。

いやいや、待て。
原作ってことはだ。
この世界がゲームか、漫画とかの世界の可能性が高いってことだよな。

前に考えたじゃないか。俺以外にもいるかもって。
母上も…転生者なのか?



「さ、ここを通ればもうすぐよ」

おお、こんなところに抜け道が。
って、厨房から行けんの?うわぁ、盲点だったわ。
そうだよな。食材を運び入れるために外につながってるよな。


久しぶりの外だ。やっぱ、外の空気は違うわ。
深呼吸をすると花のいい香りが鼻腔をくすぐった。
伯爵の命令なんか無視して外出ればよかったなぁ。


色とりどりの花のアーチをくぐり生垣の上にちょこんと飛び出た屋根が見えた。

「あそこよ」
近っ!こんな近くにいたのかよ。
伯爵邸から徒歩5分の距離だぞ。

伯爵邸のほかに別邸まであるなんて、伯爵家にしてはお金持ちだよな。
比べる家がないからよくわかんないけど。


土を踏みしめながら考えるのは先ほどのことだ。

転生者。
俺と同じ…かもしれない。

「別邸には母上とステラの二人で?」

「ええ、そうよ。気楽な二人暮らし」

「…なら、僕もそっちに住んでもいいですか?」

「え?」

「母上との方が暮らしやすそうですし」

案外本当に移り住んでもいいかもしれない。
伯爵や使用人にぐちぐち言われることもないし、ご飯だって自由に作れる。
ステラは俺に悪感情を持っていなそうだし、外に出ることを制限されることだってない。
最高では?

「えっとでも…強制力が…いえ、言ってもわからないわね」
困ったような顔で笑う母上に俺も笑いそうになる。

これは確定だな。
一緒に住んでポロっと言ってくれないかなぁと思ったけど案外すぐポロってくれたな。


「すみません。まずは話すのが先ですよね」
この世界についてね。

いや~楽しみだなぁ。この世界がゲームや漫画の中だとして、俺ってどのポジションなんだろう。
結構重要なキャラクターだったりして。
ほら、主人公とかって幼少期にいじめられたり、魔法が自分だけ使えなかったり…

あれ、考えれば考えるほど俺って主人公じゃね?
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