侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。

二位関りをん

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第26話 アンナ視点②

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 私は今、新たなクルーディアスキー男爵家の屋敷となった古びた洋館の一角にある部屋で過ごしている。

「はあ……退屈だわ」

 私はあのお披露目の後、クルーディアスキー男爵家の屋敷に強制送還させられ謹慎処分となった。ウィルソン様からも引き離されてこのざま。はあ、なんで……。
 しかもレアード様は私をクルーディアスキー男爵家から勘当させて平民とさせるつもりだった。私がクルーディアスキー男爵家から籍を抜かれて平民となるなんてとても困る。嫌よ、平民の暮らしだなんて。
 高級娼婦や商人の娘の中には貴族令嬢とさほど変わらない贅沢な暮らしをしている子だっているそうだけど、平民なのには変わりはない。私は貴族令嬢でいたいの。

「お願いします! なんでもしますからかわいい娘の勘当だけは……!」

 と、まあお父様とお母様が頭を下げたのでレアード様は勘当を取り下げてくれた。これはとてもありがたかった。
 しかしその代わりにクルーディアスキー男爵の領地は国境近くの辺境地に領地替えとなった。

「え、そんなに遠い場所になるのぅ?」

 新たな領地として提示されたのは辺境地だった。勿論王宮やフローディアス侯爵家の領地よりもはるかに遠い。

「嫌よ! もっと良い場所あるでしょ!」

 私は納得いかなくて抗議した。けどレアード様からはこの処分と私が平民になるのと2択だというのを突き付けられた。更に抵抗するようならお父様の爵位を奪うとまで言われたのだ。
 もしお父様の爵位が奪われたら私達皆平民になってしまう。そうなったら暮らしが立ちいかなくなっちゃう!

「わかりました、領地替えを受け入れます……」
「お父様?!」
「我慢してくれアンナ! お父さんは家族を手放したくないんだ!」
(そうよね、この処分だと引っ越すだけだから……)

 私達は結局この領地替えを渋々受け入れる事になった。領地替えが決まってからは本当にてんやわんやでウィルソン様や他の友人の伯爵の人達とは会えずに黙々と作業を任される羽目になった。

「アンナ、手伝って……!」
「そんな、お母様……メイドにやらせたらいいじゃないのぅ」

 重い荷物なんて運びたくないし運べない。荷造りなんてよくわかんないから適当でいいじゃない。とにかく大変だった。
 新たな領地に向かうまでも本当に地獄の日々だった。道中、盗賊に襲われそうになった時は本当に死ぬかと思ったわ。その時は私のお気に入りだった真珠とルビーのネックレスを盗賊共に差し出す羽目になったし、今でも本当にムカつく。
 死ぬ思いでたどり着いた新たな領地。私達は古びた洋館に住む事になったからこれも納得いかなかった。やって来た当初は蜘蛛の巣だらけでねずみもゴキブリもいて本当に汚かった。それを嫌な掃除で何とか綺麗にして、大工さんにお願い♡ と頼み込んで修繕してもらったりした。で、今ここにいるって訳。

(はあ……ウィルソン様に会いたいし、伯爵の人達にも会いたい。人肌恋しい……)

 ここに来てからは娯楽らしいものもなくて本当に暇。謹慎処分だから屋敷から一歩も出歩けないし、王宮から来て一緒に引っ越してきた見張りの兵達がいつも私の部屋の前にいる。それに窓の向こう側にもいる。だから脱走できない。

「ああーー! むしゃくしゃする!」
 
 胸の中にくすぶっていた気持ち悪いものを取り除きたくて、思わず叫んだ。するとしばらくして部屋に見張りの兵士が入って来る。

「謹慎処分が解けるまでそこでじっとしていてください」

 見張りの兵士は30代の男。顔はまあまあ良いし体格も良い。冷たくてムカつく性格じゃなければ抱かれたいと思ってたけど。
 いや、待てよ? 部屋に招き入れるくらいならいいんじゃないの? 私を絶えず見張れるんだから見張りの意義はちゃんと果たしている。

「ねえ、ちょっと!」
「なんですかぁ?」
「ちょっと私の部屋で遊ばない?」

 私は部屋の外に出ていこうとする彼を呼び止めて誘った。ムカつく言い方な割に身体はよさそうなんだから、満足するまで付き合ってもらうわよ?
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