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第11話 早速の危機
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「はい、美雪です!」
彼女達はいずれも30代から40代くらい。顔は引きつっており穏やかさは全く読み取れない。
自分は確実に歓迎されていない。そう直感が働く。
「あなたの事、朝日様から聞いたわよ」
美雪から見て右側の椅子に座り、本を読んでいた薬師が椅子から立ち上がって近づいてきた。黒い髪を桃色の布でお団子に束ねた姿は、ほつれ毛が一切ない。朱色の瞳は鋭く、優しさは見受けられない。
「とりあえず……今日から仕事をしてもらう事になる。よろしく」
「はい、よろしくお願いします」
「私は朱美よ。そこにいるのが零染と魯照」
藍色の髪と目の色をした零染と、茶色い髪と目を持つ魯照にも美雪は頭を下げて丁寧に挨拶をした。しかし彼女達はぺこりと会釈をし、挨拶を返してくれたが、声は小さい。
(……何かしたんですかね、私……仕事、頑張らないと)
「美雪さん。早速だけど、まずはこの薬を暁華殿内にある調理場まで持っていってほしいの」
差し出されたのは、薄い紙に包まれた黒い丸薬が3つ。
聞けば、姜皇后が朝食時にいつも飲んでいる薬らしく、血のめぐりを良くさせたり、腎の効能にも優れた漢方薬を混ぜたものと言う事だった。
「かしこまりました。届けに行ってまいります」
「お願いね……」
朱美は後ろにいる2人の方へと振り返った。彼女達は未だに美雪へきつい視線を投げかけてはいるが眉は八の字に垂れ下がっている。眉だけ見れば悲しみなどが籠っているようにも感じられた。
これはおかしい。美雪の脳が直感する。
「……お届けするお薬は、これで合っていますでしょうか?」
「……っ」
朱美の動きが硬くなった。彼女の反応は、美雪にとって更に怪しさを際立たせるもの。
「朱美さん、様子がおかしいように見えますが、その……何かございましたか?」
朱美の目の視点がぶれ始める。それは奥にいた2人も同じだった。朱美は歯を食いしばるような表情を見せたのち、ごめんなさい! と突如目の前で土下座する。
それと同時に皇后付きである事を示す紫色の衣服を身にまとった中年くらいの宮女が駆け込んできた。
「ちょっと! もう皇后様の朝食のお時間よ! 薬はどこ?!」
ちらりと朱美を見てみると、彼女の顔色は一気に青白くなっていった。
「もっ、申し訳ございません!」
「用意できていないの?! 一体何をしていたのよぅ!」
(私に渡したのは別の薬……本物は用意できていないって事ですね)
「私がご用意いたします!」
え。と先輩薬師達と宮女がほぼ同時に美雪の方へ驚きの目を向けた。
「確か、血のめぐりを良くさせるのと、腎関係の薬ですよね? 早く調合しないと皇后様が……!」
焦りの感情が全身を駆け巡っていった瞬間、美雪の脳内に雷鳴がとどろいたような衝撃がもたらされる。と、同時に薬の配合を示す書が開かれた光景が、美雪の脳内を占拠した。
(思い出した! これがそう、配合書、確かこの部屋の右奥に……! あった!)
再び掘り起こされた記憶を頼りに配合書を取り出した後は、姜皇后に処方された薬を探す。美雪の手には汗が流れ落ち、振戦もほんの少し生じているほど。しかし彼女の意識は周囲の雑音を全てかき消す位に集中力にあふれていた。
彼女達はいずれも30代から40代くらい。顔は引きつっており穏やかさは全く読み取れない。
自分は確実に歓迎されていない。そう直感が働く。
「あなたの事、朝日様から聞いたわよ」
美雪から見て右側の椅子に座り、本を読んでいた薬師が椅子から立ち上がって近づいてきた。黒い髪を桃色の布でお団子に束ねた姿は、ほつれ毛が一切ない。朱色の瞳は鋭く、優しさは見受けられない。
「とりあえず……今日から仕事をしてもらう事になる。よろしく」
「はい、よろしくお願いします」
「私は朱美よ。そこにいるのが零染と魯照」
藍色の髪と目の色をした零染と、茶色い髪と目を持つ魯照にも美雪は頭を下げて丁寧に挨拶をした。しかし彼女達はぺこりと会釈をし、挨拶を返してくれたが、声は小さい。
(……何かしたんですかね、私……仕事、頑張らないと)
「美雪さん。早速だけど、まずはこの薬を暁華殿内にある調理場まで持っていってほしいの」
差し出されたのは、薄い紙に包まれた黒い丸薬が3つ。
聞けば、姜皇后が朝食時にいつも飲んでいる薬らしく、血のめぐりを良くさせたり、腎の効能にも優れた漢方薬を混ぜたものと言う事だった。
「かしこまりました。届けに行ってまいります」
「お願いね……」
朱美は後ろにいる2人の方へと振り返った。彼女達は未だに美雪へきつい視線を投げかけてはいるが眉は八の字に垂れ下がっている。眉だけ見れば悲しみなどが籠っているようにも感じられた。
これはおかしい。美雪の脳が直感する。
「……お届けするお薬は、これで合っていますでしょうか?」
「……っ」
朱美の動きが硬くなった。彼女の反応は、美雪にとって更に怪しさを際立たせるもの。
「朱美さん、様子がおかしいように見えますが、その……何かございましたか?」
朱美の目の視点がぶれ始める。それは奥にいた2人も同じだった。朱美は歯を食いしばるような表情を見せたのち、ごめんなさい! と突如目の前で土下座する。
それと同時に皇后付きである事を示す紫色の衣服を身にまとった中年くらいの宮女が駆け込んできた。
「ちょっと! もう皇后様の朝食のお時間よ! 薬はどこ?!」
ちらりと朱美を見てみると、彼女の顔色は一気に青白くなっていった。
「もっ、申し訳ございません!」
「用意できていないの?! 一体何をしていたのよぅ!」
(私に渡したのは別の薬……本物は用意できていないって事ですね)
「私がご用意いたします!」
え。と先輩薬師達と宮女がほぼ同時に美雪の方へ驚きの目を向けた。
「確か、血のめぐりを良くさせるのと、腎関係の薬ですよね? 早く調合しないと皇后様が……!」
焦りの感情が全身を駆け巡っていった瞬間、美雪の脳内に雷鳴がとどろいたような衝撃がもたらされる。と、同時に薬の配合を示す書が開かれた光景が、美雪の脳内を占拠した。
(思い出した! これがそう、配合書、確かこの部屋の右奥に……! あった!)
再び掘り起こされた記憶を頼りに配合書を取り出した後は、姜皇后に処方された薬を探す。美雪の手には汗が流れ落ち、振戦もほんの少し生じているほど。しかし彼女の意識は周囲の雑音を全てかき消す位に集中力にあふれていた。
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