後宮浄魔伝~視える皇帝と浄魔の妃~

二位関りをん

文字の大きさ
4 / 79

第4話 話

しおりを挟む
「どけ! どくんだ!」

 桃玉の後ろから役人達が野次馬を押しのけるようにしてやってきた。桃玉は遺体と役人達を交互に見ながら口をぱくぱくと開ける事しかできないでいる。

「はあ、心臓がえぐり取られているな……おい、この遺体を搬送するぞ」

 役人の1人が指示をすると、彼が付き従えていた部下が持っていた簡易担架をばさっと広げ、その上に遺体を乗せるとあっという間に野次馬をかき分けてどこかへと消えていく。
 桃玉は彼らが向かって行った方向をじっと見つめていた。

「桃玉ちゃん……どうなるんでしょうねえ……」
「そうだね、おばさん……」
「あやかしがまた来てしまったのか……怖いよ」

 桃玉のおじはぼそりと漏らす。その声を桃玉はしっかりと聞いていた。

「おじさん……」

 しかし、なんて声をかけたらいいのか桃玉にはわからなかったのだった。

「桃玉ちゃん、心配かい?」

 おじからの言葉に桃玉は眉を八の字に下げながらこくりと頷く。

「うん、少し……」
「そうだよなあ、俺も心配だよ。まだ死ぬわけにはいかないからねえ」

 桃玉達は静かに野次馬から離れ、ゆっくりとした足取りで帰宅していった。
 
◇ ◇ ◇

 心臓をくりぬかれた男の遺体が見つかって3日後の午後。桃玉は食卓でおばとゆっくりお茶を飲んでいた時の事。

「失礼する。ちょっと時間良いか?」

 家に突如役人とその部下が訪れた。背が高く若い役人がつかつかと入って来る様子に桃玉はぎょっと目を丸くさせて、驚きの表情を浮かべながらも席を立ち彼らの前に向かう。

「あの、何か御用でしょうか?」
「また心臓をくりぬかれた村人の遺体があがってな。夜間は出歩かないようにと注意喚起をして出回っている所だ」

 役人曰く、今回の被害者は今家に来ている役人の侍女で桃玉のおじと同年代にあたる女性だと言う。

「わかりました。気を付けます」
「ああ、頼むよ」

 役人はややぶっきらぼうに言い残して家から去っていく。

「桃玉ちゃん、怖いですねえ……」
「ええ……また同じような手口だなんて……」

 お茶をずずっと飲む桃玉の胸の中には、恐怖と両親を失った事に対する悲しみと犯人へのどうにもならない怒りが混ざり合って黒い靄を形成していたのだった。
 夕方。桃玉のおじがにこにこと笑顔を浮かべながら市場で売れ残った野菜と今日の売上金を持って帰宅してきたので、桃玉は早速作っておいた夕食を温め始める。

「今日も結構売れたんだねえ、おじさん」
「ああ、葉野菜がすんごい売れてるよ」

 はあ、とおじが椅子に座りながら首に巻いた手拭いで顔から滴り落ちる汗をぬぐっていると、家に村長と僧侶に老人があいさつもなしにぞろぞろと列をなして入って来た。白髪頭にしわだらけの顔とやや腰が曲がった容姿をしている村長は灰色の瞳を桃玉に向ける。
 まるで品定めするかの目つきに、桃玉は思わず形容しがたい恐れを抱いた。

「君が李桃玉かな? 話があるからついてくるように」
「そ、村長……?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

『後宮薬師は名を持たない』

由香
キャラ文芸
後宮で怪異を診る薬師・玉玲は、母が禁薬により処刑された過去を持つ。 帝と皇子に迫る“鬼”の気配、母の遺した禁薬、鬼神の青年・玄曜との出会い。 救いと犠牲の狭間で、玉玲は母が選ばなかった選択を重ねていく。 後宮が燃え、名を失ってもなお―― 彼女は薬師として、人として、生きる道を選ぶ。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

男装官吏と花散る後宮〜禹国謎解き物語〜

春日あざみ
キャラ文芸
<第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。応援ありがとうございました!> 宮廷で史書編纂事業が立ち上がると聞き、居ても立ってもいられなくなった歴史オタクの柳羅刹(りゅうらせつ)。男と偽り官吏登用試験、科挙を受験し、見事第一等の成績で官吏となった彼女だったが。珍妙な仮面の貴人、雲嵐に女であることがバレてしまう。皇帝の食客であるという彼は、羅刹の秘密を守る代わり、後宮の悪霊によるとされる妃嬪の連続不審死事件の調査を命じる。 しかたなく羅刹は、悪霊について調べ始めるが——? 「歴女×仮面の貴人(奇人?)」が紡ぐ、中華風世界を舞台にしたミステリ開幕!

家族から邪魔者扱いされた私が契約婚した宰相閣下、実は完璧すぎるスパダリでした。仕事も家事も甘やかしも全部こなしてきます

さら
恋愛
家族から「邪魔者」扱いされ、行き場を失った伯爵令嬢レイナ。 望まぬ結婚から逃げ出したはずの彼女が出会ったのは――冷徹無比と恐れられる宰相閣下アルベルト。 「契約でいい。君を妻として迎える」 そう告げられ始まった仮初めの結婚生活。 けれど、彼は噂とはまるで違っていた。 政務を完璧にこなし、家事も器用に手伝い、そして――妻をとことん甘やかす完璧なスパダリだったのだ。 「君はもう“邪魔者”ではない。私の誇りだ」 契約から始まった関係は、やがて真実の絆へ。 陰謀や噂に立ち向かいながら、互いを支え合う二人は、次第に心から惹かれ合っていく。 これは、冷徹宰相×追放令嬢の“契約婚”からはじまる、甘々すぎる愛の物語。 指輪に誓う未来は――永遠の「夫婦」。

処理中です...