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第47話 行方不明の女官
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「何!?」
「桃玉様、見てまいります……!」
3人の女官が声がした方へと走っていった。糸が張り詰めるような緊迫した空気が流れる。
「桃玉様。照天宮で女官が行方不明になったようで。その女官がいた部屋に血痕が残されていた事から騒ぎになっていたようでございます」
「そうだったの……誰か呼びました?」
「宦官を」
「念の為私も見に行きます……!」
(何があったか、この目で確かめておきたい)
女官の案内を受け、現場である行方不明の女官の部屋に入る。部屋の床には血痕が満開の赤い牡丹の花のように広がっていた。
「……!」
(うわ、思ったよりも量が多い……まさか殺人事件?)
「あの、どうしてこのような経緯になったか教えてくださいませんか?」
桃玉は近くでかたかたと肩を震わせていた女官へ問う。
「あの子、昨日の夜からの夜勤で……今日は休みの日だと聞いていたのですが、姿を見せないなってなって……」
(それで様子を見に来たらこうなってたって事ね)
すると部屋に宦官達がぞろぞろとやってくる。血痕を見ながら驚きの表情を見せる宦官達に、桃玉は声を掛ける。
「あの、この部屋を調べてください。もしかしたら事件かもしれない……!」
「わかりました。今からお調べします……!」
(まずは宦官に任せよう……)
宦官にあとはお願いします。と告げ、自室に戻る桃玉。
その最中、一連の騒ぎを物陰に隠れながら見ていた人物がいた。白い長髪をしたあの宦官である。
「……調べても無駄ですよ。まあ、好きなだけ調べると良いでしょう。その方が助かると言うもの」
◇ ◇ ◇
女官行方不明の話は一気に宮廷中へと広まった。基本華龍国の女官は一度職に就けば宮廷から出る事は二度とないという背景が、大騒ぎになっている理由であろう。
行方不明になった女官の名は梓晴。29歳の女官で、後宮で働き始めてから15年は経過している人物だった。桃玉とは別の妃付きの女官で地味な存在だったが、穏やかで思いやりのある性格から先輩後輩から慕われていたという。
勿論梓晴が行方をくらました話は龍環や皇太后らの耳にも入っていた。
「今、調査を行っているのだな?」
龍環からの問いに、重臣ははい。とうやうやしく返事をする。
「早急に調査を進めよ。疑わしい人物がいればすぐに俺の前へと差し出せ」
「かしこまりました、陛下」
龍環からの命を受けた重臣・宦官達はすぐさま梓晴の捜索に乗り出し、後宮にいる女官や下女にも捜索に加わるようにと命令が下された。あわただしくなった後宮で、桃玉は一抹の不安感を抱きながら、いつものように佳淑妃の元で稽古に励む。
「……」
梓晴の事が気になるのを胸に秘め、無言で稽古に励む桃玉ら参加者達を、佳淑妃は複雑そうな目で見ていた。
「よし、今日は早めに稽古を終えよう」
「佳淑妃様?」
「……梓晴の件だ。私達も出来るだけ捜索に協力してほしいと皇帝陛下からの命があるのだから、それを果たさなければならない。それに貴女達の精神は稽古所ではないだろうと思ってな」
(見抜いていたって事ね……)
「佳淑妃様、申し訳ありません」
桃玉の謝罪に、佳淑妃はなぜ謝る? と声に出した。
「皇帝陛下直々に出来るだけ捜索に参加するよう命令が出ているのだ。貴女は悪くない」
「……っ、すみません……」
「気を使わせてしまい、こちらこそすまないな。皆、今日はこれで解散だ。そして時間がある者は梓晴の捜索に参加するように」
「はい!」
稽古が終わり、一旦自室に戻って着替えた桃玉。女官にあれから梓晴の捜索はどうなっているのかを尋ねると進展はありませんね……。という答えが返って来る。
「とりあえず、最後に梓晴の姿が見られたのはいつなんでしょう?」
「ああ、それは……彼女と共に夜勤を勤めていた女官に聞いてまいります。もしかしたら今、取り調べが行われている最中かもしれませんが」
「お願いします。取り調べが行われているなら、私も同席させてください。と伝えてください」
「かしこまりました。桃玉様」
その後。取り調べがはじまり、龍環も後宮に来たという情報が女官からもたらされたため、桃玉は女官達を引き連れて取り調べが行われている現場へと向かった。
「皇帝陛下。桃玉でございます」
「ああ、君も来てくれたか。今分かっている事を話そう」
「お願いします」
取り調べで判明した事をまとめると、梓晴は照天宮にいる九嬪の1つ、修媛の妃付きの女官で事件が起こる前は夜勤を勤めていた。修媛の妃が架子床の上で眠りについた後、梓晴は妃が起床時に水分補給を取る用にお茶を用意すべく茶葉を取りに厨房へと向かった……。というのが最後の目撃情報だった。
なお、梓晴は聴力低下とめまいを起こす持病があり、めまいの発作が起きると勤務中でも自室に戻って休む事がたびたびあったという。妃も彼女の持病には理解を示している事から、途中で職務放棄して自室へと戻る行為を糾弾される事は無かったのである。
ちなみに梓晴が姿を消した後、妃はお茶ではなく白湯を所望したので、茶葉を必要とはしなかったのだった。
「桃玉様、見てまいります……!」
3人の女官が声がした方へと走っていった。糸が張り詰めるような緊迫した空気が流れる。
「桃玉様。照天宮で女官が行方不明になったようで。その女官がいた部屋に血痕が残されていた事から騒ぎになっていたようでございます」
「そうだったの……誰か呼びました?」
「宦官を」
「念の為私も見に行きます……!」
(何があったか、この目で確かめておきたい)
女官の案内を受け、現場である行方不明の女官の部屋に入る。部屋の床には血痕が満開の赤い牡丹の花のように広がっていた。
「……!」
(うわ、思ったよりも量が多い……まさか殺人事件?)
「あの、どうしてこのような経緯になったか教えてくださいませんか?」
桃玉は近くでかたかたと肩を震わせていた女官へ問う。
「あの子、昨日の夜からの夜勤で……今日は休みの日だと聞いていたのですが、姿を見せないなってなって……」
(それで様子を見に来たらこうなってたって事ね)
すると部屋に宦官達がぞろぞろとやってくる。血痕を見ながら驚きの表情を見せる宦官達に、桃玉は声を掛ける。
「あの、この部屋を調べてください。もしかしたら事件かもしれない……!」
「わかりました。今からお調べします……!」
(まずは宦官に任せよう……)
宦官にあとはお願いします。と告げ、自室に戻る桃玉。
その最中、一連の騒ぎを物陰に隠れながら見ていた人物がいた。白い長髪をしたあの宦官である。
「……調べても無駄ですよ。まあ、好きなだけ調べると良いでしょう。その方が助かると言うもの」
◇ ◇ ◇
女官行方不明の話は一気に宮廷中へと広まった。基本華龍国の女官は一度職に就けば宮廷から出る事は二度とないという背景が、大騒ぎになっている理由であろう。
行方不明になった女官の名は梓晴。29歳の女官で、後宮で働き始めてから15年は経過している人物だった。桃玉とは別の妃付きの女官で地味な存在だったが、穏やかで思いやりのある性格から先輩後輩から慕われていたという。
勿論梓晴が行方をくらました話は龍環や皇太后らの耳にも入っていた。
「今、調査を行っているのだな?」
龍環からの問いに、重臣ははい。とうやうやしく返事をする。
「早急に調査を進めよ。疑わしい人物がいればすぐに俺の前へと差し出せ」
「かしこまりました、陛下」
龍環からの命を受けた重臣・宦官達はすぐさま梓晴の捜索に乗り出し、後宮にいる女官や下女にも捜索に加わるようにと命令が下された。あわただしくなった後宮で、桃玉は一抹の不安感を抱きながら、いつものように佳淑妃の元で稽古に励む。
「……」
梓晴の事が気になるのを胸に秘め、無言で稽古に励む桃玉ら参加者達を、佳淑妃は複雑そうな目で見ていた。
「よし、今日は早めに稽古を終えよう」
「佳淑妃様?」
「……梓晴の件だ。私達も出来るだけ捜索に協力してほしいと皇帝陛下からの命があるのだから、それを果たさなければならない。それに貴女達の精神は稽古所ではないだろうと思ってな」
(見抜いていたって事ね……)
「佳淑妃様、申し訳ありません」
桃玉の謝罪に、佳淑妃はなぜ謝る? と声に出した。
「皇帝陛下直々に出来るだけ捜索に参加するよう命令が出ているのだ。貴女は悪くない」
「……っ、すみません……」
「気を使わせてしまい、こちらこそすまないな。皆、今日はこれで解散だ。そして時間がある者は梓晴の捜索に参加するように」
「はい!」
稽古が終わり、一旦自室に戻って着替えた桃玉。女官にあれから梓晴の捜索はどうなっているのかを尋ねると進展はありませんね……。という答えが返って来る。
「とりあえず、最後に梓晴の姿が見られたのはいつなんでしょう?」
「ああ、それは……彼女と共に夜勤を勤めていた女官に聞いてまいります。もしかしたら今、取り調べが行われている最中かもしれませんが」
「お願いします。取り調べが行われているなら、私も同席させてください。と伝えてください」
「かしこまりました。桃玉様」
その後。取り調べがはじまり、龍環も後宮に来たという情報が女官からもたらされたため、桃玉は女官達を引き連れて取り調べが行われている現場へと向かった。
「皇帝陛下。桃玉でございます」
「ああ、君も来てくれたか。今分かっている事を話そう」
「お願いします」
取り調べで判明した事をまとめると、梓晴は照天宮にいる九嬪の1つ、修媛の妃付きの女官で事件が起こる前は夜勤を勤めていた。修媛の妃が架子床の上で眠りについた後、梓晴は妃が起床時に水分補給を取る用にお茶を用意すべく茶葉を取りに厨房へと向かった……。というのが最後の目撃情報だった。
なお、梓晴は聴力低下とめまいを起こす持病があり、めまいの発作が起きると勤務中でも自室に戻って休む事がたびたびあったという。妃も彼女の持病には理解を示している事から、途中で職務放棄して自室へと戻る行為を糾弾される事は無かったのである。
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