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第64話 仙女の話
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「言葉通りの意味じゃ。ワシもそなたの母親も同じ仙女であるという事よ」
「え、仙女ですか……?」
「ほれ、試してみるかの。ちょっと痛いがすぐに治るから我慢するのじゃ」
桃婆は言うや否や右手に包丁を持つと一瞬にして桃玉の右腕を切り裂いた。
「ぐっ……!」
(痛い!)
切られた右腕からは鮮血が流れる。桃婆は手加減していたのか傷は浅めだがそれでも痛いのに変わりはない。
「ほれ」
桃婆は自身が包丁で切りつけた傷に手を当てる。すると傷はみるみるうちにふさがっていき、血も消えていった。
「え……あ、お母さんがやってたのと同じ……」
「そう言う事じゃよ。理解してくれたかの?」
(お母さんと全く同じ事が出来るっていうのは……そう言う事なのね)
「はい、理解出来ました……」
「よし、これで傷は全てふさがった。痛くはないかの?」
「はい。もう大丈夫です」
桃婆が念入りに桃玉の腕に傷が残っていないかを確認する。
(優しい方なんだな……)
「む、これで大丈夫じゃ。仙女というのがどういう事か分かったのならまずは夕食じゃ。腹が減ってはなんとやらじゃからの」
「は、はい……!」
「ちなみに玉琳も仙女の子じゃ」
「え?」
桃婆によるいきなりの情報開示に桃玉は思わず炊き立ての炊き込みご飯が入ったお茶碗を落としそうになった。
「えっと、美琳さんのお子さんじゃないのですか?」
「あの子が拾ってきたんじゃよ。最初はびっくりしたもんじゃ」
(そ、そうなんだ……)
「まあ、後でゆっくり話すとするかの」
円卓にお膳や箸などを並べ終えると夕食の時間となる。いただきます。と挨拶をしてから桃玉はお茶をごくりと飲んだ。
(これ、後宮でも飲んだ事あるかも)
「あの……桃婆さんは普段何をされてらっしゃるんですか?」
「ああ、それはの……」
「桃婆はねぇ、珍しいもの売ってたりするの。万病に効く薬とかね――」
「玉琳ちゃんそうなの?」
玉林はうん! と自慢げに返事をした。
桃婆は仙女の力を使って丸薬を売ったり希少な食材を売ったりしているという。その食材や薬の殆どは役人や重臣の者達が高値で買い付ける為、庶民に似合わぬ豊かな暮らしに繋がっているのだった。
「ちなみに美琳の夫は今は兵士として北方で任務についておる」
「そうなのですか?」
「ああ、そうなんだよ。まあ、たまに休暇で戻って来る時があるからずっと離れ離れって事もないんだけどね」
にかっと笑う美琳。桃玉は寂しくはないのですか? と質問する。
「あたしはさみしい――」
「まあ、玉琳はそうなるよなあ。私も寂しくないと言えばうそになるねえ。でも今の代の皇帝陛下になってからは戦も減ったからそこは安心材料かな。先代はひどいもんだったから」
(ここで龍環様の評判を聞けるとは思わなかった)
試しに桃玉は美琳に龍環についてどう考えているかを質問してみた。
「若いけど良い皇帝陛下だと思うよ。戦ばっかりじゃなくて内政重視っていうの? なんかそういうのよく考えてくれてるのはとても良い事だと思う」
「なるほど、そうお考えになるのですね」
「桃玉さんはどう思うの」
「私は……」
龍環の穏やかな笑みが桃玉の脳裏によぎった瞬間、桃玉の頬が紅潮する。
(なんだろ、この気持ち……ああ、私やっぱり龍環様の事が好き、というか……一緒にいたいんだ……)
「桃玉どしたの――?」
「あ、玉琳ちゃん! ごめんねなんでもないよ!」
「だって桃玉、悲しそうな顔をしてたから」
どうやら玉琳は彼女なりに桃玉を心配していたようである。桃玉は顔を小さく左右に振った。
「とても良い皇帝陛下だと思います」
「やっぱりそうかい。市場では皇帝陛下に一目会いたくて下女でもいいから後宮入りしたいって言う子もいるくらいだからねえ」
(人気者なんだ。そりゃあそうだよねえ……)
夕食の1つである牛肉と野菜の炒め物を食べていると、桃婆が仙女について話すとするかの。と切り出した。
「桃婆さん、仙女の話を桃玉さんにも聞かせるのかい?」
「ああ、そうだよ。実はさっきちょっとだけ話していたのじゃ」
「そうなんだ。じゃあ私も耳を傾けるとするかねえ」
「美琳さんは仙女についてご存じなのですか?」
「勿論さ」
まるで当たり前のように答えながらばくっと勢いよく岩ガキの煮つけを口の中に放り込む美琳を、桃玉は驚きながら見つめていた。
「私は仙女である桃婆に拾われて育った身だから仙女の事についてはよくわかっているつもりだよ。玉琳もいる事だしね」
(すごい自信だ……)
「ほほ……自信があるようで何よりじゃ。とまあ、美琳は3歳の時にワシが拾ったんじゃ。その頃から勝ち気なのは変わらんのう。ではちょっと昔話でもするかのう」
桃婆は物心ついた時から山奥に籠り修行をしながら1人で生きてきた。両親に関する事はほとんど覚えていないのだと言う。長きにわたり1人で暮らしていた桃婆だったが今から約30年くらい前に事件は起こる。
「すぐ近くで大きな戦があってなあ。ワシの家に傷ついた兵士が迷い込んできたんじゃよ。ありゃあ今思い出してもびっくりしてしまうわい」
「え、仙女ですか……?」
「ほれ、試してみるかの。ちょっと痛いがすぐに治るから我慢するのじゃ」
桃婆は言うや否や右手に包丁を持つと一瞬にして桃玉の右腕を切り裂いた。
「ぐっ……!」
(痛い!)
切られた右腕からは鮮血が流れる。桃婆は手加減していたのか傷は浅めだがそれでも痛いのに変わりはない。
「ほれ」
桃婆は自身が包丁で切りつけた傷に手を当てる。すると傷はみるみるうちにふさがっていき、血も消えていった。
「え……あ、お母さんがやってたのと同じ……」
「そう言う事じゃよ。理解してくれたかの?」
(お母さんと全く同じ事が出来るっていうのは……そう言う事なのね)
「はい、理解出来ました……」
「よし、これで傷は全てふさがった。痛くはないかの?」
「はい。もう大丈夫です」
桃婆が念入りに桃玉の腕に傷が残っていないかを確認する。
(優しい方なんだな……)
「む、これで大丈夫じゃ。仙女というのがどういう事か分かったのならまずは夕食じゃ。腹が減ってはなんとやらじゃからの」
「は、はい……!」
「ちなみに玉琳も仙女の子じゃ」
「え?」
桃婆によるいきなりの情報開示に桃玉は思わず炊き立ての炊き込みご飯が入ったお茶碗を落としそうになった。
「えっと、美琳さんのお子さんじゃないのですか?」
「あの子が拾ってきたんじゃよ。最初はびっくりしたもんじゃ」
(そ、そうなんだ……)
「まあ、後でゆっくり話すとするかの」
円卓にお膳や箸などを並べ終えると夕食の時間となる。いただきます。と挨拶をしてから桃玉はお茶をごくりと飲んだ。
(これ、後宮でも飲んだ事あるかも)
「あの……桃婆さんは普段何をされてらっしゃるんですか?」
「ああ、それはの……」
「桃婆はねぇ、珍しいもの売ってたりするの。万病に効く薬とかね――」
「玉琳ちゃんそうなの?」
玉林はうん! と自慢げに返事をした。
桃婆は仙女の力を使って丸薬を売ったり希少な食材を売ったりしているという。その食材や薬の殆どは役人や重臣の者達が高値で買い付ける為、庶民に似合わぬ豊かな暮らしに繋がっているのだった。
「ちなみに美琳の夫は今は兵士として北方で任務についておる」
「そうなのですか?」
「ああ、そうなんだよ。まあ、たまに休暇で戻って来る時があるからずっと離れ離れって事もないんだけどね」
にかっと笑う美琳。桃玉は寂しくはないのですか? と質問する。
「あたしはさみしい――」
「まあ、玉琳はそうなるよなあ。私も寂しくないと言えばうそになるねえ。でも今の代の皇帝陛下になってからは戦も減ったからそこは安心材料かな。先代はひどいもんだったから」
(ここで龍環様の評判を聞けるとは思わなかった)
試しに桃玉は美琳に龍環についてどう考えているかを質問してみた。
「若いけど良い皇帝陛下だと思うよ。戦ばっかりじゃなくて内政重視っていうの? なんかそういうのよく考えてくれてるのはとても良い事だと思う」
「なるほど、そうお考えになるのですね」
「桃玉さんはどう思うの」
「私は……」
龍環の穏やかな笑みが桃玉の脳裏によぎった瞬間、桃玉の頬が紅潮する。
(なんだろ、この気持ち……ああ、私やっぱり龍環様の事が好き、というか……一緒にいたいんだ……)
「桃玉どしたの――?」
「あ、玉琳ちゃん! ごめんねなんでもないよ!」
「だって桃玉、悲しそうな顔をしてたから」
どうやら玉琳は彼女なりに桃玉を心配していたようである。桃玉は顔を小さく左右に振った。
「とても良い皇帝陛下だと思います」
「やっぱりそうかい。市場では皇帝陛下に一目会いたくて下女でもいいから後宮入りしたいって言う子もいるくらいだからねえ」
(人気者なんだ。そりゃあそうだよねえ……)
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「桃婆さん、仙女の話を桃玉さんにも聞かせるのかい?」
「ああ、そうだよ。実はさっきちょっとだけ話していたのじゃ」
「そうなんだ。じゃあ私も耳を傾けるとするかねえ」
「美琳さんは仙女についてご存じなのですか?」
「勿論さ」
まるで当たり前のように答えながらばくっと勢いよく岩ガキの煮つけを口の中に放り込む美琳を、桃玉は驚きながら見つめていた。
「私は仙女である桃婆に拾われて育った身だから仙女の事についてはよくわかっているつもりだよ。玉琳もいる事だしね」
(すごい自信だ……)
「ほほ……自信があるようで何よりじゃ。とまあ、美琳は3歳の時にワシが拾ったんじゃ。その頃から勝ち気なのは変わらんのう。ではちょっと昔話でもするかのう」
桃婆は物心ついた時から山奥に籠り修行をしながら1人で生きてきた。両親に関する事はほとんど覚えていないのだと言う。長きにわたり1人で暮らしていた桃婆だったが今から約30年くらい前に事件は起こる。
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