後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん

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第10話 治療院、開院!

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 ――という事で浩明の指示通り出入り口付近に存在する使わなくなった古い馬小屋を改修し、治療院が開院する事になった。治療院は宮廷で働く者達から一般の庶民まで身分問わず分け隔てなく受け入れが可能になっている。この方針は美華の望みによるものだった。
 当然ながら、この美華の考えに共感できない者もいるのだが、美華は皇后。仕方なく彼女の言う事を聞くより他ない。
 そして開院当日の日の夜明け前。この時点で既に多くの人々が門の前に列をなしていた。

「おいおい、人ここに来過ぎじゃねえか?」

 見張り役の兵士がそう驚くのも無理はない。先日の虎が脱走しけが人が複数出た事件によって美華の話は、国中に拡散し話題になっていたからだ。

「ああ、はやく皇后様のお目にかかりたい!」
「皇后様なら、このコブも取ってくれるだろうか」
「ああ、はやく門を開けてくれ! この子が苦しんでいるんだ!」
「頼む! はやく皇后様に会わせてくれ!」

 どこまで続いているのか分からない程伸びた列からは、次々に皇后様に会わせて! という声がひっきりなしに発生する。
 そんな中、治療院ではいつもより早起きした美華と女官達がせっせと準備をしている途中である。

「すごい声が聞こえてきますね……」
(すぐに治療院へお迎えしたい所だけど……女官達の準備がどこまで進んでいるのか……)
「あの、皆さんどれくらい準備進んでいます?」

 美華の問いに、女官達はあともう少し時間がかかりそうです……! と答える。

(急かしちゃだめだよね。女官の皆さんの事も考えないと……)
「皇后様、もう早いですけど患者を中に入れましょう」

 女官のひとりからの言葉に、美華はよろしいのですか? と確認する。

「はい。他の皆さんも大丈夫ですか?」
「はい、こっちは大丈夫です!」
「こちらも大丈夫でございます~」
「という事ですので、ご心配なく」

 女官達から確認を終えた美華は、首を縦に振ってからでは、患者さんをこちらにお招きください。と声をかける。その声音には緊張感と一種のわくわくとした感情が入り混じっていた。
 さっそく、一番前の列に並んでいた初老の男が治療院に入る。

「皇后様。お目にかかれて光栄でございます。目隠しをされていらっしゃるという事は目が見えないのでございますか?」
「そうなのです……。申し訳ありませんがその点につきましてはご容赦くださいね。早速ですが、悪い個所はどこですか?」
(うーーん、波動で視る感じは……もっと集中しないと視えないや)
「皇后様……こちらです。どうぞお触れくださいませ」

 初老の男が両手を美華へと差し出す。美華が触れてみると彼の両手の指はあちこち変形していた。

风湿病リウマチですか」
「ええ……畑仕事をしているのですが、手が痛くてはかどらんのですよ」
「わかりました。では治していきますね」

 美華は初老の男の両手の下に右手を添えて、左手を上からかざしていく。すると変形があっという間に元の通りに戻っていった。 

「おお……痛みも消えていきます!」
「よかったです。ちょっと動かしてみてくださいな」

 美華に言われた通りに手を握ったり広げたりする彼の顔は、驚きと歓喜に満ち溢れていた。

「痛くない! 痛くないです!」
「よかったです……!」
「これで仕事に集中できます! もう痛み止めの苦い薬も飲まなくてよさそうです! 皇后様、ありがとうございました!」
「いえいえ。またひどくなったらいつでもお越しくださいね」

 初老の男は何かお礼を……と言おうとした所で美華の指示を受けている女官からお礼の品は必要ない事の説明を受けた。男は少し動揺しながらも喜びながら治療院をあとにしていく。
 そして間髪入れずに次の患者が現れた。次の患者は40代くらいの白髪交じりの女性である。先ほどの初老の男よりも粗末な服装をしていた。

「こんにちは。いかがなされましたか?」
「皇后様……! あ、あの……寝たきりの娘を治してほしいのでございます」
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