49 / 88
第48話 決闘の申し込み
しおりを挟む
「決闘?!」
騒ぎを聞いて駆けつけた家臣達が慌てて鈴蘭を引き離そうとするが、鈴蘭は触るな! と言って抵抗する。
「えぇい! この神聖な身体に触れるでない!」
鈴蘭があまりに大きな声で抵抗を見せるせいか村長はじめ龍族の者達も冷や汗をかきながらやってきた。
「やめんか鈴蘭! 皇后様や陛下になんたる無礼を!」
「お祖父様、止めないでください!」
「バカモン! 止めるに決まっとるわ!」
どうやら鈴蘭は村長の孫娘でもあるようだ。騒ぎをただ見ているだけの浩明は、同じようにただ聞いているだけの美華にどうする? と小さな声で話しかける。
「う~ん、鈴蘭さん? から詳しく話を聞くしかないですねぇ」
「なんだかめんどくさそうな感じがするが……」
「私は寛大でございますから。陛下のように」
(なんか嫌味のようにも聞こえるな……)
結局。龍族の屈強な男達や村長に連れられ、鈴蘭は撤退ししていった。
村長曰く鈴蘭はこの村の巫女・呪術師のひとりでかなりの実力者。美華と同じく病を治す力があるそうだ。
「はあ、なんだったんだ……」
「すごい騒ぎでしたね……」
「そうだな。ちょっと休むとするか」
浩明は部屋の中にある薄い布の天蓋付き架子床の上に大の字になった。美華も彼の右横に寝転がるとそのまま眠りについたのだった。
「……」
途中で睡眠から覚めた美華は、真っ暗なままな視界を見上げる。
(御仏様からは呼ばれなかった。邪龍の鱗が沈んでいる場所を知りたいのだけど……)
まだ眠り続ける浩明を起こさないように部屋を出ようと扉を開けた瞬間、目の前に鈴蘭が現れる。
「こっこう……」
「しっ! 静かに!」
あっ……失礼しました。と先ほどとはうってかわった虫の羽音のような声を発する鈴蘭に、美華はどうしてまたここに来たんですか? と問いかける。
「勿論、あなたと決闘したいからです」
「なぜですか? 私、悪い事しました?」
「ええ、それはそれは!」
(なんだろ?)
鈴蘭の長ったらしい説明を要約すると、美華と同じく病を治していた鈴蘭だったが、美華が治療院を建ててからは彼女ばかりに注目が行って自分の所にはほぼ全く患者が来なくなったらしい。
しかも仲間の巫女達はそれを受け入れ、のんびりと過ごしているのに対して更に腹が立っているそうだ。
「つまりあなたは商売敵なのです」
「商売敵と言われましても……私、商売のつもりじゃないですし」
「えっ、もしかして無償でやってるのですか?」
「はい、そうですけど?」
すると鈴蘭は膝から崩れ落ちて、木の廊下に座り込んだ。
「くっ……! 無償だなんて……!」
「あら、ま」
「いや、かくなる上はあなたには負けません!」
謎の闘志を燃やした鈴蘭は勢いよく立ち上がる。
「皇后様。あなたに決闘を申し出ます!」
騒ぎを聞いて駆けつけた家臣達が慌てて鈴蘭を引き離そうとするが、鈴蘭は触るな! と言って抵抗する。
「えぇい! この神聖な身体に触れるでない!」
鈴蘭があまりに大きな声で抵抗を見せるせいか村長はじめ龍族の者達も冷や汗をかきながらやってきた。
「やめんか鈴蘭! 皇后様や陛下になんたる無礼を!」
「お祖父様、止めないでください!」
「バカモン! 止めるに決まっとるわ!」
どうやら鈴蘭は村長の孫娘でもあるようだ。騒ぎをただ見ているだけの浩明は、同じようにただ聞いているだけの美華にどうする? と小さな声で話しかける。
「う~ん、鈴蘭さん? から詳しく話を聞くしかないですねぇ」
「なんだかめんどくさそうな感じがするが……」
「私は寛大でございますから。陛下のように」
(なんか嫌味のようにも聞こえるな……)
結局。龍族の屈強な男達や村長に連れられ、鈴蘭は撤退ししていった。
村長曰く鈴蘭はこの村の巫女・呪術師のひとりでかなりの実力者。美華と同じく病を治す力があるそうだ。
「はあ、なんだったんだ……」
「すごい騒ぎでしたね……」
「そうだな。ちょっと休むとするか」
浩明は部屋の中にある薄い布の天蓋付き架子床の上に大の字になった。美華も彼の右横に寝転がるとそのまま眠りについたのだった。
「……」
途中で睡眠から覚めた美華は、真っ暗なままな視界を見上げる。
(御仏様からは呼ばれなかった。邪龍の鱗が沈んでいる場所を知りたいのだけど……)
まだ眠り続ける浩明を起こさないように部屋を出ようと扉を開けた瞬間、目の前に鈴蘭が現れる。
「こっこう……」
「しっ! 静かに!」
あっ……失礼しました。と先ほどとはうってかわった虫の羽音のような声を発する鈴蘭に、美華はどうしてまたここに来たんですか? と問いかける。
「勿論、あなたと決闘したいからです」
「なぜですか? 私、悪い事しました?」
「ええ、それはそれは!」
(なんだろ?)
鈴蘭の長ったらしい説明を要約すると、美華と同じく病を治していた鈴蘭だったが、美華が治療院を建ててからは彼女ばかりに注目が行って自分の所にはほぼ全く患者が来なくなったらしい。
しかも仲間の巫女達はそれを受け入れ、のんびりと過ごしているのに対して更に腹が立っているそうだ。
「つまりあなたは商売敵なのです」
「商売敵と言われましても……私、商売のつもりじゃないですし」
「えっ、もしかして無償でやってるのですか?」
「はい、そうですけど?」
すると鈴蘭は膝から崩れ落ちて、木の廊下に座り込んだ。
「くっ……! 無償だなんて……!」
「あら、ま」
「いや、かくなる上はあなたには負けません!」
謎の闘志を燃やした鈴蘭は勢いよく立ち上がる。
「皇后様。あなたに決闘を申し出ます!」
1
あなたにおすすめの小説
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
後宮に咲く毒花~記憶を失った薬師は見過ごせない~
二位関りをん
キャラ文芸
数多の女達が暮らす暁月国の後宮。その池のほとりにて、美雪は目を覚ました。
彼女は自分に関する記憶の一部を無くしており、彼女を見つけた医師の男・朝日との出会いをきっかけに、陰謀と毒が渦巻く後宮で薬師として働き始める。
毒を使った事件に、たびたび思い起こされていく記憶の断片。
はたして、己は何者なのか――。
これは記憶の断片と毒をめぐる物語。
※年齢制限は保険です
※数日くらいで完結予定
【完結】『左遷女官は風花の離宮で自分らしく咲く』 〜田舎育ちのおっとり女官は、氷の貴公子の心を溶かす〜
天音蝶子(あまねちょうこ)
キャラ文芸
宮中の桜が散るころ、梓乃は“帝に媚びた”という濡れ衣を着せられ、都を追われた。
行き先は、誰も訪れぬ〈風花の離宮〉。
けれど梓乃は、静かな時間の中で花を愛で、香を焚き、己の心を見つめなおしていく。
そんなある日、離宮の監察(監視)を命じられた、冷徹な青年・宗雅が現れる。
氷のように無表情な彼に、梓乃はいつも通りの微笑みを向けた。
「茶をお持ちいたしましょう」
それは、春の陽だまりのように柔らかい誘いだった——。
冷たい孤独を抱く男と、誰よりも穏やかに生きる女。
遠ざけられた地で、ふたりの心は少しずつ寄り添いはじめる。
そして、帝をめぐる陰謀の影がふたたび都から伸びてきたとき、
梓乃は自分の選んだ“幸せの形”を見つけることになる——。
香と花が彩る、しっとりとした雅な恋愛譚。
濡れ衣で左遷された女官の、静かで強い再生の物語。
皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる
えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。
一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。
しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。
皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。内容も少し変更しておりますので、あわせてお楽しみください。
高校生なのに娘ができちゃった!?
まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!?
そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。
子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちだというのに。
入社して配属一日目。
直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。
中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。
彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。
それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。
「俺が、悪いのか」
人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。
けれど。
「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」
あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちなのに。
星谷桐子
22歳
システム開発会社営業事務
中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手
自分の非はちゃんと認める子
頑張り屋さん
×
京塚大介
32歳
システム開発会社営業事務 主任
ツンツンあたまで目つき悪い
態度もでかくて人に恐怖を与えがち
5歳の娘にデレデレな愛妻家
いまでも亡くなった妻を愛している
私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる