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第52話 これくらいの痛みなんて
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「もっと……人を助けたい……?」
「そうです。もっとたくさんの人を助けたい。今の力ではひとりずつしか力を発揮できませんが、1回で多くの人を助けられるようになれば……」
(こないだのような事をしようとしているのか、美華は……)
浩明の脳裏には美華が一気に波動の力を放出した時の事が鮮やかに浮かび上がっていた。
(止めても聞かないのが美華だ。だが彼女のおかげですくわれた命がごまんといるのも事実)
「美華らしいじゃないか」
「陛下?」
「君の願いは強欲でも何でもない。誰かの為に動ける人間の優しさだと俺は思う」
ふっと笑みを見せる浩明。その笑みは見えなくても、彼の雰囲気と声音で笑っている。という事実が美華に伝わる。
「だから、私を治療院で働かないかって誘ったのですか?」
「はい、鈴蘭さん」
「即答ですね……くっ、まだ悔しい……先ほどは失礼いたしました」
悔しさを募らせるも不思議と嫌悪感はそこまで抱かない事に気が付いた鈴蘭は、ここで宮廷でもどうぞよろしくお願いします。と改めて美華と浩明に頭を下げる。
「わからない事があったらいつでも私か他の妃か女官の方に聞いてくださいね」
「そうします。郷に入っては郷に従え。ですよね。よくお祖父様が言っているので」
(こいつ妃からいじめられる心配はなさそうだな。気が強そうだし)
邪龍の鱗の出現について一通り知った3人は、それぞれの寝床に去っていった。
◇ ◇ ◇
海の沖に、たくさんの小船や巨大な船が輪を囲うようにして停泊している。いよいよ秘祭の始まりだ。
浩明と美華、そして家臣団は専用の大きな船に村長と共に乗り込んでいる。美華は目が見えないので浩明が彼女の目の代わりを担う事になった。
「今、中心で大きなマグロが掲げられている。そのマグロの表面には小銭がたくさんくっついているな」
「ほうほう、なるほど……なぜマグロ?」
「邪龍に捧げられるそうだ」
「邪龍……もしかしてこの後に……邪龍の鱗が……」
マグロが海へと沈んでいく。するとしばらくしてマグロが沈められた地点が黄金に光り始める。
その時だった。
「あれです。あの邪龍の鱗を食べなさい」
美華の脳内に御仏の声が鳴り響く。そして美華は気がつけば邪龍の鱗へと船から飛び出し手を伸ばしていた。
「美華!」
飛び降りた美華を浩明が引き戻そうと手を伸ばすが届かない。だが美華の身体は飛ぶようにして海中から浮上する邪龍の鱗へと進む。
そして邪龍の鱗が海上に浮上した瞬間、美華の手が触れた。
「よし!」
邪龍の鱗を掴むと、掴んだ手には熱が迸る。あまりの激痛に美華は一度は手を離そうとしてしまう。
(これくらい、あの人にされてきた事と比べたら!)
美華は邪龍の鱗を掴み、口の中に放り込む。その勢いのままごくりと飲み込んだ。
「そうです。もっとたくさんの人を助けたい。今の力ではひとりずつしか力を発揮できませんが、1回で多くの人を助けられるようになれば……」
(こないだのような事をしようとしているのか、美華は……)
浩明の脳裏には美華が一気に波動の力を放出した時の事が鮮やかに浮かび上がっていた。
(止めても聞かないのが美華だ。だが彼女のおかげですくわれた命がごまんといるのも事実)
「美華らしいじゃないか」
「陛下?」
「君の願いは強欲でも何でもない。誰かの為に動ける人間の優しさだと俺は思う」
ふっと笑みを見せる浩明。その笑みは見えなくても、彼の雰囲気と声音で笑っている。という事実が美華に伝わる。
「だから、私を治療院で働かないかって誘ったのですか?」
「はい、鈴蘭さん」
「即答ですね……くっ、まだ悔しい……先ほどは失礼いたしました」
悔しさを募らせるも不思議と嫌悪感はそこまで抱かない事に気が付いた鈴蘭は、ここで宮廷でもどうぞよろしくお願いします。と改めて美華と浩明に頭を下げる。
「わからない事があったらいつでも私か他の妃か女官の方に聞いてくださいね」
「そうします。郷に入っては郷に従え。ですよね。よくお祖父様が言っているので」
(こいつ妃からいじめられる心配はなさそうだな。気が強そうだし)
邪龍の鱗の出現について一通り知った3人は、それぞれの寝床に去っていった。
◇ ◇ ◇
海の沖に、たくさんの小船や巨大な船が輪を囲うようにして停泊している。いよいよ秘祭の始まりだ。
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「今、中心で大きなマグロが掲げられている。そのマグロの表面には小銭がたくさんくっついているな」
「ほうほう、なるほど……なぜマグロ?」
「邪龍に捧げられるそうだ」
「邪龍……もしかしてこの後に……邪龍の鱗が……」
マグロが海へと沈んでいく。するとしばらくしてマグロが沈められた地点が黄金に光り始める。
その時だった。
「あれです。あの邪龍の鱗を食べなさい」
美華の脳内に御仏の声が鳴り響く。そして美華は気がつけば邪龍の鱗へと船から飛び出し手を伸ばしていた。
「美華!」
飛び降りた美華を浩明が引き戻そうと手を伸ばすが届かない。だが美華の身体は飛ぶようにして海中から浮上する邪龍の鱗へと進む。
そして邪龍の鱗が海上に浮上した瞬間、美華の手が触れた。
「よし!」
邪龍の鱗を掴むと、掴んだ手には熱が迸る。あまりの激痛に美華は一度は手を離そうとしてしまう。
(これくらい、あの人にされてきた事と比べたら!)
美華は邪龍の鱗を掴み、口の中に放り込む。その勢いのままごくりと飲み込んだ。
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