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第63話 お寺に学校を!
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「美華、今なんといった?」
浩明にそう問われた美華は、学校を作るなら新しく建物を建てなければならないですし……。さっき放った言葉をもう一度繰り返した。
「それだ。新しく建物を作る費用をまずは抑えたらいいのではないか?」
「! なるほど。確かに既存の建物を利用すれば、建築費用などは抑えられますね」
2人の会話を聞いていたミハイル夫妻は、貴族の別荘や教会を学校に活用している所もあると教えてくれた。
「……陛下、どうお考えになります?」
「教会……うちでいう所の寺院のようなものだよな? ミハイルよ」
「そうでございます。陛下」
その時。浩明の脳裏にはある場所が思い浮かんだ。それは青沢村の寺院だった。
「……! わかった。良い方法が思いついたぞ」
浩明が思いついたのは、寺院に学校を作るという考えであった。
「これなら、維持費は寺院の者だけで良いし、僧侶なら読み書きを教える事も出来る!」
「……! 確かに、良い考えです!」
「そうだろう、美華……! 君と訪れた寺には、広いお堂があった。そこを学校とすれば……!」
一気に視界が開けていくような感覚を2人は覚える。
「よし決めた。寺院に学校を作る。これなら建物の維持費の為にお金を払う必要性は無いだろう」
「私も賛成でございます」
「反対の者はいるか?」
浩明からの問いに反対する者はいなかった。浩明は、ではそのように計画を進める! と高らかに宣言する。
「皆文字の読み書きができるようになれば、幅が広がるな」
(陛下の言う通りだ。それに医師や薬師を養成所に入れる人達も多くなる)
「あとは、陛下……良家の方々へはどうすべきかも考えないといけませんね」
「ああ、そうだな……ヴィンセドールス侯爵夫人よ」
この国には読み書きができない庶民農民達だけではなく、玉成淑妃のように、読み書きができない良家の子女も存在する。
そんな彼女達への教育の場も重要であるとヴィンセドールス侯爵夫人は語った。
「庶民は寺院となれば、良家の子女達には……やはり宮廷の建造物を学校にするのはいかがでしょうか?」
「ふむ、ヴィンセドールス侯爵夫人はなぜそのように考える?」
「こちらの国の良家の子女は、我が国の貴族の子女と同様に、陛下や皇族の妃となる者がいると聞いているからでございます」
ミハイル夫妻の国の王族も龍の国同様に一夫多妻制である。龍の国の五大名家のように指定された家から皇后……この場合は王妃を出す。といった決まりは無いものの、王や王太子、王子の妻や側室には貴族の子女をというのが一般的のようだ。
「ちなみに我が妻の実家は、子爵家でございます。同じ貴族同士の結婚です」
「貴族は一夫多妻制なのか?」
「愛人を持つ者もおりますが、基本は一夫一妻でございます」
王族とは違い、曖昧な基準のせいかトラブルがよくあるそうだ。
「私は実は……愛人の娘でございました」
そう語るヴィンセドールス侯爵夫人の目に、光が消えた。
「……正妻と正妻の娘である異母妹からは召使いとして扱われ、毎日のようにいじめを受けておりました」
(! 私と同じ……!)
ヴィンセドールス侯爵夫人の告白を聞いた美華は、己の境遇を彼女に重ねる。
「ヴィンセドールス侯爵夫人。私も愛人の娘です」
「! 皇后様もで、ございますか!?」
「正妻にいじめられ、召使いとして扱われたのも同じです」
仲間……同士がいた。ヴィンセドールス侯爵夫人の顔にはそのように記されているように見える。
「私の波動の力は、御仏様との等価交換によるものです」
続けて美華は私は御仏様に視力を渡しました。と語る。
「視力を渡したのは、これ以上辛い事を見なくて良いと思っていたからです」
(福勝が言っていた事だ……)
「目が見えないなら耳を手で塞ぐだけであとは見えなくて済むと思ったのです」
それに罵詈雑言が記された文字や自らの身体に浮かんだ痣なども見なくて済むし、痣は波動の力で治せるとも語る。
「皇后様がそのような体験をされてきたとは知りませんでした……」
「私も侯爵夫人……あなたの事はよく知りませんでした」
互いに打ち解け合うヴィンセドールス侯爵夫人と美華を眺めながら、ミハイルと浩明は語り合う。
「馴れ初めはどうなんだ?」
ミハイルの話を要約すると2人は貴族学校で出会ったようだ。異母妹らの取り巻きにいじめられている彼女を助けた彼は、ヴィンセドールス侯爵夫人を溺愛するようになっていったらしい。
「大変でした。彼女をヴィンセドールス侯爵家の屋敷に匿ったりしていたので」
「そんな事が……」
そして異母妹には彼女のほかに、もうひとり虐めていた人物がいたのだが、その人物はなんと国王の隠し子である事が判明し、2人の動きもあって彼女は救われ、異母妹は貴族学校を退学・謹慎処分になったそうだ。
「中々山を越えているのだな、ミハイル夫妻は……」
「ええ。ですが2人ならどんな危機でも乗り越えられると信じています」
「ははっ。俺もだよ」
彼らは互いの妻を深く愛しているのがよく伝わってきたのか、ヴィンセドールス侯爵夫人と美華は顔を赤らめたのである。
浩明にそう問われた美華は、学校を作るなら新しく建物を建てなければならないですし……。さっき放った言葉をもう一度繰り返した。
「それだ。新しく建物を作る費用をまずは抑えたらいいのではないか?」
「! なるほど。確かに既存の建物を利用すれば、建築費用などは抑えられますね」
2人の会話を聞いていたミハイル夫妻は、貴族の別荘や教会を学校に活用している所もあると教えてくれた。
「……陛下、どうお考えになります?」
「教会……うちでいう所の寺院のようなものだよな? ミハイルよ」
「そうでございます。陛下」
その時。浩明の脳裏にはある場所が思い浮かんだ。それは青沢村の寺院だった。
「……! わかった。良い方法が思いついたぞ」
浩明が思いついたのは、寺院に学校を作るという考えであった。
「これなら、維持費は寺院の者だけで良いし、僧侶なら読み書きを教える事も出来る!」
「……! 確かに、良い考えです!」
「そうだろう、美華……! 君と訪れた寺には、広いお堂があった。そこを学校とすれば……!」
一気に視界が開けていくような感覚を2人は覚える。
「よし決めた。寺院に学校を作る。これなら建物の維持費の為にお金を払う必要性は無いだろう」
「私も賛成でございます」
「反対の者はいるか?」
浩明からの問いに反対する者はいなかった。浩明は、ではそのように計画を進める! と高らかに宣言する。
「皆文字の読み書きができるようになれば、幅が広がるな」
(陛下の言う通りだ。それに医師や薬師を養成所に入れる人達も多くなる)
「あとは、陛下……良家の方々へはどうすべきかも考えないといけませんね」
「ああ、そうだな……ヴィンセドールス侯爵夫人よ」
この国には読み書きができない庶民農民達だけではなく、玉成淑妃のように、読み書きができない良家の子女も存在する。
そんな彼女達への教育の場も重要であるとヴィンセドールス侯爵夫人は語った。
「庶民は寺院となれば、良家の子女達には……やはり宮廷の建造物を学校にするのはいかがでしょうか?」
「ふむ、ヴィンセドールス侯爵夫人はなぜそのように考える?」
「こちらの国の良家の子女は、我が国の貴族の子女と同様に、陛下や皇族の妃となる者がいると聞いているからでございます」
ミハイル夫妻の国の王族も龍の国同様に一夫多妻制である。龍の国の五大名家のように指定された家から皇后……この場合は王妃を出す。といった決まりは無いものの、王や王太子、王子の妻や側室には貴族の子女をというのが一般的のようだ。
「ちなみに我が妻の実家は、子爵家でございます。同じ貴族同士の結婚です」
「貴族は一夫多妻制なのか?」
「愛人を持つ者もおりますが、基本は一夫一妻でございます」
王族とは違い、曖昧な基準のせいかトラブルがよくあるそうだ。
「私は実は……愛人の娘でございました」
そう語るヴィンセドールス侯爵夫人の目に、光が消えた。
「……正妻と正妻の娘である異母妹からは召使いとして扱われ、毎日のようにいじめを受けておりました」
(! 私と同じ……!)
ヴィンセドールス侯爵夫人の告白を聞いた美華は、己の境遇を彼女に重ねる。
「ヴィンセドールス侯爵夫人。私も愛人の娘です」
「! 皇后様もで、ございますか!?」
「正妻にいじめられ、召使いとして扱われたのも同じです」
仲間……同士がいた。ヴィンセドールス侯爵夫人の顔にはそのように記されているように見える。
「私の波動の力は、御仏様との等価交換によるものです」
続けて美華は私は御仏様に視力を渡しました。と語る。
「視力を渡したのは、これ以上辛い事を見なくて良いと思っていたからです」
(福勝が言っていた事だ……)
「目が見えないなら耳を手で塞ぐだけであとは見えなくて済むと思ったのです」
それに罵詈雑言が記された文字や自らの身体に浮かんだ痣なども見なくて済むし、痣は波動の力で治せるとも語る。
「皇后様がそのような体験をされてきたとは知りませんでした……」
「私も侯爵夫人……あなたの事はよく知りませんでした」
互いに打ち解け合うヴィンセドールス侯爵夫人と美華を眺めながら、ミハイルと浩明は語り合う。
「馴れ初めはどうなんだ?」
ミハイルの話を要約すると2人は貴族学校で出会ったようだ。異母妹らの取り巻きにいじめられている彼女を助けた彼は、ヴィンセドールス侯爵夫人を溺愛するようになっていったらしい。
「大変でした。彼女をヴィンセドールス侯爵家の屋敷に匿ったりしていたので」
「そんな事が……」
そして異母妹には彼女のほかに、もうひとり虐めていた人物がいたのだが、その人物はなんと国王の隠し子である事が判明し、2人の動きもあって彼女は救われ、異母妹は貴族学校を退学・謹慎処分になったそうだ。
「中々山を越えているのだな、ミハイル夫妻は……」
「ええ。ですが2人ならどんな危機でも乗り越えられると信じています」
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