後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん

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第69話 厠の設置

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 何度も押し寄せる余震は、宮廷の絢爛豪華な建築物を容赦なくぐしゃぐしゃに破壊していく。
 宮廷近くの街も、人の賑わいはなく、世界の終わりが見え始めている状況だ。

「陛下、厠などはどうしましょうか……」
「……そうだな。なんとかせねば」

 浩明が思いついたのは、布でこしらえた小屋を建て厠とする事だった。

「ミハイルがテントと言っていたやつだな。余震が続いている中ではあるが、準備に取り掛かろう」

 余震が時折続く中、たまたま屋外の近くにある厠の小屋の木材が取り払われそこにテント型の建物が建てられた。幸い余震の規模はだいぶ小さくなっている。

「時間はかかったが、これならおなごも安心して用を足せられるだろう」
「陛下、良い考えでございますね」
「俺達男は……立ち小便という手があるが、君達おなごはそうもいかないからな」

 今後、また地震が起きるとも限らないし、被害が収まれば厠事情なども考えなければな……。と浩明は心の中で呟いたのだった。
 また、臨時の厠を建てる間、妃や女官達は急いで衣服や月のもの用の品を後宮から取り出せられる分だけ取り出してきている。

(あとは……食事もどうにかしないと……街の皆も気になる)

 何度か波動の力を大放出し、余震も小さくなってはいるが、油断は出来ない。
 その時。馬に乗った役人が浩明の元にやってきた。

「陛下! 大変でございます!」
「どうした!?」
「崩れた山から黒い泥があふれ出してきております!」
「なんだと!?」

 役人からの報告を聞き終えると、役人の後ろから農民達が門番の制止を振り切り次々に現れる。

「龍の死体みたいなのから、黒い泥がたくさん溢れ出してるんだ!」
「黒い泥に触れたやつはみんな、石になってしまった!」
(……まさか、邪龍の死体?)

 美華の胸の中で胸騒ぎが起こる。それに波動の力を持ってしても治せないのではないかという不安も芽を出し始めた。

「とりあえず避難するように伝えよ! 高台に逃れるんだ!」
「陛下! 高台にいようがいまいが飲み込まれてしまうのです……!」
「なんだと……船はどうなんだ?」
「! た、試してみます……!」

 浩明と役人や家臣団との緊迫したやり取りを側で聞いている美華は、頭の中でどうにか黒い泥を止める手段はないかと考え始める。

(船がダメなら……もうあとは……壁を作るのも時間が足りない……)

 しかし、良い方法は一向に現れないままだった。

(だめだ、う――ん……ここは本好きな劉貴妃様に聞いてみようか)
「劉貴妃様! その……泥を食い止める方法、何かありますでしょうか?」
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