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第75話 祠へ
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「美華、おぶっていこうか?」
祠まで伸びる黄金の道には手すりなどは一切ない。そこで浩明は彼女をおんぶして進もうと考えたのだった。
「……すみません、お願いします」
「ああ、ではしっかりと掴まっておけ」
「はい!」
美華を背に乗せて浩明は黄金の道をしっかりと踏みしめながら歩き始めた。だが思ったよりも距離があるのか中々祠どころか山までたどり着けない。
「なんだ……? 蜃気楼のように思えてきたぞ……」
愚痴を漏らしそうにはなるがそれをぐっとこらえて歩いていく。彼の目はただ真っすぐに祠のある山を見据えているのみだ。
するとちょっとだけ山が近くなってきたように感じる。
「陛下、重くないですか?」
「これくらいなんとも無い。だがひとつだけお願いしても構わないだろうか?」
「なんでしょう?」
「俺の事、陛下ではなく浩明と呼んでくれ」
浩明からのお願いを聞いた美華は、浩明様。と口にする。すると浩明の胸の中で心臓がどきっと跳ねた。
「ありがとう。頑張れるよ」
「? いえ、どういたしまして」
(思ったよりも破壊力があったな……とにかく、頑張れそうだ)
そして浩明の目の前に山が現れた。木々を分け入って道を歩むと、そこには美華がかつて修復した祠が扉を開けて鎮座しているのが見える。
「ふう……到着したぞ、美華」
「おっ、とうとう来ましたか」
浩明の背中からゆっくりと降りた美華。すると彼女の脳内におかえりなさい。と御仏からの声がこだまする。
「! 御仏様。ただいま参りました」
「美華……御仏様。浩明でございます。隣におりますのが皇后・美華でございます」
「ふふふ……皇帝も元気そうで何よりでございます」
祠の中の仏像がまばゆい光を放っている。黄金の道は祠の下から伸びているようだ。
「という訳で美華、喉が渇いたでしょう。台座に用意した飴がございます」
「あっ……話していた飴ですね」
「美華、俺が取って渡そう」
浩明が台座の下に転がっていた橙色の丸い飴を取ると、美華の手のひらの上に優しく置いた。その飴を美華は口の中に入れてころころと転がし始める。
「ちなみに味はどうなんだ?」
「砂糖の味わいに近いですね。甘ったるい感じは無いので食べやすいです」
「なるほどな……色はべっこうをほうふつとさせるな」
「べっこうですか……あの橙色のやつですよね。べっこうが使われた髪飾りは後宮でもよく人気があるとか」
そんな世間話をしながら飴が解けるのを待っている2人。そこに御仏がせっかくなのでこれから成すべき事をお伝えしましょう。と声をかけてくれた。
「成すべき事……」
「そうです。美華が目をくれたおかげで見通しもはっきり見渡せますから」
まず飴を舐め終えた後は、邪龍の死体がある場所へと向かう。そして黒い泥に波動の力を当てて黒い泥を消滅させなければならない。と御仏は説明する。
「邪龍の鱗が黒い泥と共鳴しているようなのだが……どうなるのだ?」
「飴をなめ終えれば邪龍の鱗は消滅します」
「消えてしまうのか。美華の波動の力には影響は出ないのか?」
「はい。ちょっと性質が変わるくらいですね」
邪龍の鱗には、御仏から能力をもらった生き物の力を底上げする力があるようだ。
「なるほどな……海龍村にも影響は出ないのだな」
「そうです。ご安心を。皇帝陛下」
「……ごくり。舐め終えました」
美華が飴を舐め終えた所で、彼女の身体が一瞬だけ光ったのと、祠から放たれている光がさらに強烈になった。
「わあっ」
「まぶしいな……!」
「……私も同行致したいのですが、ここから先はあなた達に託しましょう」
「御仏様……」
2人の目の前には仏像を浩明くらいに大きくしたくらいの御仏が黄金の光をまといながら立っている。
「応援しております。そしてあなた達の無事を願っています」
「ありがとうございます。御仏様。行ってまいります」
「行ってくる」
浩明が美華を再び背負い、来た道を引き返していく。その後ろ姿を御仏は消えていくまで見送っていたのだった。
「大丈夫。あなた方なら、必ず……」
◇ ◇ ◇
2人が船に戻ると、四夫人と鈴蘭が美華浩明がいた船に移動して来ていた。
「どうした、ここは危ないぞ」
すると一番最初に口を開いたのは鈴蘭だった。
「皇后様だけではありません、私達もついているという事を示す為にここに来ました」
「陛下! あたし達も一緒だよ! 役に立つかはわかんないけど、鈴蘭ちゃんは強いんじゃないかな?」
「玉成淑妃様、役に立つかはわかんないって言いますけど、私は必ず役に立ちますから!」
いつも通り気の強さを顔に出している鈴蘭や、四夫人の妃達に美華はふふっと穏やかな笑みを向けた。
「皆さん……一緒にいてくれたら力強いです」
「そうだな、俺としても心強い」
こうして船はまた動き出す。今度の行き先は邪龍の死体が封印されていた山。
「美華、いよいよ行くぞ」
「そうですね。必ず再封印してみせます!」
美華は両手の拳をギュッと握りしめた。
祠まで伸びる黄金の道には手すりなどは一切ない。そこで浩明は彼女をおんぶして進もうと考えたのだった。
「……すみません、お願いします」
「ああ、ではしっかりと掴まっておけ」
「はい!」
美華を背に乗せて浩明は黄金の道をしっかりと踏みしめながら歩き始めた。だが思ったよりも距離があるのか中々祠どころか山までたどり着けない。
「なんだ……? 蜃気楼のように思えてきたぞ……」
愚痴を漏らしそうにはなるがそれをぐっとこらえて歩いていく。彼の目はただ真っすぐに祠のある山を見据えているのみだ。
するとちょっとだけ山が近くなってきたように感じる。
「陛下、重くないですか?」
「これくらいなんとも無い。だがひとつだけお願いしても構わないだろうか?」
「なんでしょう?」
「俺の事、陛下ではなく浩明と呼んでくれ」
浩明からのお願いを聞いた美華は、浩明様。と口にする。すると浩明の胸の中で心臓がどきっと跳ねた。
「ありがとう。頑張れるよ」
「? いえ、どういたしまして」
(思ったよりも破壊力があったな……とにかく、頑張れそうだ)
そして浩明の目の前に山が現れた。木々を分け入って道を歩むと、そこには美華がかつて修復した祠が扉を開けて鎮座しているのが見える。
「ふう……到着したぞ、美華」
「おっ、とうとう来ましたか」
浩明の背中からゆっくりと降りた美華。すると彼女の脳内におかえりなさい。と御仏からの声がこだまする。
「! 御仏様。ただいま参りました」
「美華……御仏様。浩明でございます。隣におりますのが皇后・美華でございます」
「ふふふ……皇帝も元気そうで何よりでございます」
祠の中の仏像がまばゆい光を放っている。黄金の道は祠の下から伸びているようだ。
「という訳で美華、喉が渇いたでしょう。台座に用意した飴がございます」
「あっ……話していた飴ですね」
「美華、俺が取って渡そう」
浩明が台座の下に転がっていた橙色の丸い飴を取ると、美華の手のひらの上に優しく置いた。その飴を美華は口の中に入れてころころと転がし始める。
「ちなみに味はどうなんだ?」
「砂糖の味わいに近いですね。甘ったるい感じは無いので食べやすいです」
「なるほどな……色はべっこうをほうふつとさせるな」
「べっこうですか……あの橙色のやつですよね。べっこうが使われた髪飾りは後宮でもよく人気があるとか」
そんな世間話をしながら飴が解けるのを待っている2人。そこに御仏がせっかくなのでこれから成すべき事をお伝えしましょう。と声をかけてくれた。
「成すべき事……」
「そうです。美華が目をくれたおかげで見通しもはっきり見渡せますから」
まず飴を舐め終えた後は、邪龍の死体がある場所へと向かう。そして黒い泥に波動の力を当てて黒い泥を消滅させなければならない。と御仏は説明する。
「邪龍の鱗が黒い泥と共鳴しているようなのだが……どうなるのだ?」
「飴をなめ終えれば邪龍の鱗は消滅します」
「消えてしまうのか。美華の波動の力には影響は出ないのか?」
「はい。ちょっと性質が変わるくらいですね」
邪龍の鱗には、御仏から能力をもらった生き物の力を底上げする力があるようだ。
「なるほどな……海龍村にも影響は出ないのだな」
「そうです。ご安心を。皇帝陛下」
「……ごくり。舐め終えました」
美華が飴を舐め終えた所で、彼女の身体が一瞬だけ光ったのと、祠から放たれている光がさらに強烈になった。
「わあっ」
「まぶしいな……!」
「……私も同行致したいのですが、ここから先はあなた達に託しましょう」
「御仏様……」
2人の目の前には仏像を浩明くらいに大きくしたくらいの御仏が黄金の光をまといながら立っている。
「応援しております。そしてあなた達の無事を願っています」
「ありがとうございます。御仏様。行ってまいります」
「行ってくる」
浩明が美華を再び背負い、来た道を引き返していく。その後ろ姿を御仏は消えていくまで見送っていたのだった。
「大丈夫。あなた方なら、必ず……」
◇ ◇ ◇
2人が船に戻ると、四夫人と鈴蘭が美華浩明がいた船に移動して来ていた。
「どうした、ここは危ないぞ」
すると一番最初に口を開いたのは鈴蘭だった。
「皇后様だけではありません、私達もついているという事を示す為にここに来ました」
「陛下! あたし達も一緒だよ! 役に立つかはわかんないけど、鈴蘭ちゃんは強いんじゃないかな?」
「玉成淑妃様、役に立つかはわかんないって言いますけど、私は必ず役に立ちますから!」
いつも通り気の強さを顔に出している鈴蘭や、四夫人の妃達に美華はふふっと穏やかな笑みを向けた。
「皆さん……一緒にいてくれたら力強いです」
「そうだな、俺としても心強い」
こうして船はまた動き出す。今度の行き先は邪龍の死体が封印されていた山。
「美華、いよいよ行くぞ」
「そうですね。必ず再封印してみせます!」
美華は両手の拳をギュッと握りしめた。
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