被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

二十六話 来訪

　数日後、ルイがジューン家に訪れた。
　
「久しぶりです、ルイ様」
「はい。お久しぶりですね」

　久しぶりにルイを目の前にして、セシリオは胸がきゅうんと締まるような気がし、腰が甘く疼いた。

「どうぞこちらへ」

　家の中に案内すると中にはセシリオの家族が勢揃いしていた。

　ルイは一瞬面食らうが、すぐに完璧な笑みを貼り付けた。

「ルイ・ヴィゼリアです。お招きいただきありがとうございます」
「ようこそ、ルイ様」

　セシリオの母と父が前に出て礼をした。

「セシリオ。部屋に案内して差し上げなさい」
「はい、お母様」

　セシリオもセシリオの母も、洗練された所作の美しさは格別だった。

　ルイは誰からも所作の教育は受けていない。見様見真似でしかない自分の所作の未熟さが見抜かれないか恐れながら歩いた。

「こちらがルイ様の部屋です」
「ありがとうございます」

　部屋は随分と広かった。おそらくルイの城の自室より広い。

「はぁ…緊張しました」
「緊張？どうしてですか？」
「あなたたちは自分が思っているより威圧感があるんですよ」
「みんなルイ様を歓迎してましたよ」
「本当ですか？」
「はい」

　実はジューン家のものは正直ルイを歓迎していなかった。
　しかし、セシリオが

『ルイ様は僕の選んた人です。何かしたら、嫌いになります』

　と言ったため皆表向きはルイを歓迎しただけなのである。

「ルイ様、夕食を家族で食べる予定なのでぜひご一緒に。服はお持ちですか？」
「はい。まぁ…あまり良いものではありませんが」
「王族のものなのにですか？」

　セシリオはルイに社交用の正装を見せてもらった。

「…これは、あまり、その…あれですね」

　粗悪品ではないが、ジューン家の他のものと比べたら見劣りするだろう。

「夕食まで時間はあります。仕立て屋に行きましょう。オーダーメイドはできなくても、サイズの合うものはいくつか置いてあるはずです」
「はぁ…申し訳ないです」

　ルイとセシリオは急遽出かけることにした。