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西へ(3)
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三連休を前にした町はどこか、浮き足立っているように見える。十数年ぶりの乗船。船が意外と大きくて1時間に1本程度、能登の陸から海野小島へと往復する。観光客が多くて、呑気だなぁと思うけれど、自分も、そんな観光客のひとりに見えていることだろう。
事前にアユちゃんから合宿のしおりのスクショをもらっていた。色々と記録をしてくれていて本当に助かる。
二泊三日の合宿。たった三日の出来事が人生を変えることがあるのだ。
しおり、と言っても、お経を読む時間が多くて笑ってしまう。いえ、信仰心を持つこと自体は素晴らしいのだけれど。ただ、大人も子どもも参加する合宿で、果たして、どれほどの子どもたちが、読経に耐えうるのか、いまだ疑問である。
二日目に海に行ったり、夕食にカレーを作る以外は全部読経。後は、合宿所のお掃除。
浄土真宗は他の宗教とは違って、妻を持ち、肉を食すことを許す、やや変わった宗教である。俗物まみれであるがゆえに、野次られたことも多々あるそうな。見方を変えれば、一般人にも親しめる宗教とも言えるが……。
他にも写真を何枚か、アユちゃんが携帯のカメラで写真を撮ったものがあるので、それと、自分の持っていたアルバムの写真を見比べてみる。高校生くらいであれば、アルバムをデコったりするけど、小学生時代はまだまだ物の扱いが雑で、写真屋さんでよくもらう10数枚ほど入る簡素な写真入れに、時系列も関係なしに乱雑に入れている。この写真がいつどこで撮ったものかとか、横に書いてくれていればヒントになるのに。
ああ、悔しい。
嘆いていても仕方ない。だが、ちゃんと、恋生と出会っていたのなら、出会った瞬間やその後も含めて大切に胸のなかにとっておきたかった。いまは写真や与えられた材料を見て推測するのみ。歯がゆい。
海風が頬を撫でる。子どもがきゃっきゃ言っていて、船頭を見ればタイタニックごっこをしている学生がいた。若い。
青い帽子に隠れたその頭を撫でてみる。すこしでもなにか、思い出せたらいいのに。あなたの声。存在も。
汽笛が鳴った。陸に上陸する合図だ。他の観光客に倣って船を降りる。最初に行くのは、ガラスの美術館だ。
*
緑豊かな丘のうえにそびえたつ、宇宙船を思わせるアーティスティックな外観。館内はまるで宇宙船のなかに迷い込んだよう。無機質なガラス。透けた階段、ガラスの種類もさまざまで透明度の高いもの、すりガラスの窓があったり……。水族館に入ったかのような独特の浮遊感を味わう。
ガラスの工芸品を数多置いた日本随一の美術館である石川県海野小島ガラス美術館。いまはネットに情報があふれているので、外国人観光客の姿も目立つ。昔は、観光地って日本人だらけだったのにね。円安も手伝って。
階段を下りると赤い格子ガラスの窓があり、立ってみるとガラスが透明になる。……へえ、面白い。ガラスの間に液晶が組み込まれ、足形のうえに立つと電流が流れる仕掛けらしい。
――面白いよね。
あなたが見たらきっとそう言うに違いない。微笑みつつ、段を下り、たっぷりと館内を堪能したのちに、建物を出て、斜面に沿って続く階段を下る。花畑が広がっており、建物の風貌も相まって、素晴らしい意匠を奏でる。海風と草の香りが混ざり合い、ほんのりと、胸の中に新しい風が吹き込んでくる。海野小島湾を見渡せるこの眺望。見事だ。写真を撮る観光客が多い。
ふとスマートフォンを構えて写真を撮ったときだった。――海へと目が引き寄せられる。わたし、
(あの海に見覚えがある)
*
事前にアユちゃんから合宿のしおりのスクショをもらっていた。色々と記録をしてくれていて本当に助かる。
二泊三日の合宿。たった三日の出来事が人生を変えることがあるのだ。
しおり、と言っても、お経を読む時間が多くて笑ってしまう。いえ、信仰心を持つこと自体は素晴らしいのだけれど。ただ、大人も子どもも参加する合宿で、果たして、どれほどの子どもたちが、読経に耐えうるのか、いまだ疑問である。
二日目に海に行ったり、夕食にカレーを作る以外は全部読経。後は、合宿所のお掃除。
浄土真宗は他の宗教とは違って、妻を持ち、肉を食すことを許す、やや変わった宗教である。俗物まみれであるがゆえに、野次られたことも多々あるそうな。見方を変えれば、一般人にも親しめる宗教とも言えるが……。
他にも写真を何枚か、アユちゃんが携帯のカメラで写真を撮ったものがあるので、それと、自分の持っていたアルバムの写真を見比べてみる。高校生くらいであれば、アルバムをデコったりするけど、小学生時代はまだまだ物の扱いが雑で、写真屋さんでよくもらう10数枚ほど入る簡素な写真入れに、時系列も関係なしに乱雑に入れている。この写真がいつどこで撮ったものかとか、横に書いてくれていればヒントになるのに。
ああ、悔しい。
嘆いていても仕方ない。だが、ちゃんと、恋生と出会っていたのなら、出会った瞬間やその後も含めて大切に胸のなかにとっておきたかった。いまは写真や与えられた材料を見て推測するのみ。歯がゆい。
海風が頬を撫でる。子どもがきゃっきゃ言っていて、船頭を見ればタイタニックごっこをしている学生がいた。若い。
青い帽子に隠れたその頭を撫でてみる。すこしでもなにか、思い出せたらいいのに。あなたの声。存在も。
汽笛が鳴った。陸に上陸する合図だ。他の観光客に倣って船を降りる。最初に行くのは、ガラスの美術館だ。
*
緑豊かな丘のうえにそびえたつ、宇宙船を思わせるアーティスティックな外観。館内はまるで宇宙船のなかに迷い込んだよう。無機質なガラス。透けた階段、ガラスの種類もさまざまで透明度の高いもの、すりガラスの窓があったり……。水族館に入ったかのような独特の浮遊感を味わう。
ガラスの工芸品を数多置いた日本随一の美術館である石川県海野小島ガラス美術館。いまはネットに情報があふれているので、外国人観光客の姿も目立つ。昔は、観光地って日本人だらけだったのにね。円安も手伝って。
階段を下りると赤い格子ガラスの窓があり、立ってみるとガラスが透明になる。……へえ、面白い。ガラスの間に液晶が組み込まれ、足形のうえに立つと電流が流れる仕掛けらしい。
――面白いよね。
あなたが見たらきっとそう言うに違いない。微笑みつつ、段を下り、たっぷりと館内を堪能したのちに、建物を出て、斜面に沿って続く階段を下る。花畑が広がっており、建物の風貌も相まって、素晴らしい意匠を奏でる。海風と草の香りが混ざり合い、ほんのりと、胸の中に新しい風が吹き込んでくる。海野小島湾を見渡せるこの眺望。見事だ。写真を撮る観光客が多い。
ふとスマートフォンを構えて写真を撮ったときだった。――海へと目が引き寄せられる。わたし、
(あの海に見覚えがある)
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