4 / 20
雅之視点
その男、『今元春』につき~其の壱~
しおりを挟む
今回はマッチョなおっさん・梶原常務のお話です。
********************************************
その男、『今元春』につき… ~其の壱~
「雅之さん、別れてください…。」
それは突然の出来事だった。
結婚して5年。
ようやく落ち着き始めたころに俺・梶原雅之は妻・霞から離婚を突き付けられた。
理由は…。
『雅之さんは絶倫すぎて私には無理!』
だった。
あまりのことに俺は呆然と立ち尽くした。
幼い頃から剣道や柔道、空手といった格闘技に慣れ親しみ、鍛えていた俺は必然的にガッチリ体系になった。
そこへもってきて某青春ドラマの影響でラグビーを始めてしまったものだから、それはもうターミネーターかロッキーかというような筋骨隆々のマッチョマンになってしまった。
それが原因で中高と異性からは怖がられ、敬遠される羽目に…。
大学はスポーツ推薦でラグビー強豪校のK大へ進学した。
結構モテた、と思う。
告白されて、付き合った女性もいる。
だが、決まって長続きはしない…。
理由は『セックスが激しすぎてついていけない。』とか『雅之さんのアレが大きすぎて耐えられない』などという俺にはどうしようもできないことだった。
結果、俺は恋愛ができなくなってしまった。
大学に通っているうちはラグビーに打ち込むことで発散させ、社会人となってからは仕事に打ち込むことで発散させてきた。
それでも、堪るモノは堪るわけで…。
必然的に後腐れないその場だけの付き合いが増える。
俗にいう『ワンナイトラブ』だ。
先輩に連れていかれたバーに通うようになり、そこで気の合った女性とホテルへ…。
そんな状態が何年も続き、気付くと35になっていた。
そうして出会ったのが部下となった一之瀬佳織だ。
彼女は気が強くはっきりとものを言う。
かと思えば可愛らしく笑ってみせる。
俺の心は彼女に捕らえられてしまった。
だが、告白する勇気は俺にはなかった。
何故なら、彼女には大学時代から付き合っているという男性がいたから…。
終業後、彼女を迎えに来るその彼氏を見かけたことがある。
とても仲のよさそうに腕を組んだいた。
そして、聞こえてきたのは『結婚間近』との噂だ。
俺は嫉妬に狂いそうになる心に蓋をして彼女を諦めることにした。
その頃から俺は結婚相手を探すようになった。
自分が既婚者となれば彼女のことを気にかけることもなくなるだろうと思ったからだ。
とは言え、大学時代でのトラウマから恋愛をすることに踏み出せない。
そこで、俺は上司やら親戚やらに勧められて見合いをし始める。
だが、結果は全戦全敗。
それ故、皆諦めて俺に縁談を持ってこなくなった。
その時、俺は既に45になっていた。
(はは、俺はこのまま孤独死コースか…。)
などと項垂れていた時、海外を飛び回る妹の相楽登紀子から一人の女性を紹介された。
それが今回離婚を突き付けられた霞なのだが…。
彼女は父親の影響で筋肉質なマッチョな男が好みだという。
ただそれだけで登紀子は俺を紹介してきたのだが、話してみると共通の話題が多く会う頻度が増えた。
そうして1年付き合ったのち俺は霞と結婚をした。
気が付くと俺は年若い霞に溺れていた。
46になった俺は早く子供が欲しくて毎晩のように抱いた。
どうやらそれがいけなかったらしい。
気づいた時には寝室は別にされ、俺からの誘いはやんわりと断られるようになった。
そこへ役員昇進の打診もあり、俺と霞は少しずつすれ違うようになった。
結果、今回俺は離婚を突き付けられたわけである。
どうやら霞には気になる男性ができたらしい。
霞は30目前ということもあってか早々に離婚を迫ってきた。
俺は仕方なく離婚届に判を押した。
だが、この後俺は霞のしたたかさを思い知ることになる。
財産分与を求めて訴訟を起こしたのだ。
俺は何が何だかわからずただただ流されるだけだった。
それを見かねたのが兄の大江崇之が優秀な弁護士を付けてくれた。
兄が付けてくれた弁護士は訴訟内容を吟味し、大風呂敷を広げることなく優先順位をつけて処理してくれた。
お陰で俺は仕事に注力することができた。
それでも裁判はなかなか進まず1年を要することになる。
さて、少し時間をさかのぼる。
離婚届けと提出し、受理されたのは去年の4月の初めだった。
年度替わりもあって新たな人事が発表された。
そこで俺は驚きの事実を知ることになる。
なんと部下であった一之瀬佳織が営業三課の課長に昇進したのだ。
俺はその事実に混乱した。
てっきり、あの時付き合っていた彼と結婚したものと思っていたから…。
俺はあまりのことに人事部に詰め寄った。
勿論、まともに相手にされなかったが。
俺は独自に調査を進め、彼女の補佐役が妹の娘で姪である相楽春香だと突き止めた。
そして事の真偽を確かめるため、春香を常務室に呼んだ。
まったくの私情なので終業後にであるが。
「伯父さん、急に何ですか?」
「じ、実は聞きたいことがあって、だな…。」
「一之瀬課長のことですか?」
「な、何故わかった?!」
「いや、だって、人事部の同期が『梶原常務が一之瀬課長のことで詰め寄ってきた』っていったもん。」
「…………。」
「で、課長の何が知りたいんですか?」
「えっと、だなぁ…。」
「あぁ、はいはい。 まずは彼氏のことですね?」
「お前はエスパーか?!」
「いえ、単に伯父さんの表情を読み取っただけです。」
「そ、そうか…。」
「えっと、知りたいのは課長が何で結婚しなかったか、ですよね?」
「あ、ああ。」
「彼氏さんが海外赴任になったかららしいですよ。」
「海外赴任?」
「彼氏さん、海外事業部に勤務しててエースだったらしく、ロンドンへの転勤を打診されたんですって。
でも、そのころ大きなプロジェクトを任されてた課長は悩んだそうです。
結局、意見の相違で別れたとか。
まぁ、彼氏さんの浮気やらも発覚して一気に醒めたらしいです。」
「そう、だったのか…。」
「それが10年前。」
「な、なにぃぃぃぃぃ!!!」
「急に大きな声出さないでくださいよ。」
俺は項垂れた。
一之瀬は10年前からフリーだった。
俺の頭の中はまさに『あしたのジョー』の最終回だった。
真っ白に燃え尽きた。
そんな感じである。
あ、若干魂が抜けかけたかも…。
「伯父さ~~~ん。」
「はっ!」
「生きてる?」
「生きてる。」
「ほかに知りたいことは?」
「あ、いや、特には…。」
「ほんとにぃ?」
「…………。」
「もう、素直じゃないんだから。」
「春香…。」
「課長、彼氏と別れた後に一度伯父さんに相談してるんだよ?」
「え?」
「あ、やっぱり気づいてないんだ。」
「ま、課長ってプライベートは見せない人だからなぁ。」
春香のその言葉に俺は思い出した。
俺は一度だけ一之瀬から仕事について相談を受けたことがあった。
『新プロジェクトに自分がこのまま参加してもよいのだろうか?』と、打ち明けられたのだ。
俺は一之瀬の能力から考えて『新プロジェクトに参加しないなどありえない』と答えた気がする。
そこで俺の思考は止まった。
あの一言が彼女の人生を決めてしまったように思えたのだ。
だが、同時に彼女が男に靡くのをやめるきっかけを作ったことになる。
「で、伯父さんは課長とどうなりたい?」
「そ、それは…。」
「美味しく頂きたいのかな?」
「春香、下品だぞ。」
「綺麗に着飾ってもやること一緒でしょ?」
ニッコリ笑って身も蓋もないことを言う姪っ子。
蛙の子は蛙というか、あの母にしてこの娘あり。
似たもの母娘だ。
「知っての通り、俺もつい最近フリーになった。」
「ですね。」
「できたら、一之瀬とお近づきに…。」
「はいはい、どうやったらベッドインできるかでしょ?」
「春香ぁ~。」
「じゃ、一つ教えてあげる。」
「何だ?」
「課長、めちゃめちゃお酒弱いの。」
「だから?」
「うん、昇進祝いとか言って馴染みのバーにでも連れてって、飲みやすい甘いカクテルを勧める。」
「甘いカクテル…。」
「多分、すぐに酔い潰れちゃうから。」
「で?」
「もう、決まってるでしょ!
介抱するフリしてホテルに連れ込む!!」
「おい!」
「だって、課長はアラフォーですよ。
伯父さんだって50過ぎちゃってるんだから。
ここは既成事実作って囲い込むしかないでしょ?!」
「……………。」
春香の提案に俺は頭を抱える。
「じゃ、頑張ってね。
いい報告を待ってま~す♪」
春香はヒラヒラと手を振って常務室を出て行った。
あとに残った俺はどうすべきか思案する。
だが、これ以上時間を無駄にはできない。
だから、俺は春香の提案に乗ることにした。
プライベート用のスマホを取り出し、アドレス帳から一之瀬の番号を探し出す。
震える手で彼女の番号をタップした。
コール音が鳴り響く。
俺の心臓はコールするたびにドクドクと早鐘を打つ。
そして、10回目のコールで彼女が出た。
『はい、一之瀬です。』
「梶原だが…。」
『梶原常務? どうされたんですか?』
「課長昇進おめでとう。」
『あ、ありがとうございます。』
「どうだろう、昇進祝いをしたいのだが今夜空いてるかな?」
『え? あ、はい! 空いてます!』
「そうか、なら、向かいのコーヒーショップで待っててくれるかな?」
『分かりました。』
「じゃ、またあとで…。」
そう言って電話を切った。
そして、急いで残りの仕事を片付ける。
(どうか、今夜彼女をものにできますように…。)
そう祈りながら、常務室を後にしコーヒーショップへと向かったのだった。
************************************************
とりあえず、1年前までの出来事がここまでです。
彼は如何にして佳織を落としたのか?
次回明かしたいと思います。
補足その1
『今元春』とは『今世によ蘇った吉川元春のようだ』という意味です。
出雲出身なので毛利家で山陰を収めた元就の次男・吉川元春になぞらえてみました。
武闘派の元春は筋骨隆々のラガーマン・雅之のイメージにぴったりだったのでこのあだ名にしました。
補足その2
兄の大江崇之と苗字が違うのは雅之が母の実家に養子に出されたからです。
母は一人娘で梶原家に跡継ぎいなかったので次男の雅之に白羽の矢が立ったわけです。
********************************************
その男、『今元春』につき… ~其の壱~
「雅之さん、別れてください…。」
それは突然の出来事だった。
結婚して5年。
ようやく落ち着き始めたころに俺・梶原雅之は妻・霞から離婚を突き付けられた。
理由は…。
『雅之さんは絶倫すぎて私には無理!』
だった。
あまりのことに俺は呆然と立ち尽くした。
幼い頃から剣道や柔道、空手といった格闘技に慣れ親しみ、鍛えていた俺は必然的にガッチリ体系になった。
そこへもってきて某青春ドラマの影響でラグビーを始めてしまったものだから、それはもうターミネーターかロッキーかというような筋骨隆々のマッチョマンになってしまった。
それが原因で中高と異性からは怖がられ、敬遠される羽目に…。
大学はスポーツ推薦でラグビー強豪校のK大へ進学した。
結構モテた、と思う。
告白されて、付き合った女性もいる。
だが、決まって長続きはしない…。
理由は『セックスが激しすぎてついていけない。』とか『雅之さんのアレが大きすぎて耐えられない』などという俺にはどうしようもできないことだった。
結果、俺は恋愛ができなくなってしまった。
大学に通っているうちはラグビーに打ち込むことで発散させ、社会人となってからは仕事に打ち込むことで発散させてきた。
それでも、堪るモノは堪るわけで…。
必然的に後腐れないその場だけの付き合いが増える。
俗にいう『ワンナイトラブ』だ。
先輩に連れていかれたバーに通うようになり、そこで気の合った女性とホテルへ…。
そんな状態が何年も続き、気付くと35になっていた。
そうして出会ったのが部下となった一之瀬佳織だ。
彼女は気が強くはっきりとものを言う。
かと思えば可愛らしく笑ってみせる。
俺の心は彼女に捕らえられてしまった。
だが、告白する勇気は俺にはなかった。
何故なら、彼女には大学時代から付き合っているという男性がいたから…。
終業後、彼女を迎えに来るその彼氏を見かけたことがある。
とても仲のよさそうに腕を組んだいた。
そして、聞こえてきたのは『結婚間近』との噂だ。
俺は嫉妬に狂いそうになる心に蓋をして彼女を諦めることにした。
その頃から俺は結婚相手を探すようになった。
自分が既婚者となれば彼女のことを気にかけることもなくなるだろうと思ったからだ。
とは言え、大学時代でのトラウマから恋愛をすることに踏み出せない。
そこで、俺は上司やら親戚やらに勧められて見合いをし始める。
だが、結果は全戦全敗。
それ故、皆諦めて俺に縁談を持ってこなくなった。
その時、俺は既に45になっていた。
(はは、俺はこのまま孤独死コースか…。)
などと項垂れていた時、海外を飛び回る妹の相楽登紀子から一人の女性を紹介された。
それが今回離婚を突き付けられた霞なのだが…。
彼女は父親の影響で筋肉質なマッチョな男が好みだという。
ただそれだけで登紀子は俺を紹介してきたのだが、話してみると共通の話題が多く会う頻度が増えた。
そうして1年付き合ったのち俺は霞と結婚をした。
気が付くと俺は年若い霞に溺れていた。
46になった俺は早く子供が欲しくて毎晩のように抱いた。
どうやらそれがいけなかったらしい。
気づいた時には寝室は別にされ、俺からの誘いはやんわりと断られるようになった。
そこへ役員昇進の打診もあり、俺と霞は少しずつすれ違うようになった。
結果、今回俺は離婚を突き付けられたわけである。
どうやら霞には気になる男性ができたらしい。
霞は30目前ということもあってか早々に離婚を迫ってきた。
俺は仕方なく離婚届に判を押した。
だが、この後俺は霞のしたたかさを思い知ることになる。
財産分与を求めて訴訟を起こしたのだ。
俺は何が何だかわからずただただ流されるだけだった。
それを見かねたのが兄の大江崇之が優秀な弁護士を付けてくれた。
兄が付けてくれた弁護士は訴訟内容を吟味し、大風呂敷を広げることなく優先順位をつけて処理してくれた。
お陰で俺は仕事に注力することができた。
それでも裁判はなかなか進まず1年を要することになる。
さて、少し時間をさかのぼる。
離婚届けと提出し、受理されたのは去年の4月の初めだった。
年度替わりもあって新たな人事が発表された。
そこで俺は驚きの事実を知ることになる。
なんと部下であった一之瀬佳織が営業三課の課長に昇進したのだ。
俺はその事実に混乱した。
てっきり、あの時付き合っていた彼と結婚したものと思っていたから…。
俺はあまりのことに人事部に詰め寄った。
勿論、まともに相手にされなかったが。
俺は独自に調査を進め、彼女の補佐役が妹の娘で姪である相楽春香だと突き止めた。
そして事の真偽を確かめるため、春香を常務室に呼んだ。
まったくの私情なので終業後にであるが。
「伯父さん、急に何ですか?」
「じ、実は聞きたいことがあって、だな…。」
「一之瀬課長のことですか?」
「な、何故わかった?!」
「いや、だって、人事部の同期が『梶原常務が一之瀬課長のことで詰め寄ってきた』っていったもん。」
「…………。」
「で、課長の何が知りたいんですか?」
「えっと、だなぁ…。」
「あぁ、はいはい。 まずは彼氏のことですね?」
「お前はエスパーか?!」
「いえ、単に伯父さんの表情を読み取っただけです。」
「そ、そうか…。」
「えっと、知りたいのは課長が何で結婚しなかったか、ですよね?」
「あ、ああ。」
「彼氏さんが海外赴任になったかららしいですよ。」
「海外赴任?」
「彼氏さん、海外事業部に勤務しててエースだったらしく、ロンドンへの転勤を打診されたんですって。
でも、そのころ大きなプロジェクトを任されてた課長は悩んだそうです。
結局、意見の相違で別れたとか。
まぁ、彼氏さんの浮気やらも発覚して一気に醒めたらしいです。」
「そう、だったのか…。」
「それが10年前。」
「な、なにぃぃぃぃぃ!!!」
「急に大きな声出さないでくださいよ。」
俺は項垂れた。
一之瀬は10年前からフリーだった。
俺の頭の中はまさに『あしたのジョー』の最終回だった。
真っ白に燃え尽きた。
そんな感じである。
あ、若干魂が抜けかけたかも…。
「伯父さ~~~ん。」
「はっ!」
「生きてる?」
「生きてる。」
「ほかに知りたいことは?」
「あ、いや、特には…。」
「ほんとにぃ?」
「…………。」
「もう、素直じゃないんだから。」
「春香…。」
「課長、彼氏と別れた後に一度伯父さんに相談してるんだよ?」
「え?」
「あ、やっぱり気づいてないんだ。」
「ま、課長ってプライベートは見せない人だからなぁ。」
春香のその言葉に俺は思い出した。
俺は一度だけ一之瀬から仕事について相談を受けたことがあった。
『新プロジェクトに自分がこのまま参加してもよいのだろうか?』と、打ち明けられたのだ。
俺は一之瀬の能力から考えて『新プロジェクトに参加しないなどありえない』と答えた気がする。
そこで俺の思考は止まった。
あの一言が彼女の人生を決めてしまったように思えたのだ。
だが、同時に彼女が男に靡くのをやめるきっかけを作ったことになる。
「で、伯父さんは課長とどうなりたい?」
「そ、それは…。」
「美味しく頂きたいのかな?」
「春香、下品だぞ。」
「綺麗に着飾ってもやること一緒でしょ?」
ニッコリ笑って身も蓋もないことを言う姪っ子。
蛙の子は蛙というか、あの母にしてこの娘あり。
似たもの母娘だ。
「知っての通り、俺もつい最近フリーになった。」
「ですね。」
「できたら、一之瀬とお近づきに…。」
「はいはい、どうやったらベッドインできるかでしょ?」
「春香ぁ~。」
「じゃ、一つ教えてあげる。」
「何だ?」
「課長、めちゃめちゃお酒弱いの。」
「だから?」
「うん、昇進祝いとか言って馴染みのバーにでも連れてって、飲みやすい甘いカクテルを勧める。」
「甘いカクテル…。」
「多分、すぐに酔い潰れちゃうから。」
「で?」
「もう、決まってるでしょ!
介抱するフリしてホテルに連れ込む!!」
「おい!」
「だって、課長はアラフォーですよ。
伯父さんだって50過ぎちゃってるんだから。
ここは既成事実作って囲い込むしかないでしょ?!」
「……………。」
春香の提案に俺は頭を抱える。
「じゃ、頑張ってね。
いい報告を待ってま~す♪」
春香はヒラヒラと手を振って常務室を出て行った。
あとに残った俺はどうすべきか思案する。
だが、これ以上時間を無駄にはできない。
だから、俺は春香の提案に乗ることにした。
プライベート用のスマホを取り出し、アドレス帳から一之瀬の番号を探し出す。
震える手で彼女の番号をタップした。
コール音が鳴り響く。
俺の心臓はコールするたびにドクドクと早鐘を打つ。
そして、10回目のコールで彼女が出た。
『はい、一之瀬です。』
「梶原だが…。」
『梶原常務? どうされたんですか?』
「課長昇進おめでとう。」
『あ、ありがとうございます。』
「どうだろう、昇進祝いをしたいのだが今夜空いてるかな?」
『え? あ、はい! 空いてます!』
「そうか、なら、向かいのコーヒーショップで待っててくれるかな?」
『分かりました。』
「じゃ、またあとで…。」
そう言って電話を切った。
そして、急いで残りの仕事を片付ける。
(どうか、今夜彼女をものにできますように…。)
そう祈りながら、常務室を後にしコーヒーショップへと向かったのだった。
************************************************
とりあえず、1年前までの出来事がここまでです。
彼は如何にして佳織を落としたのか?
次回明かしたいと思います。
補足その1
『今元春』とは『今世によ蘇った吉川元春のようだ』という意味です。
出雲出身なので毛利家で山陰を収めた元就の次男・吉川元春になぞらえてみました。
武闘派の元春は筋骨隆々のラガーマン・雅之のイメージにぴったりだったのでこのあだ名にしました。
補足その2
兄の大江崇之と苗字が違うのは雅之が母の実家に養子に出されたからです。
母は一人娘で梶原家に跡継ぎいなかったので次男の雅之に白羽の矢が立ったわけです。
1
あなたにおすすめの小説
1泊2日のバスツアーで出会った魔性の女と筋肉男
狭山雪菜
恋愛
富士川紗英は、32歳の社会人。
疲れた身体を癒そうと、自宅のポストに入っていた葡萄狩りツアーに申し込む。
バスツアー当日に出会った、金田郁也と意気投合して…
こちらの作品は「小説家になろう」に掲載しております。
続・上司に恋していいですか?
茜色
恋愛
営業課長、成瀬省吾(なるせ しょうご)が部下の椎名澪(しいな みお)と恋人同士になって早や半年。
会社ではコンビを組んで仕事に励み、休日はふたりきりで甘いひとときを過ごす。そんな充実した日々を送っているのだが、近ごろ澪の様子が少しおかしい。何も話そうとしない恋人の様子が気にかかる省吾だったが、そんな彼にも仕事上で大きな転機が訪れようとしていて・・・。
☆『上司に恋していいですか?』の続編です。全6話です。前作ラストから半年後を描いた後日談となります。今回は男性側、省吾の視点となっています。
「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しています。
結婚式に代理出席したら花嫁になっちゃいました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
美希は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、結婚式の友人の代理出席をする予定で式場にいたのに!?
本編は完結してますが、色々描き足りなかったので、第2章も書いています。
僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜
柿 心刃
恋愛
僕の幼馴染で姉的な存在である西田香奈は、眉目秀麗・品行方正・成績優秀と三拍子揃った女の子だ。彼女は、この辺りじゃ有名な女子校に通っている。僕とは何の接点もないように思える香奈姉ちゃんが、ある日、急に僕に急接近してきた。
僕の名は、周防楓。
女子校とは反対側にある男子校に通う、ごく普通の男子だ。
愛情に気づかない鈍感な私
はなおくら
恋愛
幼少の頃、まだ5歳にも満たない私たちは政略結婚という形で夫婦になった。初めて顔を合わせた時、嬉し恥ずかしながら笑い合い、私たちは友達になった。大きくなるにつれて、夫婦が友人同士というのにも違和感を覚えた私は、成人を迎えるその日離婚をするつもりでいた。だけど、彼は私の考えを聞いた瞬間豹変した。
上司に恋していいですか?
茜色
恋愛
恋愛に臆病な28歳のOL椎名澪(しいな みお)は、かつて自分をフッた男性が別の女性と結婚するという噂を聞く。ますます自信を失い落ち込んだ日々を送っていた澪は、仕事で大きなミスを犯してしまう。ことの重大さに動揺する澪の窮地を救ってくれたのは、以前から密かに憧れていた課長の成瀬昇吾(なるせ しょうご)だった。
澪より7歳年上の成瀬は、仕事もできてモテるのに何故か未だに独身で謎の多い人物。澪は自分など相手にされないと遠慮しつつ、仕事を通して一緒に過ごすうちに、成瀬に惹かれる想いを抑えられなくなっていく。けれども社内には、成瀬に関する気になる噂があって・・・。
※ R18描写は後半まで出てきません。「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しています。
そんな目で見ないで。
春密まつり
恋愛
職場の廊下で呼び止められ、無口な後輩の司に告白をされた真子。
勢いのまま承諾するが、口数の少ない彼との距離がなかなか縮まらない。
そのくせ、キスをする時は情熱的だった。
司の知らない一面を知ることによって惹かれ始め、身体を重ねるが、司の熱のこもった視線に真子は混乱し、怖くなった。
それから身体を重ねることを拒否し続けるが――。
▼2019年2月発行のオリジナルTL小説のWEB再録です。
▼全8話の短編連載
▼Rシーンが含まれる話には「*」マークをつけています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる