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恋人編~同棲始めました~
那須高原へ行こう~其の参~
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連休二日目です。
雅之視点で出てきたパドックの彼の正体が明かされます。
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那須高原へ行こう~其の参~
部屋に響き渡るのはベッドの軋む音と卑猥な水音。
そして、佳織の喘ぎ声と俺の荒い息遣い。
「佳織…。」
「あんっ、ふぁっ。 ま、雅之、さん…、そ、そこ、ダメぇ…。」
「うん? ここがイイの間違いだろ?」
そう言って俺は強く突き上げる。
佳織が感じているのがわかる。
だから俺は繋がりを深くするように奥を穿つ。
「佳織、気持ちイイ?」
「うん…、気持ち、イイ…。」
佳織が俺の肩にしがみついてくる。
佳織の中が俺の逸物を締め上げる。
どうやら限界が近いらしい。
「佳織、そろそろいいか?」
佳織はコクコクと頷く。
俺は腰を打ち付ける速度を一気に上げる。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「くっ!!」
佳織が嬌声とともにイッた。
それと同時に中が蠢き、俺の逸物をさらに締め上げ、白濁を搾り取る。
俺はその快感に身をゆだね、最奥にその白濁を流し込んだ。
そして、そのまま佳織の上へと倒れ込む。
「「はぁ、はぁ、はぁ…。」」
繋がったまま体を重ね、息を整える。
呼吸が整ったところで一度口づけを交わし、起き上がり彼女の中から逸物を引き抜く。
そして、隣に寝転ぶ。
「雅之さん、今日はいつにも増して激しかった…。」
「そうか?」
「うん…。」
「やっぱ、いつもと違うからか?」
「これからも二人で出かけましょうね。」
「そうだな。
なら、夏季休暇の行き先考えといてくれよ。」
「フフフ、実はもう考えてあります。」
「そうなのか?」
「というか、両親の代わりに墓参りですけど。」
「お袋さんの実家、白老だっけ?」
「はい、今年も帰れそうにないらしくて代わりに行ってきてくれって…。
叔父も今年はいい仔が生まれたから見に来いって言ってますし。」
「てことは、牧場巡りになりそうだな。」
「そうですね…。」
佳織の声が少しトーンダウンしていたのは気のせいだろうか?
顔色を窺おうとしたが、胸に顔を埋めてきたのでそれもできない。
それでも甘えてくれていることが嬉しくて俺は彼女の肩を抱き寄せ眠りにつくことにした。
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翌朝、二人で朝食をとる。
勿論作ってくれるのは佳織だ。
昨夜、いつもより激しかったと言っていたがその割には普通に起きてるのが不思議だ。
「なぁ、佳織って何か武道とかやってたのか?」
「いきなりなんですか。」
「いや、昨日『いつもより激しかった』って言ってた割に普通に朝食作ってるから。」
「一応、剣道と空手は段持ってますよ。」
「やっぱり…。」
「両親の仕事の関係で海外生活が長いんです。
護身術として父から習いました。」
「親父さんから?」
「以前話した通り父は元フランス外国人部隊に所属してましたので白兵戦や銃器の扱いは得意です。」
でも、銃器は扱いを間違えると暴発するので教えてくれませんでしたけど。」
「いや、教えてもらわなくていいと思う。」
「そうですか?」
「それだとどっかのアクション映画のヒロインだ。」
「それもそうですね。」
「他は何かやってたのかい?」
「そうですねぇ、乗馬くらいですか。」
「乗馬か…。」
「あ、今日はちゃんと乗馬しましょうね。」
「え?」
「昨日は何だかアリオーンに邪魔されちゃいましたから。」
「じゃ、これが終わったら早速向かおうか。」
俺たちは朝食を終えて、再び牧場へと向かった。
迎えてくれたのは昨日と同じく速水さんだった。
「佳織さん、今日は乗っていきますか?」
「ええ、そのつもり。」
「えっと…、梶原さんでしたっけ。
あなたも乗っていきます?」
「勿論です。 折角ここまで来たのに乗らないっていうのはもったいないですから。」
「そうですね。」
「じゃ、準備してきます。」
それからすぐに準備して俺たちは散策に出た。
馬上から見る景色は視線が高くなるためかまるで違って見えた。
「視線が高くなるだけでこうも見える景色が違うなんてな。」
「そうですね、そうやって乗馬に嵌っていくですよ。」
「なるほど…。」
「あまり遅くなるといけないからそろそろ戻りましょうか?」
「ああ、そうしよう。」
俺たちは元来た道を戻る。
やがて、厩舎が見えてくると速水さんが誰かと話しているのが見えた。
その相手に俺は見覚えがあった。
あの日…、有馬記念の日にパドックで佳織に声を掛けていた男だった。
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私は雅之さんが乗馬に理解を示したくれて嬉しかった。
来月の夏季休暇は母の実家の牧場に帰る予定だからそこでもっとじっくり二人で乗馬を楽しもう。
(生産牧場を営んでる哲郎叔父さんのこと理解してくれるといいんだけど…。
逸郎叔父さんは…。 あの人はいいか。 色々と面倒くさいし。)
そんな思いを巡らしながら牧場に戻るとそこには見慣れた男が速水さんと話をしていた。
三つ揃えのスーツに、サングラス。
全くもって場違いな男。
そこから放たれるオーラは普通の女性ならときめくだろう。
が、私はちっともときめかない。
だって、コイツは細マッチョなんだもん。
私が好きなのは雅之さんみたいに筋骨隆々のガチなマッチョだから。
そんなことは置いといて、コイツが何しにここへ来たのか聞かなくては。
「良くここがわかったわね。」
「や、おかえり。」
「答えになってない。 で、何でここにいるわけ?」
「いちゃ悪い。」
「悪いっていうか、仕事は?」
「彼の依頼でこっちに来てるんだよ。」
「彼?」
「黒獅子…。」
「あいつ、今度は何するつもりなの?」
私は馬を降りて手綱を厩務員さんに渡し、後のことを頼みながら話を続けた。
「どうやら日本法人を立ち上げる気だよ。」
「それって…。」
「いよいよ、本格的に始めるらしい。」
「それで?」
「佳織にも手伝ってほしいってさ。」
「あぁ、やっぱりそう来るか…。」
「ねぇ、それより、そちらさんは?」
「あ…。」
しまった。 すっかり雅之さんのこと忘れてコイツと話進めてたわ。
指摘されて思い出し、振り返ると、眉間に皺を寄せてコイツのことを睨んでます。
「雅之さん?」
「話しが弾んでるところ悪いが、こちらは?」
「えっと…。」
私がどう説明しようかと戸惑っていたら、コイツが先に動いたよ。
サングラスを外し、内ポケットから名刺を取り出すと雅之さんに差し出す。
「初めまして。
私はI.N.ファンドの一之瀬雅紀と申します。」
「一之瀬って…。」
「はい、ここにいる一之瀬佳織は私の姉です。」
「佳織の弟…。」
あれ? 雅之さん、なんかホッとしてる。
なんでだろう? 急に眉間の皺がなくなったし、目つきも戻ってる。
で、コイツはそれ見てクスクス笑ってるし。
何なんだ? いつの間にか私が置いてきぼりじゃないか。
ちょっと腹立つ。
「もしかして、姉とのことを変に勘ぐってましたか?」
「!!!!」
「そうだと思いましたよ。
でなければ、あの日パドックで俺たちのことを呆然と見ていたりしないでしょうからね。」
「!!!!!!!」
コイツの言葉に雅之さんが動揺している。
左手の拳をギュッと握りしめてるのがわかる。
無性に腹が立ってきた。
なので思いっきり脇腹に鉄拳ぶち込んでやった。
「ゲフッ!」
「いい加減にしろ、この馬鹿が!!」
「いきなり脇腹はないだろ。」
「黒い顔して雅之さんを貶めるからよ。」
「ちょっとからかっただけじゃん。」
「ちょっとぉ?」
「あ、いえ…、その…。」
「ほぉぉ、雅紀君にとっては今のが『ちょっと』なのね。」
私はボキボキと指の関節鳴らしながら臨戦態勢になる。
コイツはつけあがると碌なことをしない。
だから、今のうちに締め上げるに限る。
「わぁ、もうしませんから、その鉄拳は収めてもらえませんか?」
「じゃ、堂島ロール3本ね。」
「え?」
「だって、仕事なら栗東にも顔出すんでしょ?」
「うん、まぁ、そうだけど…。」
「じゃ、よろしく。」
とりあえず、一蹴完了。
暫くはおとなしくなるだろう。
「雅之さん、ごめんなさいね。 デリカシーのない弟で。」
「あ、いや、それは…。」
「で、この人ってもしかしなくても佳織の彼氏?」
「彼氏じゃないわよ。」
「「え?」」
あ、二人して驚いてる。
まぁ、多分、意味合いは違うだろうけど。
「彼氏じゃなくて…。」
そこで一旦言葉を切った。
若干、雅之さんの顔が青い。
これがいわゆる顔面蒼白って奴だなぁ、と思う。
私はニッコリ笑顔を作って言い放つ。
「婚約者よ。」
あ、雅之さんが今度は泣きそうな顔になってる。
逆にコイツは心底驚いた顔をしていた。
「で、あんたはどこで雅之さんを見たの?」
「あ、そこ、聞くのね。」
「後顧の憂いはすべて断つ。」
「はいはい。 わかりました。
去年の有馬記念の日だよ。」
「え?」
「佳織、パドックで写真撮ってたでしょ。
その時俺が声を掛けたの覚えてる?」
「そういえばそんなことあったか…。」
「んで、珍しく俺に笑顔を見せてくれて。
こっちを見てる視線に気が付いたら、そこの彼が茫然自失で立ってたの。」
「えぇ!! そんなことがあったの?」
「そ。 でも、この人、すぐにいなくなっちゃったから誤解を解く暇もなくてさ。」
「だからって、さっきの態度はないでしょ。
雅之さんにもちゃんと謝んなさい!!」
「えっと…、申し訳ない。」
「あ、いや、その…。」
「雅之さん、遠慮はいりません。
この際、肋骨の2~3本へし折ってやってもいいですから。」
「いや、そこまでは…。」
「コイツはすぐに図に乗るから一回締めといてください。
あ、そうそう、雅之さんは空手・柔道・剣道の有段者だから。」
「ひぇぇぇぇ、ご、ご勘弁を…。」
今度はコイツが顔面蒼白になってる。
イケメン細マッチョが台無しだ。
で、結局コイツがここに来たのは私に『黒獅子』からの書類を渡すためだった。
「返事はすぐでなくてもいいからってさ。」
「当たり前だ。 こんなもんすぐ返事ができるか!」
「ははは、そうだよね。
ところで、梶原さんは佳織とどこまで進んでるわけ?」
「どこまでというのは?」
「どういう付き合いをしてるかってこと。
勿論、体の関係含めてね。」
「佳織とは結婚を前提として一緒に住まわせてもらってる。」
「え?」
「雅之さん、去年離婚して財産分与で今まで住んでたマンション譲渡したのよ。
で、私の部屋に呼んだ。」
「へぇ、家族以外誰も部屋に上げたことなかったのにいきなり同棲?」
「悪い?」
「いや、全然。 むしろすぐにでも親父たちに知らせたい。」
「そこは自分で言うから黙っといて。」
「えぇぇぇ、別に減るもんじゃないでしょ。」
「あんたが言うと話が大きくなるでしょうが?!」
「あはっ。」
「佳織?」
「雅之さん、コイツに軽々しく話をしちゃだめですからね。
絶対話を大きくして大騒動になるんだから。」
「信用ないなぁ。」
「あんたのせいでどんだけ被害こうむったと思ってるのよ!!」
「あ、それは、否定できないかも。」
「今度やったら堂島ロール3倍に増やすわよ。」
「ショウチシマシタ。」
流石に今のは効いたらしい。
思いっきり、片言の返事をしてきた。
その様子に雅之さんが笑いだした。
さっきまでの表情が嘘みたいに心の底から笑ているのがわかった。
「雅之さん?」
「わ、悪い。」
「えっと…。」
「何か佳織の新しいところ発見できてうれしいよ。」
「そ、そう?」
「やっぱり、姉弟っていいな。」
「俺は妹しかいないから弟っていうのもいいなって思ったよ。」
「大丈夫ですよ。 すぐに義弟になりますから。
佳織のこと、離す気なんてないんでしょ?」
「勿論だ。」
「なら、早いとこ捕まえてくださいね。」
「言われなくてもそうするさ。」
「では、吉報を待ってます。」
雅紀はそれだけ言い残して、その場を去ろうとした。
が、すぐに立ち止まって振り返ると思いだしたように話し出した。
「そうだ。 一つ言い忘れてたよ。」
「何?」
「あいつ、戻ってきたんだって。」
「あいつ?」
「中川博史。 中川物産社長のバカ息子。」
「!!!」
「どうやら早速次の獲物を見つけたらしい…。」
「あの、馬鹿、証拠にもなく!」
「ただ、今回は人妻に手を出そうとしてるみたいだ。」
「人妻?」
「『願わくば、我に七難八苦を与えたまえ』」
「何、それ?」
「山中鹿之助…。」
「梶原さんはご存じなんですか?」
「俺は出雲出身だから。」
「なるほど、それなら話が早いや。
中川物産にその鹿之助の子孫がいるんだよ。」
「え?」
「まさか、山中幸久君か?」
「ご存知でしたか。」
「知ってるもなにも姪の夫だ。」
「これはまた、すごい偶然。」
「どういうことなの?」
「社内報って知ってる?」
「社員の慶事やらイベントごとやら人事異動とか載せるあれ?」
「そう、それにその山中幸久の結婚式の写真が載ったんだって。」
「はぁ、マジか…。」
「おい、どういうことだ?!」
「梶原さんの姪御さん、中川社長のバカ息子に目をつけられちゃったみたいなんだ。」
「なっ!」
「どうやら、あいつ、全然懲りてないみたい。
今回帰国させてもらえたのが自分の実績だと勘違いしてるんだろうね。
後始末は金の力でどうとでもなるって思ってるんじゃないかな?」
「あの時、最後通告してやったのにもう忘れてるのか…。」
「恐らく、バカ息子は自分の素行の悪さが会社にどれほどの損害を与えてるのかわかってないんじゃない?」
「どういうことだ?」
「雅之さん、こっから先はオフレコね。」
「佳織?」
「中川博史の素行はここ5年ほど前から問題視されてて。
それを理由に手を引こうとしてる投資家もいるの。」
「それを必死で止めてるのが専務の野田逸郎。
つまり、俺たちの叔父ね。」
「3年前、中川博史は女性社員の一人をレイプした。
社内恋愛だったらしくて、彼の出世をちらつかせて無理矢理手籠めにしたらしいわ。
それも会社の会議室で彼の目の前で犯したんですって。」
「ゲス野郎だな。」
「あのバカ息子は金で解決する気だったみたいだけど、相手が悪かった。
その彼女、株主のお嬢さんだったんだ。」
「あの時点で中川物産を潰すわけにはいかなくてうちの親父が処理することになったんだ。」
「どういうことだ?」
「中川物産の筆頭株主はI.N.ファンドだからよ。」
「そういうことか…。」
「結局、二人とも退職。
バカ息子の方は栄転と見せかけて海外左遷。
納得いく成果を上げるまでは帰国を許さないってことになった。」
「でも、どうやって帰ってきたの?」
「ああ、そこは中川社長が金に積んで実績作らせたみたいだね。」
「あの成金馬鹿は…。」
「まぁ、今回の相手は社外だから上手くいくと踏んでるんじゃないの?」
「そうは問屋が卸すか!!」
「うん、親父たちもそのつもりで動いてるよ。」
「中川物産を潰す気なの?」
「これは俺の推測だけど、頭を挿げ替えるつもりなんじゃない。」
「逸郎叔父さんを社長にでもする気?」
「というより、会社そのものを買収するみたい。
黒獅子と手を組んでね。」
「だが、それだと春香がそのバカ息子に喰われたらってことにならないか?」
「だから今話してるわけ。」
「彼女に囮になれってこと?」
「そうなるかな?」
「新婚の春香にそんなことさせれるか!!」
雅之さんが雅紀の胸倉掴んで激怒してます。
どうせなら、そのまま渾身の右ストレートを綺麗な顔に叩きんでほしいです。
「ちょ、ちょっと待ってください。
てか、佳織、止めてよ!!」
「いや、そのままアンタは殴られてなさい。」
「いやだぁ。 この後パーティーがあるんだからやめてぇ。」
「ほう、俺にこんな話をしておいてお前はそのパーティーとやらで女を口説くつもりなのか?」
「か、梶原さん。 俺の話まだ途中。
佳織、早く、この人止めて!!」
「チッ。」
「舌打ちしないで、止めてください。」
涙目で懇願してきたから不本意だけど雅之さんを止める。
雅之さんは不承不承と言った感じで雅紀を開放した。
「姪御さんには囮になってもらうことになりますが、恐らく喰われることはないですよ。」
「というか、喰われる前にバカ息子が使い物にならなくされるわよ。」
「どういう…。」
雅紀が一枚の資料を広げる。
それはスポーツ新聞の切り抜きのコピーだった。
内容はとある女子高生が空手の世界選手権で優勝したって記事。
それも、型ではなく実技の方で…。
「そういうことか…。」
「そういうことです。」
「佳織は知ってたのか?」
「空手やってるし、相楽さんのことは有名でしたから。
もともと彼女ってそっちで内定貰ってたはずですよ。」
「あぁ、そういえば人事部長の的場がそんなこと言って気がする。」
「どうやら納得してもらえたようですね。」
「だが、春香を黙って危険に晒すわけにはいかない。」
「その辺は佳織が何とかしてくれます。」
「仕方がないな。
相楽さんには私から話を通すからアンタは出てくんな。」
「えぇ、ちょっとくらい紹介してくれても…。」
「アンタは既婚者でしょうが!!!」
「茶飲み友達くらいにはって思ったんだけど…。」
「何言ってるのよ。
彼女の旦那さん、結構嫉妬深いの。
変に拗れて騒ぎが大きくなったら収集付かなくなるからやめなさい。」
「はぁ~い。」
気づくと雅之さんがポカンとしてる。
ごめんなさいね、コイツのこれは通常運転なのです。
「雅之さん?」
「あ、いや、その…。」
「ごめんなさい。 そろそろコテージに戻りましょうか…。」
「そう、だな…。」
「じゃ、俺も今度こそお暇しま~す。」
「とっとと帰れ!」
「ひ、酷い言われよう…。」
「何とでも言え! そうだ、東京に戻るの?」
「そうだよ。 一度オフィスに寄らなきゃならないから。」
「そう…。 じゃ、あのバカ息子に釘刺してきて。」
「それは構わないけど、何て言って釘刺すの?」
「そうね、『蒼虎は常にお前を見ている』って。」
「蒼虎ね。 どこまで効くかな?」
「即効性はないけど、後々効いてくるわよ。
それこそボディブローのようにね…。」
私は唇の端を上げて暗い笑いを浮かべた。
雅紀は肩を竦め苦笑する。
「わかった。 釘は刺しておくよ。」
そう言い残して今度こそ雅紀は去っていった。
あとに残った私たちもコテージへと引き上げる。
雅之さんにはちょっと嫌な思いをさせちゃったから今夜は色々奉仕してあげよう。
折角の旅行だし、素敵な思いで作らなきゃね。
連休はあと一日。
でも、まさか最終日があんなことになるなんてこの時の私は思ってもみなかったのだった。
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春香ちゃんの秘密、もう少し後で出てきます。
てか、バレバレですけどね。
次回は佳織の奉仕の結果です。
お約束な展開かなぁ。
雅之視点で出てきたパドックの彼の正体が明かされます。
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那須高原へ行こう~其の参~
部屋に響き渡るのはベッドの軋む音と卑猥な水音。
そして、佳織の喘ぎ声と俺の荒い息遣い。
「佳織…。」
「あんっ、ふぁっ。 ま、雅之、さん…、そ、そこ、ダメぇ…。」
「うん? ここがイイの間違いだろ?」
そう言って俺は強く突き上げる。
佳織が感じているのがわかる。
だから俺は繋がりを深くするように奥を穿つ。
「佳織、気持ちイイ?」
「うん…、気持ち、イイ…。」
佳織が俺の肩にしがみついてくる。
佳織の中が俺の逸物を締め上げる。
どうやら限界が近いらしい。
「佳織、そろそろいいか?」
佳織はコクコクと頷く。
俺は腰を打ち付ける速度を一気に上げる。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「くっ!!」
佳織が嬌声とともにイッた。
それと同時に中が蠢き、俺の逸物をさらに締め上げ、白濁を搾り取る。
俺はその快感に身をゆだね、最奥にその白濁を流し込んだ。
そして、そのまま佳織の上へと倒れ込む。
「「はぁ、はぁ、はぁ…。」」
繋がったまま体を重ね、息を整える。
呼吸が整ったところで一度口づけを交わし、起き上がり彼女の中から逸物を引き抜く。
そして、隣に寝転ぶ。
「雅之さん、今日はいつにも増して激しかった…。」
「そうか?」
「うん…。」
「やっぱ、いつもと違うからか?」
「これからも二人で出かけましょうね。」
「そうだな。
なら、夏季休暇の行き先考えといてくれよ。」
「フフフ、実はもう考えてあります。」
「そうなのか?」
「というか、両親の代わりに墓参りですけど。」
「お袋さんの実家、白老だっけ?」
「はい、今年も帰れそうにないらしくて代わりに行ってきてくれって…。
叔父も今年はいい仔が生まれたから見に来いって言ってますし。」
「てことは、牧場巡りになりそうだな。」
「そうですね…。」
佳織の声が少しトーンダウンしていたのは気のせいだろうか?
顔色を窺おうとしたが、胸に顔を埋めてきたのでそれもできない。
それでも甘えてくれていることが嬉しくて俺は彼女の肩を抱き寄せ眠りにつくことにした。
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翌朝、二人で朝食をとる。
勿論作ってくれるのは佳織だ。
昨夜、いつもより激しかったと言っていたがその割には普通に起きてるのが不思議だ。
「なぁ、佳織って何か武道とかやってたのか?」
「いきなりなんですか。」
「いや、昨日『いつもより激しかった』って言ってた割に普通に朝食作ってるから。」
「一応、剣道と空手は段持ってますよ。」
「やっぱり…。」
「両親の仕事の関係で海外生活が長いんです。
護身術として父から習いました。」
「親父さんから?」
「以前話した通り父は元フランス外国人部隊に所属してましたので白兵戦や銃器の扱いは得意です。」
でも、銃器は扱いを間違えると暴発するので教えてくれませんでしたけど。」
「いや、教えてもらわなくていいと思う。」
「そうですか?」
「それだとどっかのアクション映画のヒロインだ。」
「それもそうですね。」
「他は何かやってたのかい?」
「そうですねぇ、乗馬くらいですか。」
「乗馬か…。」
「あ、今日はちゃんと乗馬しましょうね。」
「え?」
「昨日は何だかアリオーンに邪魔されちゃいましたから。」
「じゃ、これが終わったら早速向かおうか。」
俺たちは朝食を終えて、再び牧場へと向かった。
迎えてくれたのは昨日と同じく速水さんだった。
「佳織さん、今日は乗っていきますか?」
「ええ、そのつもり。」
「えっと…、梶原さんでしたっけ。
あなたも乗っていきます?」
「勿論です。 折角ここまで来たのに乗らないっていうのはもったいないですから。」
「そうですね。」
「じゃ、準備してきます。」
それからすぐに準備して俺たちは散策に出た。
馬上から見る景色は視線が高くなるためかまるで違って見えた。
「視線が高くなるだけでこうも見える景色が違うなんてな。」
「そうですね、そうやって乗馬に嵌っていくですよ。」
「なるほど…。」
「あまり遅くなるといけないからそろそろ戻りましょうか?」
「ああ、そうしよう。」
俺たちは元来た道を戻る。
やがて、厩舎が見えてくると速水さんが誰かと話しているのが見えた。
その相手に俺は見覚えがあった。
あの日…、有馬記念の日にパドックで佳織に声を掛けていた男だった。
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私は雅之さんが乗馬に理解を示したくれて嬉しかった。
来月の夏季休暇は母の実家の牧場に帰る予定だからそこでもっとじっくり二人で乗馬を楽しもう。
(生産牧場を営んでる哲郎叔父さんのこと理解してくれるといいんだけど…。
逸郎叔父さんは…。 あの人はいいか。 色々と面倒くさいし。)
そんな思いを巡らしながら牧場に戻るとそこには見慣れた男が速水さんと話をしていた。
三つ揃えのスーツに、サングラス。
全くもって場違いな男。
そこから放たれるオーラは普通の女性ならときめくだろう。
が、私はちっともときめかない。
だって、コイツは細マッチョなんだもん。
私が好きなのは雅之さんみたいに筋骨隆々のガチなマッチョだから。
そんなことは置いといて、コイツが何しにここへ来たのか聞かなくては。
「良くここがわかったわね。」
「や、おかえり。」
「答えになってない。 で、何でここにいるわけ?」
「いちゃ悪い。」
「悪いっていうか、仕事は?」
「彼の依頼でこっちに来てるんだよ。」
「彼?」
「黒獅子…。」
「あいつ、今度は何するつもりなの?」
私は馬を降りて手綱を厩務員さんに渡し、後のことを頼みながら話を続けた。
「どうやら日本法人を立ち上げる気だよ。」
「それって…。」
「いよいよ、本格的に始めるらしい。」
「それで?」
「佳織にも手伝ってほしいってさ。」
「あぁ、やっぱりそう来るか…。」
「ねぇ、それより、そちらさんは?」
「あ…。」
しまった。 すっかり雅之さんのこと忘れてコイツと話進めてたわ。
指摘されて思い出し、振り返ると、眉間に皺を寄せてコイツのことを睨んでます。
「雅之さん?」
「話しが弾んでるところ悪いが、こちらは?」
「えっと…。」
私がどう説明しようかと戸惑っていたら、コイツが先に動いたよ。
サングラスを外し、内ポケットから名刺を取り出すと雅之さんに差し出す。
「初めまして。
私はI.N.ファンドの一之瀬雅紀と申します。」
「一之瀬って…。」
「はい、ここにいる一之瀬佳織は私の姉です。」
「佳織の弟…。」
あれ? 雅之さん、なんかホッとしてる。
なんでだろう? 急に眉間の皺がなくなったし、目つきも戻ってる。
で、コイツはそれ見てクスクス笑ってるし。
何なんだ? いつの間にか私が置いてきぼりじゃないか。
ちょっと腹立つ。
「もしかして、姉とのことを変に勘ぐってましたか?」
「!!!!」
「そうだと思いましたよ。
でなければ、あの日パドックで俺たちのことを呆然と見ていたりしないでしょうからね。」
「!!!!!!!」
コイツの言葉に雅之さんが動揺している。
左手の拳をギュッと握りしめてるのがわかる。
無性に腹が立ってきた。
なので思いっきり脇腹に鉄拳ぶち込んでやった。
「ゲフッ!」
「いい加減にしろ、この馬鹿が!!」
「いきなり脇腹はないだろ。」
「黒い顔して雅之さんを貶めるからよ。」
「ちょっとからかっただけじゃん。」
「ちょっとぉ?」
「あ、いえ…、その…。」
「ほぉぉ、雅紀君にとっては今のが『ちょっと』なのね。」
私はボキボキと指の関節鳴らしながら臨戦態勢になる。
コイツはつけあがると碌なことをしない。
だから、今のうちに締め上げるに限る。
「わぁ、もうしませんから、その鉄拳は収めてもらえませんか?」
「じゃ、堂島ロール3本ね。」
「え?」
「だって、仕事なら栗東にも顔出すんでしょ?」
「うん、まぁ、そうだけど…。」
「じゃ、よろしく。」
とりあえず、一蹴完了。
暫くはおとなしくなるだろう。
「雅之さん、ごめんなさいね。 デリカシーのない弟で。」
「あ、いや、それは…。」
「で、この人ってもしかしなくても佳織の彼氏?」
「彼氏じゃないわよ。」
「「え?」」
あ、二人して驚いてる。
まぁ、多分、意味合いは違うだろうけど。
「彼氏じゃなくて…。」
そこで一旦言葉を切った。
若干、雅之さんの顔が青い。
これがいわゆる顔面蒼白って奴だなぁ、と思う。
私はニッコリ笑顔を作って言い放つ。
「婚約者よ。」
あ、雅之さんが今度は泣きそうな顔になってる。
逆にコイツは心底驚いた顔をしていた。
「で、あんたはどこで雅之さんを見たの?」
「あ、そこ、聞くのね。」
「後顧の憂いはすべて断つ。」
「はいはい。 わかりました。
去年の有馬記念の日だよ。」
「え?」
「佳織、パドックで写真撮ってたでしょ。
その時俺が声を掛けたの覚えてる?」
「そういえばそんなことあったか…。」
「んで、珍しく俺に笑顔を見せてくれて。
こっちを見てる視線に気が付いたら、そこの彼が茫然自失で立ってたの。」
「えぇ!! そんなことがあったの?」
「そ。 でも、この人、すぐにいなくなっちゃったから誤解を解く暇もなくてさ。」
「だからって、さっきの態度はないでしょ。
雅之さんにもちゃんと謝んなさい!!」
「えっと…、申し訳ない。」
「あ、いや、その…。」
「雅之さん、遠慮はいりません。
この際、肋骨の2~3本へし折ってやってもいいですから。」
「いや、そこまでは…。」
「コイツはすぐに図に乗るから一回締めといてください。
あ、そうそう、雅之さんは空手・柔道・剣道の有段者だから。」
「ひぇぇぇぇ、ご、ご勘弁を…。」
今度はコイツが顔面蒼白になってる。
イケメン細マッチョが台無しだ。
で、結局コイツがここに来たのは私に『黒獅子』からの書類を渡すためだった。
「返事はすぐでなくてもいいからってさ。」
「当たり前だ。 こんなもんすぐ返事ができるか!」
「ははは、そうだよね。
ところで、梶原さんは佳織とどこまで進んでるわけ?」
「どこまでというのは?」
「どういう付き合いをしてるかってこと。
勿論、体の関係含めてね。」
「佳織とは結婚を前提として一緒に住まわせてもらってる。」
「え?」
「雅之さん、去年離婚して財産分与で今まで住んでたマンション譲渡したのよ。
で、私の部屋に呼んだ。」
「へぇ、家族以外誰も部屋に上げたことなかったのにいきなり同棲?」
「悪い?」
「いや、全然。 むしろすぐにでも親父たちに知らせたい。」
「そこは自分で言うから黙っといて。」
「えぇぇぇ、別に減るもんじゃないでしょ。」
「あんたが言うと話が大きくなるでしょうが?!」
「あはっ。」
「佳織?」
「雅之さん、コイツに軽々しく話をしちゃだめですからね。
絶対話を大きくして大騒動になるんだから。」
「信用ないなぁ。」
「あんたのせいでどんだけ被害こうむったと思ってるのよ!!」
「あ、それは、否定できないかも。」
「今度やったら堂島ロール3倍に増やすわよ。」
「ショウチシマシタ。」
流石に今のは効いたらしい。
思いっきり、片言の返事をしてきた。
その様子に雅之さんが笑いだした。
さっきまでの表情が嘘みたいに心の底から笑ているのがわかった。
「雅之さん?」
「わ、悪い。」
「えっと…。」
「何か佳織の新しいところ発見できてうれしいよ。」
「そ、そう?」
「やっぱり、姉弟っていいな。」
「俺は妹しかいないから弟っていうのもいいなって思ったよ。」
「大丈夫ですよ。 すぐに義弟になりますから。
佳織のこと、離す気なんてないんでしょ?」
「勿論だ。」
「なら、早いとこ捕まえてくださいね。」
「言われなくてもそうするさ。」
「では、吉報を待ってます。」
雅紀はそれだけ言い残して、その場を去ろうとした。
が、すぐに立ち止まって振り返ると思いだしたように話し出した。
「そうだ。 一つ言い忘れてたよ。」
「何?」
「あいつ、戻ってきたんだって。」
「あいつ?」
「中川博史。 中川物産社長のバカ息子。」
「!!!」
「どうやら早速次の獲物を見つけたらしい…。」
「あの、馬鹿、証拠にもなく!」
「ただ、今回は人妻に手を出そうとしてるみたいだ。」
「人妻?」
「『願わくば、我に七難八苦を与えたまえ』」
「何、それ?」
「山中鹿之助…。」
「梶原さんはご存じなんですか?」
「俺は出雲出身だから。」
「なるほど、それなら話が早いや。
中川物産にその鹿之助の子孫がいるんだよ。」
「え?」
「まさか、山中幸久君か?」
「ご存知でしたか。」
「知ってるもなにも姪の夫だ。」
「これはまた、すごい偶然。」
「どういうことなの?」
「社内報って知ってる?」
「社員の慶事やらイベントごとやら人事異動とか載せるあれ?」
「そう、それにその山中幸久の結婚式の写真が載ったんだって。」
「はぁ、マジか…。」
「おい、どういうことだ?!」
「梶原さんの姪御さん、中川社長のバカ息子に目をつけられちゃったみたいなんだ。」
「なっ!」
「どうやら、あいつ、全然懲りてないみたい。
今回帰国させてもらえたのが自分の実績だと勘違いしてるんだろうね。
後始末は金の力でどうとでもなるって思ってるんじゃないかな?」
「あの時、最後通告してやったのにもう忘れてるのか…。」
「恐らく、バカ息子は自分の素行の悪さが会社にどれほどの損害を与えてるのかわかってないんじゃない?」
「どういうことだ?」
「雅之さん、こっから先はオフレコね。」
「佳織?」
「中川博史の素行はここ5年ほど前から問題視されてて。
それを理由に手を引こうとしてる投資家もいるの。」
「それを必死で止めてるのが専務の野田逸郎。
つまり、俺たちの叔父ね。」
「3年前、中川博史は女性社員の一人をレイプした。
社内恋愛だったらしくて、彼の出世をちらつかせて無理矢理手籠めにしたらしいわ。
それも会社の会議室で彼の目の前で犯したんですって。」
「ゲス野郎だな。」
「あのバカ息子は金で解決する気だったみたいだけど、相手が悪かった。
その彼女、株主のお嬢さんだったんだ。」
「あの時点で中川物産を潰すわけにはいかなくてうちの親父が処理することになったんだ。」
「どういうことだ?」
「中川物産の筆頭株主はI.N.ファンドだからよ。」
「そういうことか…。」
「結局、二人とも退職。
バカ息子の方は栄転と見せかけて海外左遷。
納得いく成果を上げるまでは帰国を許さないってことになった。」
「でも、どうやって帰ってきたの?」
「ああ、そこは中川社長が金に積んで実績作らせたみたいだね。」
「あの成金馬鹿は…。」
「まぁ、今回の相手は社外だから上手くいくと踏んでるんじゃないの?」
「そうは問屋が卸すか!!」
「うん、親父たちもそのつもりで動いてるよ。」
「中川物産を潰す気なの?」
「これは俺の推測だけど、頭を挿げ替えるつもりなんじゃない。」
「逸郎叔父さんを社長にでもする気?」
「というより、会社そのものを買収するみたい。
黒獅子と手を組んでね。」
「だが、それだと春香がそのバカ息子に喰われたらってことにならないか?」
「だから今話してるわけ。」
「彼女に囮になれってこと?」
「そうなるかな?」
「新婚の春香にそんなことさせれるか!!」
雅之さんが雅紀の胸倉掴んで激怒してます。
どうせなら、そのまま渾身の右ストレートを綺麗な顔に叩きんでほしいです。
「ちょ、ちょっと待ってください。
てか、佳織、止めてよ!!」
「いや、そのままアンタは殴られてなさい。」
「いやだぁ。 この後パーティーがあるんだからやめてぇ。」
「ほう、俺にこんな話をしておいてお前はそのパーティーとやらで女を口説くつもりなのか?」
「か、梶原さん。 俺の話まだ途中。
佳織、早く、この人止めて!!」
「チッ。」
「舌打ちしないで、止めてください。」
涙目で懇願してきたから不本意だけど雅之さんを止める。
雅之さんは不承不承と言った感じで雅紀を開放した。
「姪御さんには囮になってもらうことになりますが、恐らく喰われることはないですよ。」
「というか、喰われる前にバカ息子が使い物にならなくされるわよ。」
「どういう…。」
雅紀が一枚の資料を広げる。
それはスポーツ新聞の切り抜きのコピーだった。
内容はとある女子高生が空手の世界選手権で優勝したって記事。
それも、型ではなく実技の方で…。
「そういうことか…。」
「そういうことです。」
「佳織は知ってたのか?」
「空手やってるし、相楽さんのことは有名でしたから。
もともと彼女ってそっちで内定貰ってたはずですよ。」
「あぁ、そういえば人事部長の的場がそんなこと言って気がする。」
「どうやら納得してもらえたようですね。」
「だが、春香を黙って危険に晒すわけにはいかない。」
「その辺は佳織が何とかしてくれます。」
「仕方がないな。
相楽さんには私から話を通すからアンタは出てくんな。」
「えぇ、ちょっとくらい紹介してくれても…。」
「アンタは既婚者でしょうが!!!」
「茶飲み友達くらいにはって思ったんだけど…。」
「何言ってるのよ。
彼女の旦那さん、結構嫉妬深いの。
変に拗れて騒ぎが大きくなったら収集付かなくなるからやめなさい。」
「はぁ~い。」
気づくと雅之さんがポカンとしてる。
ごめんなさいね、コイツのこれは通常運転なのです。
「雅之さん?」
「あ、いや、その…。」
「ごめんなさい。 そろそろコテージに戻りましょうか…。」
「そう、だな…。」
「じゃ、俺も今度こそお暇しま~す。」
「とっとと帰れ!」
「ひ、酷い言われよう…。」
「何とでも言え! そうだ、東京に戻るの?」
「そうだよ。 一度オフィスに寄らなきゃならないから。」
「そう…。 じゃ、あのバカ息子に釘刺してきて。」
「それは構わないけど、何て言って釘刺すの?」
「そうね、『蒼虎は常にお前を見ている』って。」
「蒼虎ね。 どこまで効くかな?」
「即効性はないけど、後々効いてくるわよ。
それこそボディブローのようにね…。」
私は唇の端を上げて暗い笑いを浮かべた。
雅紀は肩を竦め苦笑する。
「わかった。 釘は刺しておくよ。」
そう言い残して今度こそ雅紀は去っていった。
あとに残った私たちもコテージへと引き上げる。
雅之さんにはちょっと嫌な思いをさせちゃったから今夜は色々奉仕してあげよう。
折角の旅行だし、素敵な思いで作らなきゃね。
連休はあと一日。
でも、まさか最終日があんなことになるなんてこの時の私は思ってもみなかったのだった。
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春香ちゃんの秘密、もう少し後で出てきます。
てか、バレバレですけどね。
次回は佳織の奉仕の結果です。
お約束な展開かなぁ。
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