レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞

橋本 直

文字の大きさ
184 / 1,557
第15章 休日の終わりに

特殊すぎる任務

しおりを挟む
「おい!帰ってきたのか、君達」 

 奥の事務所に続く階段を下りてくるロナルド・スミス・Jr特務大尉、ジョージ・岡部中尉、フェデロ・マルケス中尉の姿があった。三人はアイシャとレベッカがじっと見詰め合っている様を見つけて思わず凍り付いていた。

「なんだありゃ?」 

 フェデロが思わずそうこぼした。

「同志が見つかったんじゃないですか?あのクラウゼ少佐のオタク趣味は有名ですよ。レベッカ・シンプソン中尉もコスプレとかするとかいうことで写真とか見せてもらいましたから」 

 岡部はそう言うとハンガーを見回した。誠も真似をしてみて昨日まで予備部品の仮組みなどをしていた場所に機体の固定器具が設置されていることに気づいた。

「ちゃんと俺達の機体の収納場所は確保できそうですね」 

 岡部の言葉にロナルドが大きく頷く。フェデロの目は相変わらず誠の派手な機体を見上げてニヤニヤと笑っていた。

「叔父貴に会ってたのか?」 

 かなめはロナルド達をにらみつけてそう言った。ロナルドは軽くうなずく。隣の岡部とフェデロは口を開きたくないと言うように周囲を眺めることに決めているように見えた。

「いやあ、僕もいろいろな上官と付き合ってきたが、あれは……」 

 金の縁のサングラスを外しながらロナルドはそう言った。誠でもその回答は予想できた。そしてそれでいてどうも腑に落ちないと言うロナルドの雰囲気もよく理解できるものだった。

「だろうな。ありゃあ軍人向きの性格じゃねえ。太鼓持ちかヤクザが適職だろ」 

 かなめはそう言うとポケットからタバコを取り出す。ロナルドは明らかにその煙が気に入らないと言うように一歩かなめから離れた。

「嵯峨惟基。世の中では優れた軍政家。そう評するのが常識になってはいますが、あくまで得意とするのは小規模での奇襲作戦と言う変わった人物。そのただの一撃で敵の大部隊の士気を一撃で砕いてしまうという」

 そう呟いたロナルドにかなめは静かにうなづいて同意するような仕草をした。

「確かに主に奇襲作戦を本分とする司法機関特殊機動部隊の隊長として同盟上層部がここにあの人物を置いたのは正解かもしれませんがね」 

 岡部はロナルドに続けてそう言うとかなめを見つめた。それに目を反らせたかなめはタバコの煙を吐き出す。それを見て再びロナルドは煙を避けるように下がる。

「なるほど、的確な分析をしてるんだな、米軍は。一撃、ただそこに複雑な利害関係を絡めて敵を交渉のテーブルに着ける。それがあのおっさんの戦争だ」 

 かなめはそう言いながらタバコの煙の行く手をのんびりと眺めていた。

「そうすると我々がどういう任務に付くかも見えてきますね」 

 それまで奥の黒い四式、嵯峨の専用機を珍しそうに見つめていたフェデロが口を開いた。

「マルケス中尉さんですね。どう読まれます?」 

 軽く笑みを浮かべている茜がそうたずねた。物腰の柔らかく、それでいて凛としたところもある茜にそうたずねられて、頭をかきながらフェデロは言葉を続けた。

「遼州同盟は成立したが、ベルルカン大陸はその多くの国が参加の結論を出しちゃいない。地球の大国、ロシア、ドイツ、フランス、インド。各国は軍事顧問や援助の名目で部隊を派遣し、利権の対立により紛争が絶えず続いている有様だ。そして他の植民星への建前もあり、アメリカ軍は既存の基地の防衛任務の為と言う以上の規模の部隊を派遣することが出来ない……」 

 誠の機体を眺めていたアイシャとレベッカもこの言葉に耳を傾けていた。

「しかし、俺達が同盟司法機構として治安管理や選挙管理などの名目で出動することになれば話は変るな。俺達はあくまで同盟の看板を掲げている以上、隣国の安定化ということで現地入りするのはノービザだ。そしてその任務に我々が合衆国の国籍章を掲げて歩き回ればそれを攻撃することは『みんなの友達イーグルサム』を敵に回すことを宣言することに等しいわけだ」 

 誠も伊達に幹部候補生養成課程を出たわけではない。民間のカメラマンや医師団を拉致した武装勢力に対する彼等の出身地の地球の大国が強硬手段に出たことは少なくないことくらいは知っていた。そして数年前にもベルルカンで起きたイギリス人医療スタッフの拉致事件では遼州同盟の協力すら仰いでの大規模な捜索作戦が展開されたことも思い出していた。

「これは俺達は相当忙しい身になりそうだな」 

 ロナルドはかなめの吐く煙から逃げながらそう結論を出した。

「まったく面倒な任務だぜ……」 

 そう言ってフェデロは苦虫をかみつぶすような顔をした。

「おそらく第三小隊の結成まではきつい勤務体制になるでしょうね」 

 岡部の言葉にフェデロは天を仰いで両手で顔を覆う。思わずアイシャがそれを見て噴出す。

「そいつはご愁傷様だな。せいぜいお仕事がんばってくれや」 

 そう言うとかなめはハンガーの奥へと歩き出した。

「西園寺さん。どこに行かれるんですか?」 

「決まってるだろ。今日の茜がアタシ等のところにちょうど良く飛んできたという茶番をどうやって用意したのか叔父貴に聞きにいく」 

 誠、茜、アイシャ、カウラ。そしてレベッカもその後に続いて事務所に入る階段を上り始めた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

讃美歌 ① 出逢いの章              「礼拝堂の同級生」~「もうひとつの兆し」

エフ=宝泉薫
青春
少女と少女、心と体、美と病。 通い合う想いと届かない祈りが織りなす終わりの見えない物語。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

転生遺族の循環論法

はたたがみ
ファンタジー
いじめに悩む中学生虚愛はある日、自らトラックに跳ねられ命を断つ。 しかし気がつくと彼女は魔法の存在するファンタジーな異世界に、冒険者の娘リリィとして転生していた。 「魔法にスキルに冒険者ですって⁉︎決めました。私、その冒険者になります!」 リリィの異世界ライフが幕を開ける! 「そういえば弟くんは元気でしょうか……」 一方遺された愛の弟、縦軸にもある出会いが。 「ねえ君、異世界のこと、何か知らない?」 姉を喪った彼のもとに現れた謎の美少女。 そして始まる縦軸の戦い。 「また、姉さんに会いたいな」 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。 百合は第2章から本格的に始まります。 百合以外の恋愛要素もあります。 1章を飛ばして2章から読み始めても楽しめると思います。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

愛するということ

緒方宗谷
恋愛
幼馴染みを想う有紀子と陸の物語

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...