レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞

橋本 直

文字の大きさ
288 / 1,557
第11章 デート

ゆったりと過行く時間

しおりを挟む
「いつから気づいていた?」 

 吉田がそう言ったので誠は少し驚いていた。考えてみればおせっかいを絵にかいて好奇心で塗り固めたような彼等がついてこないわけは無いことは誠にも理解できた。司法局とはそう言うところだと学習するには四ヶ月と言う時間は十分だった。愛想笑いを浮かべるかなめ達を誠は眺める。配属以降、誠が気づいたことと言えば司法局の面々は基本的にはお人よしだと言うことだった。

 アイシャが悩んでいると聞けば気になる。ついている誠が頼りにならないとなれば仕事を誰かに押し付けてでもついてくる。

「まあ……どうせパーラの車に探知機でもつけてるんじゃないですか?情報統括担当の少佐殿」 

 そう言ってアイシャはシャムの手に握られた猫耳を押し付けられそうになっている吉田に声をかける。

「でも実際はあいつ等がアホだから見つかったんだろ?」 

 ランはそう言ってかなめとカウラを指差した。

「まあ、そうですね。あの二人がいつ突っかかってくるかと楽しみにしてましたから」 

 余裕の笑みと色気のある流し目をアイシャは送る。かなめもカウラもそんなアイシャにただ頭を掻きながら照れるしかなかった。その隣では吉田がついに諦めて自分から猫耳をつけることにした。

「何やってるんですか?」 

 カウラは思わずそんな吉田に声をかけた。

「えーと。猫耳」 

 他に言うことが思いつかなかったのか吉田のその言葉に店の中に重苦しい雰囲気が漂う。

「オメー等帰れ!いいから帰れ」 

 呆れてランがそう言ったのでとりあえず静かにしようと吉田はシャムに猫耳を返した。

「話はまとまったのかな?」 

 そう言うとにこやかに笑うマスターがランの前にコーヒーの入ったカップを置いた。

「香りは好きなんだよな。アタシも」 

 そう言うとランはカップに鼻を近づける。

「良い香りだよね!」 

 シャムはそう言って満面の笑みで吉田を見つめた。

「まあな」 

 そう言うと吉田はブラックのままコーヒーを飲み始めた。

「少しは味と香りを楽しめよ」 

 かなめは静かに目の前に漂う湯気を軽くあおって香りを引き寄せる。隣のカウラはミルクを注ぎ、グラニュー糖を軽く一匙コーヒーに注いでカップをかき回していた。

 恐る恐るランは口にコーヒーを含む。次の瞬間その表情が柔らかくなった。

「うめー!」 

 その一言にマスターの表情が緩む。

「中佐殿は飲まず嫌いをしていたんですね」 

 そう言って面白そうにアイシャはランの顔を覗き込む。

「別にいいだろうが!」 

 そう言いながら静かにコーヒーを飲むランにマスターは気がついたというように手元からケーキを取り出した。

「サービスですよ」 

 そう言ってマスターは笑う。

「これはすいませんねえ。良いんですか?」 

「ええ、うちのコーヒーを気に入ってくれたんですから」 

 そう言って笑うマスターにランは、受け取ったケーキに早速取り掛かった。

「あーずるい!」 

「頼めば良いだろ?」 

 叫ぶシャムを迷惑そうに見ながらかなめは手元のケーキ類のメニューを渡す。

「なんだ、ケーキもあるじゃん」 

 そう言いながら吉田はシャムとケーキのメニューを見回し始めた。

「それにしてもアイシャさん。本当に軍人さんだったんですね」 

「軍籍はあるけど、身分としては司法機関要員ね……あの司法局実働部隊の隊員ですから」 

「そーだな。一応、司法執行機関扱いだからな……つまり警察官?」 

 そう言いながらケーキと格闘するランはやはり見た通りの8歳前後の少女に見えた。

「チョコケーキ!」 

「あのなあ、叫ばなくてもいいだろ?俺はマロンで」 

 吉田とシャムの注文に相好を崩すマスター。

「何しに来たんだよ、オメエ等」 

「いいじゃないか別に。私はチーズケーキ」 

 かなめを放置してカウラがケーキを注文する。誠は苦笑いを浮かべながらアイシャを見つめた。コーヒーを飲みながら、動かした視線の中に誠を見つけたアイシャはにこりと笑った。その姿に思わず誠は目をそらして、言い訳をするように自分のカップの中のコーヒーを口に注ぎ込んだ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

軸─覇者

そふ。
ファンタジー
就職か、進学かー ありふれた現実の岐路に立つ青年は、ふとした瞬間、滅び去った王国の跡地に立っていた。 そこを支配するのは、数億年の歴史と、星々が刻んだ理。 草原を渡る風、崩れた城壁、そして「まだ語られていない物語」の声。 かっての文明を知る者たち、秘められた叡智、そして人々を 脅かす影。 それらすべてが折り重なり、ひとつの空席を呼び覚ます。 問いはひとつーー なぜ、ここに立つのか? 何を背負うべきなのか? この世界は何を望んでいるのか? ーこれは、まだ誰も知らぬ異世界創世記。 すべてはこご"ゲアの地"で

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

処理中です...