738 / 1,557
第20章 自首
自首
しおりを挟む
「また出かけるんですか……」
新港、司法局実働部隊活動艦『高雄』の部隊長室を出ようとする嵯峨惟基を呆れたような顔をしてクバルカ・ランは眺めていた。
「すまねえな。お前さんは転属して以来ずっと苦労ばかりかけちまって」
「まあわかっちゃいたんですがね。それに西園寺達は軍のエリートよりも伸び代があるからそれなりに楽しんじゃいますがね」
「そりゃいいや」
半分負け惜しみのようなランの言葉をまるで聞いていないようにそのままカバンを手にして通路を進もうとする嵯峨。ランはその背中を眺めながら再びため息をついた。
「そんなに俺に期待するなよ」
「いやね、隊長の人の悪さに呆れてれだけですよ。アイツ等のいつもの探偵ごっこ。今回はちょっと遊びがすぎたって思ってまして」
「まあな。今の状況になりゃ吉田も自分の足跡を俺なりお前さんなりが察するだろうとは読めてたからな」
それだけ言うと嵯峨はポケットからガムを取り出して口に放り込む。
「まあ吉田の野郎が身を寄せるなら口が堅い人物の睨みが利く場所ということになる。となると誰も口を割ることを強制しない人物を頼るのが一番賢い」
「まあな。あの地上最強の生物相手に取引するバカはいねえだろ」
ガムを噛みながら嵯峨は頭を掻いた。
同盟構成国の中でも貴族制の体制を持ち、その頂点に君臨する四大公家の筆頭西園寺家。その私兵である摂州党を率いる西園寺康子は嵯峨にとっては血縁では叔母に、戸籍上は姉に当たる人物だった。彼女の法術師としての能力はランが知る限りでも最強の部類に属する。そしてかわいい弟の嵯峨のためとあればいくらでも骨を折るその行動原理からして、吉田が当初から自分の身柄を隠すのに利用していたことは、先ほど吉田からの連絡があってみれば当然のことに思えた。
「で、うちの演習……と言うか実戦になるでしょうが、予定時刻より5時間到着時間が遅れるわけですが……」
「まあどこの陣営も今回は法を犯して内惑星域で軍艦を超空間跳躍させることはしねえだろうな。あの砲台が火を吹けば億単位の人間が蒸発するが、同盟上層部にはそれを理解するオツムがねえからな。おめでたい性善説を信じて世の中にそんな大虐殺をする人間はいない。そう思い込んでる」
「理解するおつむがねえんじゃなくて何も起きなかった時に責任を取らされるのが嫌なんでしょ」
ランの皮肉に嵯峨は苦笑いを浮かべながら天井を見上げた。
「ラン。そんときのためにこれから同盟加盟国のお偉いさんに頭を下げに行くんだから」
「まあそれも隊長の仕事というわけですか」
「そういう事」
それだけ言うと嵯峨は決心したようにそのまま歩き始めた。
「それとかなめの奴にはなんて言います?最初からこうなることを知ってて隊長があおってたとなれば、あのバカ自分の小遣いが減ったって怒りますよ」
ランの言葉に嵯峨は足を止めるとそのままひとつ首をひねったあと手を軽く振って歩き始めた。
「なあに。自分の金遣いを反省するのも悪くないんじゃないの?それに今回の出費は無駄にはならないと思うよ、長い目で見りゃ」
投げやりな嵯峨の言葉にランはただ一つ大きなため息をついた。
「それがアイツにもわかりゃあいいんですが……」
「なあに何事も経験さ」
それだけ言うと嵯峨は足を止め伸びをする。そしてそのまま軽く右手を上げるとそのまま埠頭のコンテナの影に消えていった。
新港、司法局実働部隊活動艦『高雄』の部隊長室を出ようとする嵯峨惟基を呆れたような顔をしてクバルカ・ランは眺めていた。
「すまねえな。お前さんは転属して以来ずっと苦労ばかりかけちまって」
「まあわかっちゃいたんですがね。それに西園寺達は軍のエリートよりも伸び代があるからそれなりに楽しんじゃいますがね」
「そりゃいいや」
半分負け惜しみのようなランの言葉をまるで聞いていないようにそのままカバンを手にして通路を進もうとする嵯峨。ランはその背中を眺めながら再びため息をついた。
「そんなに俺に期待するなよ」
「いやね、隊長の人の悪さに呆れてれだけですよ。アイツ等のいつもの探偵ごっこ。今回はちょっと遊びがすぎたって思ってまして」
「まあな。今の状況になりゃ吉田も自分の足跡を俺なりお前さんなりが察するだろうとは読めてたからな」
それだけ言うと嵯峨はポケットからガムを取り出して口に放り込む。
「まあ吉田の野郎が身を寄せるなら口が堅い人物の睨みが利く場所ということになる。となると誰も口を割ることを強制しない人物を頼るのが一番賢い」
「まあな。あの地上最強の生物相手に取引するバカはいねえだろ」
ガムを噛みながら嵯峨は頭を掻いた。
同盟構成国の中でも貴族制の体制を持ち、その頂点に君臨する四大公家の筆頭西園寺家。その私兵である摂州党を率いる西園寺康子は嵯峨にとっては血縁では叔母に、戸籍上は姉に当たる人物だった。彼女の法術師としての能力はランが知る限りでも最強の部類に属する。そしてかわいい弟の嵯峨のためとあればいくらでも骨を折るその行動原理からして、吉田が当初から自分の身柄を隠すのに利用していたことは、先ほど吉田からの連絡があってみれば当然のことに思えた。
「で、うちの演習……と言うか実戦になるでしょうが、予定時刻より5時間到着時間が遅れるわけですが……」
「まあどこの陣営も今回は法を犯して内惑星域で軍艦を超空間跳躍させることはしねえだろうな。あの砲台が火を吹けば億単位の人間が蒸発するが、同盟上層部にはそれを理解するオツムがねえからな。おめでたい性善説を信じて世の中にそんな大虐殺をする人間はいない。そう思い込んでる」
「理解するおつむがねえんじゃなくて何も起きなかった時に責任を取らされるのが嫌なんでしょ」
ランの皮肉に嵯峨は苦笑いを浮かべながら天井を見上げた。
「ラン。そんときのためにこれから同盟加盟国のお偉いさんに頭を下げに行くんだから」
「まあそれも隊長の仕事というわけですか」
「そういう事」
それだけ言うと嵯峨は決心したようにそのまま歩き始めた。
「それとかなめの奴にはなんて言います?最初からこうなることを知ってて隊長があおってたとなれば、あのバカ自分の小遣いが減ったって怒りますよ」
ランの言葉に嵯峨は足を止めるとそのままひとつ首をひねったあと手を軽く振って歩き始めた。
「なあに。自分の金遣いを反省するのも悪くないんじゃないの?それに今回の出費は無駄にはならないと思うよ、長い目で見りゃ」
投げやりな嵯峨の言葉にランはただ一つ大きなため息をついた。
「それがアイツにもわかりゃあいいんですが……」
「なあに何事も経験さ」
それだけ言うと嵯峨は足を止め伸びをする。そしてそのまま軽く右手を上げるとそのまま埠頭のコンテナの影に消えていった。
10
あなたにおすすめの小説
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
軸─覇者
そふ。
ファンタジー
就職か、進学かー
ありふれた現実の岐路に立つ青年は、ふとした瞬間、滅び去った王国の跡地に立っていた。
そこを支配するのは、数億年の歴史と、星々が刻んだ理。
草原を渡る風、崩れた城壁、そして「まだ語られていない物語」の声。
かっての文明を知る者たち、秘められた叡智、そして人々を
脅かす影。
それらすべてが折り重なり、ひとつの空席を呼び覚ます。
問いはひとつーー
なぜ、ここに立つのか?
何を背負うべきなのか?
この世界は何を望んでいるのか?
ーこれは、まだ誰も知らぬ異世界創世記。
すべてはこご"ゲアの地"で
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
ボンクラ王子の側近を任されました
里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」
王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。
人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。
そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。
義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。
王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる